配電制御システムメーカーは、海外規格認証に対し機械メーカーなどからの取得要請による受け身であったが、このところUL規格認証製品を会社の特色に位置づけ取得する機運が出てきた。現在、まだ制御盤のUL規格認証取得企業は少ないが、北米向け機械の輸出が上向いているため、増えそうである。ただ、UL規格の知識が乏しく、北米市場への制御盤輸出に必要なUL規格認証は申請にこぎつけるまで半年から1年かかるケースもあることから、海外規格認証機関では積極的に相談に来てほしいと呼び掛けている。 北米向け機械輸出は、昨年11月から今年1月まで3カ月連続でプラスになった。1月は、工作機械が前年比55・7%増と大幅な伸びを示した。北米市場は景気上昇局面に入っており、産業用ロボットなどの輸出増加が見込まれている。
輸出用工作機械などには制御盤が搭載されている。そのため、IEC、UL規格など海外規格盤製作をアピールし制御盤の受注を有利に展開する動きが出ている。
米国向けは、IEC規格に対応していても、別個にUL規格認証を取得する必要がある。
米国ではUL508Aが産業用制御盤の主要な規格。UL認証ラベルの種類は、筐体ケースのみの認証品に対するラベル、密閉制御盤・配電盤の認証ラベル、開放制御盤・配電盤の認証ラベル、制御盤・配電盤が据付場所で評価された認証ラベルがあるが、一度認証を受けるとその後メーカー認証として管理が進められる。ただ、工場に対する定期的な検査を受ける必要がある。
「UL認証ラベルが適切にラベリングされているかどうか生産工程のチェックなどを行う」(ULJapan)。
UL規格508Aは、米国防火協会の電気工事基準NFPA70が絡み、規格に対する理解が難しい。そのため、規格を理解してサンプルをつくり申請するまでに6カ月から1年を要するケースも出ている。規格書の日本語版がないことも配電制御システム各社に二の足を踏ませている。最近はUL認証機関やコンサルタントの指導を受けて取得に前向きなところも。
ある会社では、設計コンサルタント会社と業務提携し海外向け制御盤製造を前面に打ち出した。
UL認証企業は、大手電機メーカーが主に取得しているが、配電制御システムメーカーはまだ数%と見られる。
UL認証機関であるULJapanのナレッジサービス部小峰豊課長は「UL規格は火災安全などに関連する部分で内容が厳しくなっている。NFPA70は2008年に短絡電流値の表示要求が改訂された。規格や法律を理解するには相当の労力を要し、申請までの期間に時間を要してしまう傾向がある。そのため、技術相談プログラムを用意しているので、遠慮なく相談に来てほしい」とUL認証やフィールド・エバリュエーティッドプロダクトラベルにおけるアドバイザリーサービスの利用を勧めている。
日本配電制御システム工業会(盛田豊一会長)は、制御・情報システム委員会(田原博委員長)が開催した昨年11月の技術セミナーの「接続方式の違いによる制御配線の工数測定検証(検証実験の概要と結果)」をHP上で公開した。盤ハードウェア合理化に関する研究成果に対し、会員や配線接続メーカーの関心が高く、その内容は注目され今後の接続方式にも影響を与えそうである。
公開内容は(1)制御配線の工数測定検証の位置付けと目的(2)検証実験の概要(3)検証実験結果(4)【ネジレス端子台+素線接続】の課題(5)まとめ―で構成されている。
まとめでは、(1)ネジレス端子台の配線合理化は、素線を差し込む方式でないと生まれない(2)ネジ式端子台(セルフアップ)が、ネジレス端子台の素線接続方式に移行できれば、丸型圧着端子の接続方式に対し31~52%、Y形圧着端子の接続方式に対し22~45%の工数低減が期待できる(3)ネジ式端子台にY形端子の電線を接続する方式に対しても、ネジレス端子台の素線接続方式に移行できれば、非熟練者で42%、熟練者でも21%の工数低減が期待できる(4)ネジレス端子台接続のメリットは、上記の作業工数低減ともに、作業者のスキルに依存しないという利点や、ネジ締めのトルク管理不要、盤設置後の増し締め作業が不要になるなどエンドユーザーのメンテナンスコストの低減効果も大きい。
一方、課題も挙げている。(1)ネジ式端子台と比べ割高である(2)フェルール端子を使用すると省工数効果が薄れる(3)ネジレス端子台の電線端末に円形状のマークチューブを使用すると、脱落やズレ落ちることがある(4)渡り配線回路に工夫が必要なこと。
(5)ネジレス(スプリング)端子を含む接続端子に関する最新の規格情報が国内ユーザーに十分に周知されていない(6)工作機械や包装機械など機械分野や鉄道交通分野ではネジレス端子台が使われているが、国内建物向け電気設備にはほとんど普及していない(7)制御盤に関する規格化を進めても、外線ケーブル工事を行う電気工事業界への浸透策が必要、と課題を挙げている。