インフラ整備に電気は欠かせないが、電気を配給する配電事業と、あかりを提供する照明事業という2つの事業を機軸に、製品を開発・供給しているのが因幡電機製作所である。エネルギーの配給から端末の照明器具までを担っており、最近ではこれらの事業を深耕するとともに事業の幅を広げている。川口久美雄社長に事業のコンセプトや、今後の事業展開などについてうかがった。
【事業概要】
同社は1962年、因幡電機産業の製造部門であるイナバ照明と因幡パネル製作所を合併し創立、以後照明器具と配電盤・制御盤を中心に事業を拡大してきた。71年には照明用テーパーポールの製造を開始。78年大阪中小企業団地に照明器具の一貫工場である円明工場を開設。99年には照明ポールで初の国際品質規格ISO9002の認証を取得。2012年には羽曳野工場に照明実験棟を新設した。
この間、優れたアイデアと製品開発力、機能が評価され、02年の電設工業展製品コンクールでは「大阪府知事賞」、09年と10年には同コンクール「環境大臣賞」を受賞するなど、同社の製品開発力は高い評価を得ている。
川口社長は「製品のコンセプトは、受電から負荷機器への供給までトータルとしての使いやすさと省エネルギーの追求にある。現在ではLED照明など新光源に積極的に取り組んでいる」としてい
る。
【I
Lookingの
配電・制御・分電盤】
同社の配電事業である配電・制御・分電盤の製作においては、「電力の見える化」を主眼に置き、カスタマイズを中心に展開している。
昨年の東日本大震災以降、電力の安定配給や配電設備の重要性が見直されているが、同社の盤製品は「エネルギーの見える化」で、無駄なエネルギーを計測しエネルギーの省エネを図り、「キャビネット内の見える化」で、キャビネットの扉を開けずに中の状況が監視できるという工夫を行っている。
さらに、「I
Looking」を商標に据え、簡単施工による配電・制御・分電盤の開発を行っており、安定的な電力供給を目指している。
「配電・制御分野は新しい機軸をいろいろと考えている。例えば、ほかのエネルギーに変えたらどうなるかといった情報が提供できるような配電機器や、エネルギーを効果的に利用できるスマート技術などで、『I
Looking思想』のもと、いろいろと構想を練っている。将来的にはスマートグリッドの方向へ進むものと思われるが、弊社の特色を出して面白い分野にしていきたい」(川口社長)としている。
【可能性が広がるLED照明】
同社は、早くから照明事業に携わっているが、最近では屋外用を中心に、LEDを採用した街路用や道路用LED照明に注力している。中でも「LEDIX
WAY」は、11年に国土交通省が発行した「LED道路・トンネル照明導入ガイドライン(案)」に対応する、省エネ・低コスト・簡単施工・維持管理の軽減を特徴とする高効率のLED道路灯。
同社は、照明用のポールなどの構造物とLED照明双方の開発・製造に携わっており、鉄鋼構造物から照明まで一貫した製造を行っている。首都高速や阪神高速、一般国道などに広く採用されており、高い実績と評価を得ている。
また、高速道路用LED照明では、巡回点検の負担軽減ができるよう、高速道路会社と共同で劣化診断モニターや、点灯状態を遠隔監視する保守情報管理システムなどの開発も行っている。
同社のLED照明はこのほかにも、太陽光と風力の2つの新エネルギーを使用するハイブリッドソーラー街路灯や、防犯分野で納入実績が上がっているLED防犯灯などをラインアップしている。
「当社は、光源のLEDチップを独自のアッセンブリ技術で照明器具として展開しており、製品の幅が拡大している。今年2月には羽曳野工場内に光の出方や熱、防水、寿命などの性能について総合実験設備を備えた照明実験棟を開設した。今後トンネル分野などユーザー層の拡大を図ることもあり、配電で培った制御技術を駆使し、優れた調光制御などを実現していきたい」と川口社長は目を輝かす。
【創立50周年を迎えて】
福島原発の事故などで、省電力化の問題は恒久的に進めざるを得なくなり、エネルギー対策として、効率的な配電制御や照明の消費電力削減が重要なテーマとなっている。川口社長は「当社は今年で創立50周年を迎えたが、今後も『電気=配給』と、『あかり=消費』の両面を併せ持つメリットを最大限に生かし、これらの問題にハード、ソフト両面で取り組んでいく方針だ。また、環境技術を中心テーマとした製品の開発にも注力していきたい」と語っている。