サーボモータ市場は、国内外を取り巻く需要環境低迷の影響を受けているものの、スマートフォンやタブレットPCの需要拡大、北米市場の堅調維持などもあり、今年度下期以降の伸長へ期待が高まっている。製品は高速・高精度制御、省エネルギー化、セーフティ対応、簡単操作化などが進み、一層使いやすさと機能の向上が進んでいる。レアアースをはじめとしたモータの原材料価格の上昇を受けて、サーボモータ各社
は、ユーザーへの価格改定交渉に取り組んでおり、一定の浸透を見せている。一方では設計の改良などで、脱レアアース、コストダウン対応も積極的に行われている。 サーボモータ市場は、リーマンショック後の大幅落ち込みから徐々に需要を戻しつつあり、2010年は09年比で数量、金額とも2倍から3倍となった。11年は震災発生までは生産台数が過去最高ベースで推移するなど好調であったが、3月の東日本大震災の影響がプラスとマイナスに大きく振れ、前半は好調、後半は失速気味となっている。
経済産業省の機械統計によると、サーボモータの生産は、10年は数量が410万台(同280・8%増)、金額が1898億円(同272・3%増)と驚異的な回復を見せた。11年は、数量が432万台(同5・5%増)、金額が2167億円(同14・2%増)となって、金額が2桁の伸長を見せるなど堅調拡大となっている。 11年は、大震災の影響から前半は発注の前倒しが顕著に表れたが、逆に後半は需要の先食いの反動が出た。これに加え半導体・液晶製造装置の需要不振、欧州金融危機による市場の冷え込み、中国の金融引き締めと欧州向け販売不振などが重なり、急に需要が停滞し始めている。
日本電機工業会(JEMA)がまとめている生産実績では、11年度(11年4月~12年3月)は1980億円と、10年度比4・2%減の見込みで、12年度も同1962億円(0・9%減)と厳しい見通しを立てている。外需のうち、北米向けは比較的堅調な推移が見込まれるのに対し、中国や欧州向けは前半まだ需要環境が厳しいとしており、後半での回復に期待をかけている。 これに対し、内需は比較的明るいテーマが多い。サーボモータ需要の大きな市場である工作機械、ロボット市場が堅調な動きを見せていることだ。工作機械は、リーマンショックから急速に立ち上がり、3年連続でプラスとなっている。自動車関連向けが好調であることや、欧州向けを除く外需も好調だ。特に北米向けは、航空機や鉱山機械などの製造から需要が伸びている。ロボットも自動車関連向けを中心に拡大している。特に、中国は人件費の上昇が継続していることで生産の自動化投資が活発化、自動車製造以外でもロボットをはじめとした自動化生産を進めていることで、サーボモータ需要を支えている。
半導体・液晶製造やソーラーパネル製造などの今までサーボモータ需要を牽引してきた分野もしばらくは低迷が予想されているが、この中にあってバッテリー関連や3品(食品、薬品、化粧品)関連は内需として期待が高まっている。バッテリー市場は、電気自動車や再生可能エネルギー関連、携帯電話を中心に大きな分野に成長しつつあり、その製造工程で必要になる精密な巻線機械用として、サーボモータは大きな役割を果たしている。振動や制振技術などに独特なノウハウが必要とされる。3品業界も位置決めに高精度が求められる用途が多く、安定した市場となっている。 サーボモータの用途は年々拡大している。工場以外では、駅ホームの安全ドア開閉や自動改札機、乗り物シミュレータなどのゲーム関連機器、回転鮨のベルトコンベア制御、介護ベッドや手術支援ロボット、医療検査装置などの介護・医療関連といった身近な日常生活の中にも採用が進んでいる。
同時に環境・省エネ対応と言った点でも採用が進んでいる。例えばアクチュエータの電動化が挙げられる。
自動車車体のプレス加工の場合、均一かつ強力な圧力を加える必要があるが、油圧に比べ、サーボモータを使った電動プレスは、同期したツイン制御によって上下から静かにプレスすることが可能になる。自動車の車体は、燃費向上と材料費削減のため軽量化に取り組んでいる。材質の薄型化はこの一環であるが、電動プレスはこの点からも置き換えが進んでいる。ここでは大容量サーボモータが使用されることが多いが、ここでの加速エネルギーをあらかじめ蓄電しておいて、必要な電力設備を小型化できるコンデンサーバンクや2次電池対応への取り組みも始まっている。同様な動きは射出成型機でも見られる。
空圧機器もサーボモータへの置き換えが見られる。空圧はエア漏れがエネルギーの浪費につながるという省エネ・環境の視点からで、今後もこうした「省エネ」をキーワードにしたニーズが広がり、電動化への置き換えにより使いやすい部品や機械・設備が増えてきそうだ。 昨年秋以降、大手サーボモータメーカーを中心に、製品価格を改定し、値上げを実施しているところが多い。レアアースをはじめとして、原材料の高騰によるもので、10~20%の幅で改定している。こうした一方で、レアアースを中心に磁性材料の使用削減を行う設計への取り組みも進んでいる。レアアースを使用しない設計や使用量を減らす設計で、生産コストを低減しようとしている。