農業自動化に制御機器、配電制御システム各社の関心が高まってきた。制御機器各社は農業機械向け耐環境性を高めた製品を開発する一方で、植物工場、農業気象情報、施設園芸への進出など多様な対応を講じている。配電制御システム各社も配電盤・制御システム需要に期待している。 農林水産省はこのほど、食品産業の将来ビジョンを策定した。食品産業の市場規模は2015年107兆7000億円、20年118兆9000億円に目標を設定し、農・漁業を12兆7000億円から14兆円へ成長産業化させる。農・漁業が成長産業へ参画する上で、高度生産管理システムにおける生産性向上技術の普及が欠かせないとしている。
農業人口は減少傾向にあり、高齢化も進んでいる。農家人口は08年729万3000人、09年には697万9000人と700万人台を割った。その後も10年650万3000人、昨年616万3000人にまで減少している。また、65歳以上の割合は、08年33・6%から11年34・5%へと増加が続いている。
こうした農家人口の減少と高齢化に対し、農業自動化や農作業アシストシステムの開発で農作業の軽労化を図る取り組みが出てきた。
農林水産省は農業・施設園芸作業の自動化技術開発、小型作業ロボット開発に補助金事業として乗り出している。
植物工場も増加傾向にある。現在、全国で80施設が運営されているが、農業生産法人によるものが25施設を占めるまでになった。植物工場では生育期間を短くでき年間で多くのサイクルが可能である。また、レストランなどでも小型野菜生産装置が普及し始めた。こうした農業の自動化に対し、制御機器各社は市場獲得に注力している。
オムロン、アズビル、三菱電機、富士電機、IDECなど大手の他に温調器、センサー、FAパソコンなど専門メーカーも販売を強化している。耐環境性を向上させ、農業機械に搭載できる製品を開発。制御機器各社の農業市場への取り組みは多様化している。
IDECは、93年にバラの水耕栽培を開始、トマト、メロン、キュウリなど栽培種類を増やし09年には植物工場ラボを設けた。また、緑化用コケ育成実験も行い、植物工場事業へ本格的に乗り出す構え。
横河電機グループの横河電子機器は、農業気象観測システムを開発した。
タキゲン製造は、農業分野向け部品販売を本格化させている。グラフトチューブ・クキサポート・苗木カット治具など接木関連、クキロック・クリップ・フックなど栽培関連、PVCバインダー・レベルアジャスター・リーズロックなど農業設備関連、さらに農業関連部品を販売。
スナオ電気は、産業用タイマー・タイムスイッチ専門メーカーであるが、施設園芸用機器にもかなり前から進出しボイラー、バーナーコントローラ、灌水装置、温度コントローラ、天窓コントローラなどの販売実績を持っている。土壌消毒と温室用暖房で特許を取得、今年は新製品を発売する計画である。施設園芸栽培の花卉類販売会社を設立している。
配電制御システム各社も農業自動化、施設園芸で配電盤、制御盤、操作盤、監視制御装置などの需要拡大が見込まれる。