FA市場を取り巻く環境は、昨年3月の東日本大震災を境にして、流れに大きな変化が生じている。エネルギーや電力危機への対応がきっかけとなり、安全なエネルギーの確保、便利さ優先の生活から安全・健康優先の生活、そして日本のものづくりのあり方までを考え直す機会を与えた。
FA市場は今まで牽引してきた外需が、欧州の金融危機や、新興国の中心となって大きな伸長を見せていた中国市場の伸び率鈍化などを主要因に、円高なども加わり、各方面に大きな影響を与えている。テレビを中心としたデジタル家電も急激な価格ダウンにより、液晶や半導体メーカーの経営を大きく圧迫する結果になった。
これに対して、内需は企業の海外進出増加に伴う空洞化が心配されながらも、日本の有する技術力によって何とか活性化させようとする動きが加速化している。昨年の大震災がその転換点になっている。
産業の裾野の広さで日本のGDPを大きく支えている自動車産業が復活を見せようとしている。ハイブリッドカー(HV)や電気自動車(EV)などへのシフトが徐々に進むことで、自動車産業の設備投資が少しずつ復活し始めているからだ。これらに周辺インフラである、充電スタンド、バッテリー関連、新素材などに効果が波及している。
ここ数年、日本は地球温暖化防止の観点から二酸化炭素排出抑制に向けた省エネへの取り組みの先頭を走ってきた。その取り組みが大震災の発生でさらに加速する動きになっている。電気自動車が停電や節電時のバックアップ電源としての役割を自動車メーカーが提案する時代になってきたのも、その一例だろう。
スマートグリッド技術脚光
エネルギーの効率的な活用という点から、スマートグリッド技術にいま大きなスポットが当たっている。電力活用のオートメーション化ともいえるスマートグリッド技術は、工場のなかでの電力監視や制御に加え、店舗、ビル、公共施設から家庭まで幅広い領域に浸透を始めている。
エネルギーを有効に活用するために、いままでの地球温暖化への取り組みとは異なった意識が社会全体に生まれつつある。電気は無尽蔵、あるいは余っているといわれた見方が変化し、安全な電気を確保するために、効率的に使うことで、安全な生活を維持していきたいという変化である。
LED照明が急速に普及
LED照明が急速な普及を見せているのもその証左で、いままでの高額だから価格が下がるまで待とうという意識から、少しでも節電につながるなら、先行投資のつもりで買おうという変化が起きている。
LEDに限らず省エネは大きなビジネスに育つ可能性を秘めている。工場のものづくり現場では一つ一つの機械の電力消費が計測され、無駄な電力排除への取り組みが強まっている。ビルでも照明や空調、ポンプ、エレベーターなどの効率的な運用で、省エネ効果を発揮しようと対応策が検討され、その状況を計測、表示、通信する機器の需要や、専門的に省エネ診断・提案する会社のビジネスが大きな産業に成長しようとしている。
労働者が豊富であった中国でもロボットなどによる自動化生産が増加している。人件費の上昇に加え、安定した品質を確保したいからだ。こうなると、為替や原材料調達などの要因を除けば、日本で生産してもコストはさほど違わないという結果になってくる。ロボットは重いもの、危険なもの、産業環境の悪い場所などでも稼働できる。
ロボットは第2次産業だけでなく、農業や漁業、林業などの第1次産業、医療や警備、配送など第3次産業にも用途が広がっている。工場の中で野菜を作る時代であり、1次、2次、3次産業を融合した第6次産業化も志向されている。
外需上回る内需の伸び
日本電気制御機器工業会(NECA)の2012年度出荷見通しでは、外需に比べ内需のほうが伸び率が高くなっている。大きな産業である自動車関連市場に加え、新エネルギー、新素材、6次産業などまだまだ期待できるテーマは多い。
FAで裏付けられた技術が日本経済復興の切り札になることが期待される。