日本電設工業協会(林喬会長)は、東日本大震災電気設備被害調査報告書をまとめた。地震、津波、液状化現象による建築電気設備の被害状況について各設備システムの機能調査を行っており、今後の施工や維持管理に役立つ内容になっている。
今回の調査は、技術・安全委員会19社に被害調査を依頼し行った。調査対象は震度5弱以上の地域の建築物で、取り壊し予定の建築物を除き、現在使用中あるいは復旧後に使用する受電が高圧または特別高圧の建築物。回答は117件。
設備別被害発生状況は別表の通り照明器具が20%と最も多い。受変電は9%、中央監視は2%、自火報は9%である。
建築用途別の電気設備被害状況を見ると、事務所ビルは回答28件のうち21件の電気設備が被害。受変電設備ではキュービクル内の配線損傷、トランス破損など。
店舗では回答14件のうち12件が被害。受変電設備は変圧器損傷が出た。共同住宅では回答5件のうち3件で被害。液状化で動力盤が基礎ごと10度程度傾く。学校では回答6件のうち5件が被害。屋上キュービクル2次側機器損傷、動力設備の制御盤等損傷。ホテルでは回答9件のうち8件が被害。受変電設備でトランス2次側損傷、動力設備が津波により地絡・短絡遮断及び不動作。病院では回答11件のうち7件が被害。蓄電池収納盤が破損。「その他」では回答44件のうち33件が被害。受変電設備は電源断機器損傷、動力設備は制御盤と屋内配線損傷など。
報告書では、防災上の提案事項として(1)災害に強い電気設備(2)災害時に貢献できる電気設備(3)日常点検の重要性についてまとめ提言している。
また、調査結果から、電気設備の主な被害は受変電盤等、盤内機器の移動・変形による損傷・短絡が見られるが、建築物・内装材・什器・備品および空調設備等の揺れ、破損に伴う被害が多数を占めており、今後は報告書の防災上の提案事項を生かして設計・施工、維持管理を行って欲しいと呼び掛けている。
なお、同報告書は協会のHP上で公開されている。