2011年の業績を聞かせてください。
シュトゥルンベルグ副社長 09年は08年の危機の後で、売り上げが20%ダウンしたが、その後の力強い成長で10年は40%成長して、危機の前より高いレベルになっている。11年もある程度成長は緩むかと思っていたが、終わって見ると14%増と2桁の伸長となった。これは電子部品関係全体市場の成長率より高く、非常に満足している。地域的にもアメリカ、欧州、アジアとバランスのとれた成長となっている。製品的には、エレクトロメカニカルの端子台が当社全体の伸びより少し下回ったが、エレクトリックの分野は全体の伸びより高かった。分野別でも、再生可能エネルギー関連向けは大きな成長があったが、ソーラーや風力発電は少し伸びが緩やかになってきており、とくに中国での風力は調整期にある。一番成長したのは機械工業と電力の発電、送配電分野だった。
12年は8%成長を見込む。
―-12年の計画はどうなっていますか
シュトゥルンベルグ副社長 12年は8%増の成長を見込んでいる。10年のような伸びはないが、下がることもないと楽観的に見ている。その要因の1つとして、フエニックス・コンタクトグループは生産能力拡大、新製品開発のために投資を継続しており、毎年売り上げの平均して7%を研究開発投資にあてている。オートメーション製品の拡大、新しいコンセプト製品の開発、品質の向上、ソリューション事業の拡大へ投資していく。これらの投資はすべて自社のお金で行っているのも、継続的な投資を行える要因である。
―-日本市場をどう見ていますか。
シュトゥルンベルグ副社長 日本法人はこの2年間、平均以上に売り上げを伸ばし非常に貢献してくれた。日本のビジネスは09年の金融危機以降も成長が高く、11年3月の大きな災害があったにもかかわらずさらに高い成長をしてくれた。
―-今後の中期的展望はどうですか。
シュトゥルンベルグ副社長 11年に我々は非常に大きな戦略を立て、コンポーネントの提供からシステム・ソリューションの提供を行うことで成長していくことにした。ソリューションというのは、製品だけでなく、むしろアプリケーションを提供していくことで、ひとつの例を挙げると、風力発電所のタービンでの課題はそこのモータをどのように制御するかということである。
われわれはそこのコンポーネントとソフトウェアを提供するだけでなく、完全に環境をモニタリングするためのソリューションとして、ひとつのパッケージを提供していきたいと考えている。これは当社にとって戦略的に大切なひとつのステップである。
また、セールスオペレーションも強化し、顧客のアプリケーションニーズを理解し、それに合うソリューション提供していくための人材にも投資していく。日本のセールスオペレーションでも新しい人材投資を行っていく。これはわれわれにとって最も大きな投資である。
―-ハノーバーメッセの評価は。
シュトゥルンベルグ副社長 ハノーバーメッセは国際的な見本市として最も大切で、展示ブースも大きい。展示会場7カ所に2000以上の新製品を展示している。無線、電気技術、メトロポリタン技術などである。毎年この展示会に世界の顧客を招待しており、今年は40カ国から1000人以上を招いている。
自動車産業の成長に貢献
―-欧州市場の動向をどう見ていますか。
シュトゥルンベルグ副社長 欧州は金融危機があるが、当社売り上げの3分の1はドイツを除く欧州での売り上げであり、われわれにとって欧州はまだまだ大切な市場である。南欧州のポルトガル、イタリア、スペインなどで売り上げが下がっている。しかし、ロシア、ポーランド、ハンガリーは成長が見込める。ドイツ国内はわれわれにとって最も大きな大切な市場であり、ドイツ経済がどのように発展していくかが重要になる。
そのひとつは自動車産業である。自動車産業はいま新しいコンセプトに非常に投資している。HV(ハイブリッドカー)、EV(電気自動車)などであるが、われわれは自動車産業に非常に強い部分を持っているので、成長に貢献できる。もうひとつは原子力発電関連で、日本の原発事故以来、ドイツ政府は脱原発の政策を決めたが、そのためには再生可能エネルギー活用に向けて莫大な投資が必要になり、また従来のエネルギーのガス発電などへの投資も必要になってくることで、当社にとってポジティブな影響がある。当社はこれらすべての分野に対応でき、このような政策の変換はわれわれにとってさらなる成長を意味する。
―-中国の模造品問題をどう見ていますか。
シュトゥルンベルグ副社長 コピー商品の問題はわれわれにとってはそんなに大変な問題ではない。確かに、きちんと対処していくことも必要で、今回のハノーバーメッセではすでに2つの会社にパテント侵害に対して法的な対処を行っている。これは中国だけでなく、中東、東欧などでも当社製品のコピーが出回っている。
―-素材価格上昇などコストアップ対策を聞かせてください。
シュトゥルンベルグ副社長 この問題に対処するためのひとつの戦略としては、われわれの製品の付加価値をどんどん分配していくことだ。生産はいまドイツ、アメリカ、中国が中心となっているが、これ以外にも生産国を他に広げることで、例えば材料を現地で安く調達できたり、人件費を下げることができるかもしれない。日本についても同様である。どのように日本で価値を創造できるかについて考えている。販売、物流だけでなく、現地でのエンジニアリング、デザイン、組み立てなどを検討している。日本は当社にとってトップ10の市場であり、日本についても新しいコンセプトで考えている。アメリカではハリスバークに大きなエンジニアリングセンター建設している。
ドイツ・バットビルモントでも電子工学部門の建設計画がある。毎年、売り上げの10%の設備投資行っているが、今年はそれを上回る可能性がある。中国では最初の拠点が一杯になっているため、2つ目の拠点を作っている。
―-貴社の成長要因を聞かせてください。
シュトゥルンベルグ副社長 ファミリー経営のため、辛抱しながら長期的に物事を見た経営ができる。例え1年間の結果があまりが良くなくても戦略をすぐに変えるのではなく、時間をかけて投資を行っている。これは製品開発、市場の開拓でも同じで、一つ一つのステップを踏んで一歩一歩進んでいこうとしている。中国も最初から成功したわけでなく、8年間が経って中国はドイツ以外で最も大きな市場になっている。これは家族企業だからできることである。当社の独特な家族的経営の文化を世界各国に移転していくには、現地の文化にフエニックス・コンタクトの文化を溶け込ますことで、統合した理想的な文化ができる。これが当社の良い点であり強い点である。
15年の売上げは2200億円
―-将来の計画は。
シュトゥルンベルグ副社長 これから5年間平均して10%の成長を目指していく。これを上回る年もあれば、下回る年もあるだろうが、この平均伸び率でいくと15年には20億〓(2200億円)以上の売り上げになる。
その時に、ソリューションビジネスの売り上げは現在の約5%から15%に増加する計画を持っている。