堅調に市場拡大 設備投資の増加を背景に 配線接続機器 明るい材料震災復興需要 自動車関連の復調 スマートグリッド構想 小型・薄型化/狭ピッチ化/安全性向上進む

端子台、コネクタ、配線資材などの配線接続機器は、国内外の設備投資の増加を背景に堅調な拡大を見せている。とくに東日本大震災に伴うエネルギー問題のクローズアップで、市場は追い風傾向にあり、しばらくこの状況が続きそうだ。日本電気制御機器工業会(NECA)がまとめている配線接続機器を含めた制御用専用機器の出荷統計によると、2010年度(09年4月~10年3月)は前年比22・4%増の1254億円、11年度は同2・8%増の1289億円とPLC・FAシステム機器と並んでプラスになっている。12年度は1215億円と逆に制御機器の中で唯一マイナス成長の見通しを立てているのが気になるところであるが、震災復興需要、スマートグリッド構想、自動車関連の復調など明るいテーマも多く、上方修正も十分期待できる。製品的には、小型・薄型化を基本に、狭ピッチ化、配線作業の容易化や安全性の向上、接続信頼性の向上などが一層進んでいる。

配線接続機器市場は、NECAの制御用専用機器出荷統計では、11年度1289億円となっているが、この中で、表示灯・表示機器やアナンシェータ、電源機器などが金額の半分強を占めており、配線接続機器は約600億円と見られる。従ってNECA統計では、端子台は約150億円、コネクタが約400億円と推定される。これにNECA会員以外も含めると市場規模は、端子台が約450億円、コネクタが4800億円、ケーブルアクセサリー・配線ダクト類が約70億円と見られ、合計で約5300億円市場を形成している。

配線接続機器市場を取り巻く環境は、自動車・工作機械、ロボット関連が堅調に推移しており、市場を底支えしている。また、省エネや震災復興などを背景に、受配電やビルのリニューアル需要が活発化している。

とくに再生可能エネルギーである太陽光発電や風力発電関連で、具体的なシステムや製品が開発、発表されており、今後大きな需要分野になることが予想される。加えて、節電対策や省エネ対策に伴い、各種のエネルギー管理システムなどが登場しており、こうした分野の伸長も見込まれる。

今年7月からの再生可能エネルギー買取制度に伴う波及効果も期待されている。
円高、素材価格上昇が懸念材料
その一方で、円高や素材価格の上昇は懸念材料のひとつになっている。配線接続機器各社とも製品単価を抑える中で量的拡大により利益確保しているところが多いだけに、市場の動向とコストの両睨みの対応が求められる。

端子台は、市場で大きなウエイトを占めるプリント基板対応タイプで、インテリジェント化、薄型化、省スペース化、狭ピッチ化が進んでいる。

配線作業の省力化につながる圧着端子とバネを一体化したタイプは、各社独自のノウハウで製品展開を図り定着している。バネ式端子台は、長期間の振動にも強いため(振動によるネジの緩みがない)、公共の輸送・交通設備にも採用されている。また、欧州式の圧着端子を使わないタイプも浸透している。作業性の良さと安全性などが大きなポイントといえる。国内メーカーでもこのタイプを品ぞろえしており、主流になっている。

コネクタ接続タイプでも、小型・軽量化が進展し、コストダウンも進んでいる。防爆構造タイプも注目されている。現場でのアース工事が不要で、非本質安全端子側の配線は電源2本とコネクタだけのため、配線工数の大幅削減につながる。国内の防爆規格やNK規格、さらに欧州のATEX、米国のFM、カナダのCSAといった海外規格にも対応している。
高付加価値品の開発に注力
各端子台メーカーでは付加価値の高い新製品開発に注力しており、特に、省配線化ニーズに応えて、コネクタ化や複合化(ハイブリッド)などの工夫を行っている。省配線化は、盤と盤、盤と機器、機器と機器の間をつなぐ上で作業やメンテナンスの工数削減につながることからニーズが高い。

配線作業の省力化を図る点からスタッド形端子台の需要も伸びている。スタッド形端子台は、配線作業が容易で作業の省力化が図られるとともに、配線作業効率が高いのが特徴である。加えて、挟み込みなどの接続不良を未然に防止できる効果もあり、ネットワークのオープン化が進む中で、こうした省配線機器のウエイトが年々高まっている。

安全確保と作業の効率化を両立させた製品では、圧着端子と端子ねじを正常な位置関係に規制する配線脱落防止機能を備えた端子台が、工事現場などで配線脱落事故を未然に防ぐものとして注目されている。

一方、IEC規格に準拠し1000V定格の高耐圧仕様と、感電事故を未然に防止する安全構造を備えた高耐圧端子台もラインアップが充実し始めている。

ハイブリッド端子台では、電子部品などを搭載し付加価値を高めたものも多い。サージアブソーバー素子やリレー、スイッチ、断路器、ヒューズ、LEDなどを搭載したものが一般的で、実配線削減でスペース効率の向上を図るため、リレーやサーキットプロテクタ、ヒューズ、スイッチを中継端子台に搭載し1ユニット化を図ったタイプや、中継端子台が不要な機能搭載型リレーターミナルも着実に市場を拡大している。

メンテナンス性では、電流容量の区分や回路のグループ分けなどに端子台のカラー化で対応するケースが増えている。

こうした中で、既設のPLCに接続されたケーブルをつなぎ替えることなく、新設のPLCに置き換えることが可能なPLC変換アダプタや、PLC対応の中継コネクタ式端子台も伸長している。PLC変換アダプタは、工数が約5分の1に低減できることが特徴となっている。

端子間ピッチ8ミリという、スペース効率の向上を図った断路端子台も各種のプラントで採用されている。
薄型テレビの落ち込みカバーが課題
コネクタは、携帯電話、パソコン、デジタルカメラ、DVDプレーヤー、薄型テレビなどのデジタル機器分野や、アミューズメント分野、さらに自動車分野が牽引しているほか、半導体・液晶製造装置、工作機械、ロボットなどの需要も大きい。加えて、デジタル放送関連やセキュリティ分野、移動体通信基地、新エネルギー関連分野などでも市場が拡大している。アミューズメントでは停滞していたパチスロ向けの動きが活発化しており、明るい要素になっている。ただ薄型テレビの落ち込みをどのようにカバーするかが課題でもある。

最近のコネクタの傾向は、超小型・スリムサイズ、低背化、最軽量化、SMT対応、カード用コネクタの増加などが目立つ。また、接触の安定性確保、環境・作業性に配慮した結線方式採用の取り組みも進んでいる。
セーフティタイプが浸透
安全ニーズに応えたセーフティタイプのコネクタも浸透している。配線の接続作業時や計測業務時、あるいは配線接続部分での不用意な接触事故などを未然に防ぐ構造となっているのが大きな特徴で、工場、研究室、学校など様々な分野で使用されている。

産業機器分野で普及が期待されているのが、工作機械や半導体製造装置などで使用されるセンサを繋ぐコネクタである。機械・装置で使われるセンサは多種あり、メーカーによって使用されるコネクタも異なっている。そこで、コネクタの標準化を図ることで、配線工数や在庫コストなどを削減し、トータルコストのダウンにつなげようという取り組みが進んでいる。

コネクタ市場もグローバル化に伴う販売競争の激化から、メーカーの再編が行われており、端子台同様、特徴のある製品・営業展開が鍵を握っている。

ケーブルアクセサリーや配線ダクトは、配線接続機器を陰で支えているが、最近では端子台、コネクタの需要増と比例するように用途拡大が進んでいる。特に、ケーブルアクセサリーは、電子機器や自動車向けを中心に堅調に推移しており、日本でも一定シェアを確保している欧州メーカーの中には、市場裾野の広がりに対応して日本市場の開拓に本腰を入れるところも出始めている。

素材も樹脂に加え、ステンレススチール製のケーブルバンドなど高付加価値製品も数多く登場し、屋外などの過酷な条件下での使用が可能なことから、再生可能エネルギー分野や鉄道車両分野、船舶・航空機分野など、新しい市場に向けての営業展開が行われている。また、ケーブルと取り付けベースを一体化した製品も注目されている。

この分野でも環境対応への取り組みが始まっており、環境負荷の大きい有害物質の排除に向けたエコ製品の開発や再利用できるタイプの開発が進んでいる。
新興勢力との販売競争も
配線接続機器市場は、幅広い分野にわたることで、安定的な市場を維持している。今後、中国、韓国をはじめとして新興勢力との価格を中心とした販売競争が予想される。しかし、一方で価格競争を避けるためにモジュール化や開発から製品化まで丸受けするEMS的な取り組みを行うメーカーもある。

環境・省エネ・安全などをキーワードにして、配線接続機器に求めるニーズもより高度になる一方で、着実な拡大も見込めるだけに、今後成長が期待される。

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