日本食品機械工業会(尾上昇会長)は、機械安全国際規格IEC60204―1対応の制御盤モデルを製作し、国際食品工業展(FOOMA JAPAN)で公開した。制御盤に関しては日本配電制御システム工業会(丹羽一郎会長)が製造コスト削減で調査研究を行い実証段階に入っているほか、日本電気制御機器工業会(山田義仁会長)が設計安全の資格制度セーフティ・ベーシックアセッサ(SBA)を創設する計画である。生産方式から安全対策まで制御盤に技術革新の波が押し寄せており、配電制御システムメーカー、関連機器メーカーは各工業会の取り組みから目が離せない。
日本食品機械工業会安全衛生企画委員会は制御盤設計の調査研究に取り組み、2010年度に手引書「国際規格対応制御盤設計ガイドライン―IEC60204―1準拠―」を作成した。11年度事業では、このガイドラインに基づいて制御盤のモデルを完成し、6月5日からのFOOMA JAPANの会場で一般に公開した。このモデル制御盤はIEC仕様書に沿って製作された。「機械の海外輸出で一番問題になるのは盤である。非常停止回路、安全回路設計などを見直した。PLC、インバーター、タッチパネル、ボックス、LED照明、端子台などはCEマーキング適合品にし、結束バンド、配線ダクト、ケーブルも米国規格UL94Vを使用した」(製作に携わった岡村隆一さくらマシナリーコンサルティング代表)。モデル制御盤は製造コストが約10~15%高くなったが、「欧米や中国など現地で規格を指摘され作り直すよりずっと安い」(岡村氏)という。
食品機械の国内販売額は09年が4035億2400万円、10年4367億6100万円、11年4297億1200万円で推移している。輸出額は09年185億4200万円、10年282億1800万円、11年300億円と増加傾向にあるものの、他の産業用機械と比べ輸出額は少ない。
同工業会大村宏之事業部長は「高齢化が進み国内では食品工場の新設が減少傾向をたどる。食品機械メーカーはこれまでは海外からの引き合いを断るなど輸出しなくても国内市場で十分であった。今は、海外市場進出を目指している」と輸出増進策に転じた。そのため「衛生と同様に電気安全対策にも注力するようになり、設計ガイドラインやモデル盤を作った」。
現在、東京、大阪で年8回開催のセミナーでIEC対応制御盤をテーマに取り上げ普及促進を図っている。
世界は日本食ブームの最中にあり、IEC対応制御盤搭載の日本製食品機械の輸出は増え続けるものと推定されている。
一方、国内では緩い機械安全の法規制が普及の壁になっているが、欧米はもとより中国、韓国でも機械安全規格が施行されており、日本も法令整備が行われるものと見られる。