経済産業省産業構造審議会新産業構造部会は15日、報告書「経済社会ビジョン『成熟』と『多様性』を力に~価格競争から価値創造経済へ」をまとめた。
社会や個人の課題を解決するソリューションを提供することにより、価格が高くても購入する商品やサービスを生み出す価値創造モデルへ企業戦略の転換を求め、製造業は垂直統合型から水平分業型への移行が必然としている。
また、国内の産業構造は自動車産業依存から抜け出し、ヘルスケア・新エネルギーなどの課題解決型産業、クリエイティブ産業、先端産業を創造し支柱を多様化すべきと指摘している。
報告書は、現状を縮小連鎖とジリ貧の進行による「やせ我慢」の経済と位置付け、そこから脱皮し目指すべき経済社会ビジョンと政策の基本的方向を示している。
行き詰まりを打開するために、(1)価格競争から価値創造競争へ企業戦略の転換(2)グローバル展開(3)新産業の創出と産業構造の転換が必要としている。ビジョンが実現した場合、国内生産額は2010年の894兆円から20年には1066兆円に拡大すると予測。製造業は277兆円から325兆円、ヘルスケアサービスを含むサービス産業は184兆円から249兆円へ増加する計算。
実現までの段階は、ヘルスケア分野等の需要拡大による雇用創出と生産性向上を図りつつ自動車・エレクトロニクス・機械産業の競争力強化、産業空洞化対策が不可欠という。
また、守りだけでなく、攻めの同時進行を挙げている。
攻勢として第一に、課題解決型産業(ヘルスケア・子育て支援・新エネルギー産業)、クリエイティブ産業、先端産業(次世代自動車、宇宙・航空機、川上・川下産業の企業間連携、次世代デバイス)の創出により自動車産業依存からの転換。第二に、インフラシステムの輸出、中小企業の海外展開、低炭素技術・製品の市場開拓、海外収益の国内還流などグローバル展開の推進。第三に、イノベーションの加速、IT活用、中小企業の潜在力・経営力強化、ベンチャーの活性化など企業戦略の転換である。
製造業については、独自商品開発やブランド構築、顧客へのきめ細かい対応体制強化による「サービスとの融合」を進め、国際分業の中で価格交渉力の高いバリューチェーン構造を強化していき、成熟した国内市場の顧客ニーズを商品開発に生かし新興国とは差別化された価値を創造する。
稼ぐ製造業の形態として(1)システム・5次産業型(2)ニッチトップ型(3)ブランド型(4)ファブレス型をあげ、共通点に企画開発段階、保守サービスにおける顧客とのタッチポイントを活かした事業展開を示している。
国内生産工程も組み立て部分の海外移転による変化を織り込んで、川上と川下工程に力点を移動し、労働者の役割も変える。
いずれにしても、国内産業構造は転換を迫られている。