経済が発展するにつれて、産業分類の仕方が変わってきている。統計局では日本の産業の分類を大分類・中分類・小分類・細分類の4段階に分けている。大分類で農業・製造・小売・金融・情報通信・建設など20項目の業種に分け、さらにそれぞれの業種を中分類で99、小分類で529、細分類で1455としている。
これまではコーリン・クラークの唱えた産業分類である第1次産業、第2次産業、第3次産業という3つの分け方が一般的に記憶に残っている分類方法である。クラークは経済が発展するにつれ第1次産業から第2次産業、さらに発展して第3次産業へと産業がシフトしていくことを示した。1980年代に入って脱工業社会が盛んに言われるようになり、工業社会の後は知的産業の時代や情報産業の時代が到来するという本が多数出版された。90年代に入るとコンピュータによる情報処理技術の著しい進歩や情報の伝達技術である通信の著しい発展がそれぞれの産業の内部に産業の情報化という構造変化をもたらし、産業自体を複雑化した。現在では産業分類で情報産業がしっかり定着している。
情報産業は第1次情報部門と第2次情報部門に分類されている。市場に情報を供給することを主体とした、いわゆる情報産業が第1次情報部門を構成し、組織や企業内の情報生産活動をする部門は第2次情報部門に位置づけられている。2つの部門の生産高を見ると国民総生産に占める割合が年々増加していることがわかる。また今年度の世界企業の時価総額番付を見ても、これまで常にトップの座を保ってきた石油産業を抜き去り、堂々のトップに立ったのは情報産業のアップル社である。それに、ここ10年ちょっと前の我々の生活と今を比較して見ると急激に情報環境が変化していることがわかる。こうした例を引くまでもなく、工業本位の工業社会から既に情報本位の情報社会の中にいる。
携帯電話がどんどん進化してパソコン並みになり便利になったと実感している間に、世界中を飛び交っている情報はどんどん蓄積されて、蓄積した情報を加工し売買する新たな情報産業が誕生しつづけている。今後ますます情報化した新産業が出てくるだろう。
そもそも脱工業化として情報社会に移行してきているのは、工業社会を形成してきた工業技術の発展があったからだ。工業技術は情報産業を支えるコンピューターを始めとしたたくさんの情報機器をつくり出し、情報技術を発展させている。それらの情報機器が情報の産業化を果たし情報産業を隆盛にしている。
一方、工業技術の中核であった生産技術にも情報技術が取り入れられ情報社会が要求している製品の多様化が実現されている。工業技術や情報技術の発達により、あまりに急速に情報社会に入ってきたため、これまでの工業社会の意識でもって判断行動をする人が大勢いる。工業技術も情報技術も技術という側面のみをとらえていると、情報社会で大切な情報を後まわしにして工業社会の価値であった機能一点張りを優先してしまうことになりかねない。
昨今の電気部品や制御コンポを扱う販売員も工業化社会の意識をひきずっている人が多く見られる。販売員が探している見込客は技術者が圧倒的に多い。その技術者に提供できる商品はカタログ商品ではなく、情報を本位としなければならない時代に入っている。情報社会の中にいる技術者が欲している情報とは何か、販売員は日頃からユーザー情報の蓄積を心掛けていれば、それらの情報をどんな風に加工して利用すればいいかわかるはずである。(次回は7月25日付掲載)