あるメーカーが商社の経営者と営業責任者に新規取引を依頼している場面に、たまたま同席して話を聞く機会があった。メーカーの担当者は、競合会社の製品と自社製品を比較しながら熱心に説明している。経営者もいろいろ質問し納得の様子で、アプリケーション例を求めた。
メーカーの担当者は会社案内、製品カタログは用意してきたが、アプリケーション集までは持参していない。一瞬、間をとってから、社内で事例を再整理する時間が欲しいと返答して話は終わった。経営者はアプリケーション集があれば、一緒に適切な顧客を抽出し拡販できるという。
市場が成熟した段階ではメーカーはシェアアップを第一に考え、ブランド力を強化する。価格競争だけでは新興国の低価格に勝てない。市場成長期は特定分野でどんどん市場を開拓できたが、省力・省人化という本来の製品目的は不変であるものの、現在は過去と異なる販売戦略が必要。
その一つが、アプリケーションを前面に押し出した営業ではなかろうか。アプリケーションの充実は企業が次の成長期に入る前段階に位置するのだから、今こそ取り組むべきとき。では、どのようにすべきか。答えは商社の活用である。商社が抱える多分野の顧客からメーカーは“意識"して情報を収集することである。