昨年12月からの欧州機械指令の改定で、従来のISO13849―1:1999では、「カテゴリー」で安全制御システムを評価していたのが、改定後は「PL(パフォーマンスレベル)」で評価することになった。改定の背景には、安全関連の制御システムを構成する部品が、メカニカル部品から半導体などの電子部品に移行し、制御の方法もハードウェアからソフトウェアへロジックに変わりつつあることがある。
今回の改定では、カテゴリーの概念を基本に残しながらも、IEC61508の「機能安全」の概念である信頼性や品質も取り入れることで、リスクの見積もり方法も変化することになるが、リスクアセスメントを実施するうえでは、分かりやすくなっている。
一方、昨年7月の改正動力プレス機械構造規格は、ポジティブクラッチプレスを原則製造禁止にし、液圧プレスでのスライドの落下防止装置を充実させている。安全プレスでは、両手操作式安全プレスのスライドなど操作部は、左右の操作の時間差が0・5秒以内を要件化。光線式安全プレスは、改正前の防護高さを最大400ミリから危険を防止するための必要な長さに変更し、光軸間隔を70ミリから20ミリに変更、安全距離に400ミリ以上を追加した。
このほか、サーボモータを使用したプレスのブレーキ性能・故障対策などを規定。非常用停止装置の操作部として、押しボタンスイッチ以外のコード式やレバー式も認めるほか、両手操作式安全プレスのスライドなどの操作部を、直接距離で300ミリ以上離す以外の方法も認めている。
製造現場の危険には、さまざまなものがある。切断や押しつぶしといった機械的なもの、高温や低温などの熱によるもの、感電や漏電といった電気的なもの、騒音や振動、放射線、化学薬品、不自然な作業姿勢など、危険を生み出す可能性は多岐にわたる。これらの危険に対して、当面の安全を確保したいというニーズでは機械的、電気的な安全対策が多い。
主な安全対策機器としては、安全リレー、安全リレーユニット、セフティドアスイッチ、セフティリミットスイッチ、非常停止用スイッチ、ソレノイド付き安全スイッチ、エリアセンサー/ラインセンサー、フットスイッチ、マットスイッチ、テープスイッチ、ロープスイッチ、プログラマブル安全コントローラ、安全プラグ、安全確認型回転停止センサ、非通電電流センサなどがある。これら各種安全対策機器を用途に合わせて、機械本体や機械周辺に装備して安全を確保する。
機械から派生する事故多い
製造現場などで最も多い事故は機械から派生するもので、それを防ぐには人間の作業空間と機械の作業空間を完全に分離するか、人間が作業を行う時には機械が停止する、機械が作業を行う時には人間が作業を行わないことが必要である。この機械災害を防止する基本的な方法としては、ガードによる安全防御と安全装置による安全防御がある。
ガードは、機械と人間の作業空間を構造的に分離するもので、構造によってケーシング、覆い、スクリーン、扉、包囲ガードなどとも呼ばれる。安全装置は、機械設備に適切なガードを備えても、現実的にガード内部に作業者が立ち入る必要が出てきた時に求められる。例えば、段取り、調整などの作業の場合、機械の作業空間と人間の作業空間とが重なり危険領域となる。危険領域では、人間と機械の運転出力のどちらかを停止・安全状態にする必要がある。
国際的な機械安全対策上から、インバータやサーボモータなどの駆動系機器で、安全な停止を行える機能を内蔵した製品開発も増えている。
この流れと並行して、工場内での通信のネットワークでもセーフティ対応が進んでいる。従来、安全回路と制御回路を分離したネットワークが行われていたが、イーサネットの生産現場への普及に伴い、セーフティ対応も一体で構築していこうというもの。フィールドネットワークのオープン化を推進する中でのアピールポイントのひとつとして、今後さらに活発化するものと思われる。
SBAでグローバル運用
一方、NECAや日本認証(JC)などが中心となって展開している「セーフティアセッサ認定制度」も、機械類の安全性を高める設計や安全技術普及に貢献している。さらに10年からは新たに「セーフティベーシックアセッサ(SBA)資格」をスタートさせた。SBAは、製造現場の安全確保の観点をさらに広げ製造職・管理職・管理業務職・営業職など非技術系職種で、機械運用安全の知識を有する人材育成を狙いとしている。対象は国内にとどまらず、海外に製造拠点を展開している国内企業にも広げる方針でグローバルな運用を目指している。
さらに、NECAでは安全関連事業のさらなる展開として、3つ目の資格制度「制御盤設計安全分野」(仮称)の創設について検討に入っている。近年急速に関心が高まっている直流給電や、電気自動車の普及に伴う充電スタンドなど、電気制御装置が一般生活領域にまで使用の広がりを見せつつあるが、これらに使用される制御盤についても設計や保守に関し、安全確保に向けた取り扱い指針が必要になっていることに対応するものである。
ワーキンググループを発足
NECAでは、SBAの制御盤版としての創設を目指しており、NECA会員を中心にワーキンググループを発足させ、検討を行っている。
機械安全に対する意識の高まりは、FA分野・製造業以外にも、防犯・防災分野や情報セキュリティ分野、介護分野、さらにアミューズメントなどの分野にも及んでいる。効果的な機械安全対策機器の登場とともに、各分野で需要が拡大することは間違いないだろう。