ロンドンオリンピックのバドミントン女子ダブルスで4チームが無気力試合として失格となったとき、なぜか、近江商人の家訓「三方良し」の素晴らしさを改めて感じた。失格者は観衆を無視し故意にサーブをミスするなど、素人目にもはっきりとわかる試合をした。
コーチの指示で動いている選手を非難するつもりはないが、とくに驚かされたのは、世界ランク1位のペアが含まれていたことである。誰もが認める世界トップのチームに対して、観衆は最高の技術を見たいのである。次の組み合わせを考えず、堂々と金メダルを取って欲しいと思っている。
逆に、最高の技術に最高の品質「美」を付加した体操個人総合の内村航平選手は絶賛された。製造業でもシェアトップ企業は後進企業に道を譲らないために、常に最高の技術レベルを追い求める。一種の宿命である。その先進企業が所有する最新の技術を故意に仕舞い込んだまま事業を展開していたら、世間は生存権を剥奪してしまう。
企業も技術者も「売り手良し、買い手良し、世間良し」の三方良しを常に意識し、ものづくりをしている。ひとつでも欠けると、今回のように退場させられてしまう。金メダルを取った内村選手と、バドミントン大会失格劇には、技術者が学ぶべきものがあった。