軽量化、省施工がポイント
技術的には、特に軽量化、省施工、熱対策、防じん・防水性、地震対策、粉体塗装などが重要なポイントとなっており、製品の品質や性能は、最新の国際規格(IEC、UL、NEBSなど)に対応しているものが多い。
軽量化、省施工の利点としては、薄板などを使用した軽いボックスは、高所などでの施工性が高まる。軽量の場合、外壁への取り付けなども楽に行える。
熱対策としては、屋外用では遮光板を設け直射日光による温度上昇を抑えたり、扉やボディーに換気口を設け、放熱効果を高めたりしているものがある。パンチング材の採用により通気性を持たせ、天井面のスリット加工と突き出し扉の上面スリット加工により、天井コーナー部の熱がスムーズに排出され、背面から抜け出せずに回り込んだ熱が突き出し扉の傾斜面からスムーズに排出される仕組みを取ったりしている。
温度管理が重要に
しかし、昨今は電子機器の高性能化と小型化が年々進んでいることから、制御盤などに収納した電子機器からの発熱量も増加している。アレニウスの法則で、電子機器に内蔵のアルミ電解コンデンサの寿命は、周囲温度が10℃下がると寿命が2倍に延びると言われている通り、盤内機器の寿命を延ばすためには、温度管理が非常に重要になってきている。
また昨今は、施設や装置全体のエネルギー使用の効率化による費用対効果も重要視されている。それは本体コストだけでなく、取り付け・調達コスト、メンテナンスコスト、エネルギーコストなどをトータルで計算し、総所有コスト(TCO)として捉えることである。制御盤の冷却では、ファンやクーラーなど発熱の状態に応じて対策が取られている。
コンプレッサーおよびファンの開発、盤内外の吸気・排気口の工夫、熱交換器の表面積を拡大し冷却性能を向上させ、消費電力の減少なども行われている。
最近の製品では、内部循環ファンが盤内の温度に応じて停止し、クーラーの稼働時間短縮や、10分ごとに30秒の稼働といった機能も内蔵されている。
防じん・防水性としては、キャビネットの機能のうち、危険な箇所への接近、外来固形物の侵入及び水の浸入に対する保護の程度等を規格で定め、等級に分け保護等級(IP)という記号で示している。屋内の標準使用状態で使用されるものについてはIP2X以上の性能を有すること、屋外の標準使用状態で使用されるものについてはIP23以上の性能を有することが定められている。
地震対策としては、耐震、免震、制震がある。耐震は容易な地震対策の一つで、地震の揺れに耐え、構造物の倒壊を防ぐ。耐震対策を施したラックは強固で倒壊する心配はないが、地震時の機器への負担が一般的に大きくなり、機能保護には対応していない。免震は構造物と設置面の間にベアリングやすべり材を設置し、構造物に直接揺れを伝えない。具体的な免震対策として、ラックの下に免震台を取り付けることにより、ラック内の揺れを5分の1~10分の1に低減できるので、地震対策として有効だ。
制震は、超高層ビル・住宅や橋梁などに実績がある揺れを吸収する最新技術。制震ラックは制震ダンパーが変形することにより、地震エネルギーを吸収し、ラック内の揺れ、および変形を低減し、連続する大地震にも効果を発揮する。
塗装には粉体塗装がよく使用されている。紛体塗装とは樹脂と顔料を練り込んでクレヨンのように固形にしたものを細かく砕いてサラサラの粉末状にした塗料を被塗物に付着させ、これを焼付して塗膜を形成する塗装方法。耐久性(耐候性・耐塩性)に優れた高厚膜が得られ、塗料は回収して使えるため省資源、しかも有機溶剤を含まないため環境にやさしい塗装となる。
ソーラー関連用途伸びる
ボックス・ラック用途で最近需要が伸びているのが、太陽光発電システム関連である。事業所や家庭に加え、地方自治体や民間ベースで取り組まれているメガソーラー向けは期待が高い。太陽光発電は屋外に設置されることが多いため、キャビネット・ボックスは、防じん・防水性能を高めたものが多い。熱対策も重要で、温度上昇試験で放熱の検証を行ったり、直射日光による実験で遮光板の効果と信頼性を検証したりしている。
電気自動車、ハイブリッド車充電対応関連製品も広がりつつあり、コンセント収納用キャビネットは、ケーブル盗難、盗電を防ぐダイヤル錠などを備え、化粧板により店舗、住宅などの美観に配慮したタイプなどがある。
また、中継ボックスも需要が増えており、ボックスには鋼索機械制御、開閉装置、配電、計装関係などのケーブル接続用端子が入るが、試験を積み重ねることで品質を高め、ボックス本体と端子ユニットを一体構造とした基本設計のものなどがある。保護構造はIP65、IP67などが中心。
環境問題にも取り組む
地球環境問題への国際的関心の高まる中、電機・電子機器を収納するボックス・ラックは分電盤、制御盤、弱電機器収納など使用目的も幅広く、設置場所も身近な家庭から学校、オフィス、病院など人の生活するあらゆる環境に設置されている。使用後については廃棄、リサイクル化など今後社会的に高まるであろう動向への考慮も必要になっており、各社は規制、基準などで環境問題にも積極的に取り組んでいる。