世界的に医療機器市場が広がりを見せている中、半導体画像センサであるCMOSセンサやメディカルモバイル端末など、半導体の技術が医療機器分野に応用されるケースが増えている。CMOSセンサのトップメーカーであるソニーがCMOSセンサの増産を行うなど、医療機器産業向けに大型の設備投資を行うメーカーが増えている。
世界の医療機器市場は、現在約25兆円といわれ、今後も年4~6%の成長が見込める産業である。さらに医薬品市場は50兆~60兆円と推定され、世界的な人口増加を背景に今後10年以内に30%伸びると予想されている。これらを背景に、先進国ではホームヘルスケアが巨大産業に成長するという見通しが強まっている。
こうした市場を背景に、半導体の技術を医療機器産業に応用するケースが増えている。特に写真や映像を撮影する半導体画像センサのCMOSセンサや、有機ELを活用した画像診断システム、さらに半導体やMEMS、バイオの技術を活用したメディカルモバイル端末などの開発が活発化している。
中でもCMOSセンサについては、CMOSテクノロジーを利用した医療用センサデバイスへの応用開発が進んでいる。例えば、センサ信号処理回路と無線通信機能を一体化し、超小型・超低消費電力・低コストが特徴のセンサモジュールなどが挙げられる。
機能回路を1つのシリコンチップ上に集積できるCMOSイメージセンサ技術を応用するもので、カプセル内視鏡への応用など、医療・バイオ分野へのイメージセンサ技術の応用として期待されている。
こうした医療機器産業分野でのCMOSセンサの成長を見込んだソニーでは、設備・開発投資の主力を医療機器産業にシフトする姿勢を見せている。CMOSセンサを増産するため、2013年度上期までに800億円の設備投資を行い、生産能力を現在の月産4万5000枚から6万枚へと30%引き上げる方針である。
CMOSセンサに関して、ソニーは世界トップのシェアを誇っているが、増産の目的はスマートフォンなどの需要拡大に対応することに加え、将来的に医療機器向けへの応用を視野に入れたものである。
さらに、キヤノンも次の成長分野は医療分野と予想しており、開発投資の多くを医療分野に投入している。富士フィルムも将来的に全売上げの50%以上を医療産業で占めると予想しており、今後半導体メーカーを中心に有力企業の医療分野への本格参入が増えることは間違いないだろう。