サーボモータ 中国は下期以降に期待 自動車関連やスマートフォン国内市場を牽引 脱レアアースへ開発に拍車

サーボモータ市場は、昨年の第3四半期(2011年10月~12月)を底に回復基調に転じてきた。本格回復まではまだ時間がかかりそうであるが、今年第3四半期以降の中国、欧州市場の動向によっては再び上昇が期待されている。昨年は、3月の東日本大震災の影響が市場に大きく表れたことから、今年の市場動向とは単純に比較できないものの、現状では自動車とスマートフォンやタブレットPC分野が牽引する形となっている。機能的には高速・高精度制御、省エネルギー化、セーフティ対応、簡単な操作化などが進み、使いやすさと機能の向上が進んでいる。一方、脱レアアースを目指したモータの開発も各社が取り組んでおり、ジスプロシウム(Dy)など特に希少素材を中心に代替した製品が今後、発売されてくるものと見られる。

サーボモータ市場は、リーマンショック後の落ち込みから急速に回復、10年は数量・金額とも前年比2倍以上の大幅な伸びを見せた。しかし11年は、東日本大震災の影響などで前半は前倒し発注の集中で増加したことに加え、需要を牽引していた中国市場の低迷、欧州経済の悪化などが響いて、生産が落ち込んだ。昨年の第3四半期を底にして再び上昇に転じる動きを強めており、今年第1四半期は震災の影響を受けた昨年同期に比べ75%ぐらいの水準で推移している。

経済産業省の機械統計によると、サーボモータの生産は、10年が数量410万台(前年比280・8%増)、金額が1898億円(同272・3%増)と驚異的な回復を見せた。11年は数量432万台(同5・5%増)、金額2167億円(同14・2%増)となっており、金額面では好調に推移していることがうかがえる。

11年後半は、前半の発注前倒しの影響による反動や、半導体・液晶製造装置の需要不振、欧州の金融危機による市場の冷え込み、中国の金融引き締めの影響などで需要が低迷し、日本電機工業会(JEMA)がまとめている生産実績では、11年度(11年4月~12年3月)は1784億円で、前年度比13・7%減少している。12年度については1962億円とプラスの見通しを立てているが、現状は前年度実績を下回っており、今後の伸長が大きな鍵を握っている。

新エネ、環境関連も期待

国内市場は、自動車とスマートフォン、タブレットPCなどの生産が好調なことで、サーボモータの需要増につながっている。3品(食品・薬品・化粧品)分野、サニタリー分野も堅調で、需要を下支えしている。加えて、EV(電気自動車)や充電スタンド、バッテリーなど環境問題が絡んだ新たな産業も期待されており、ソーラーや風力など再生可能エネルギー関連と合わせて期待が高い。特に、こうした分野では製造工程での巻き線機械用として、サーボモータが使用されており、さらなる拡大が見込まれる。

工場以外でも、駅ホームの安全ドア開閉や自動改札機、乗り物シミュレータなどのアミューズメント関連、回転鮨のベルトコンベア制御、介護ベッドや手術支援ロボット、医療検査装置など介護・医療分野などの分野でもサーボモータの採用が進んでいる。

外需は、欧州向けは市場の回復が遅れているが、北米向けは航空機や鉱山機械などの分野で需要が伸びている。期待市場の中国は、金融引き締めや欧州向けの販売伸び悩みなどもあり、依然停滞しているが、新政権がスタートする今年10月ごろから新たな景気刺激に向けた政策が取られるのではないかという期待もあり、本格回復にはもう少し時間がかかりそうだ。ただ、中国も人件費の上昇が続いており、生産の自動化投資は避けて通れない状況となっている。自動車生産を中心にロボットの導入が加速しており、サーボモータ需要につながっている。

小型・軽量化が進展

サーボモータは依然、使いやすさに重点を置いた製品開発が進んでいる。複雑な制御調整が簡単にできるオートチューニング機能、機械の振動を抑えながら短時間で位置決めを行う制振制御技術、作業の安全を確保するセーフティ制御技術、さらに効率的な生産を進めるネットワーク化対応などがポイントとなっている。さらに近年の機械・装置の小型化に対応し、サーボモータでも小型・軽量化が図られている。

オートチューニングでは、ワンタッチで機械の共振制御などにも対応できるよう、各社が独自の機能を搭載している。制振制御技術ではアーム先端の振動に加え、装置本体の残留振動も抑制できる低周波抑制アルゴリズムを搭載し、さらなる高精度調整を可能にしている。

高速化では、速度周波数応答2・5kHz、22トビツロータリーエンコーダーの標準搭載で、400万スバル/revを超える高分解能製品も登場しており、位置決め整定時間を大幅に短縮し、高精度な位置決めや微細加工を実現している。整定時間を短縮することは、業務の効率化につながり、機械・システムの生産性が向上する。

サーボモータ使用時のトラブルに対応してドライブレコーダ機能を搭載した製品も登場している。使用時にアラームが発生すると、アラーム発生前後のサーボデータをサーボアンプに保存し、アラーム復旧後にデータを読み出すことで、原因解析に活用できるもの。過去のアラーム発生履歴16個までのアラーム履歴波形をモニタで確認でき、原因追求などに利用できる。

ネットワーク対応では、EtherNet技術をベースに、通信速度100Mbps全2重の高速独自ネットワークを駆使し、リアルタイム通信性能や、自由度の拡大が図られている。

セーフティ機能拡大

セーフティ化では、サーボモータに関連する規格として、ISO13849―1、IEC61508シリーズ、IEC62061、IEC60204―1、IEC61800―5―2などがある。このうちIEC60204―1は、機械の電気装置に関する要求事項を定めた規格で、停止の制御機能について定義している。可変速ドライブシステムの機能安全規格であるIEC61800―5―2への対応品も増加している。現在はこの2つのセーフティ規格を搭載したサーボモータが発売されているが、今後、国際標準化に準拠したセーフティ機能の拡大が予想される。

防爆ではATEXの新防爆基準に対応し、小型・軽量でコンパクト化したACサーボモータが標準で発売されている。そのほか、厳しい環境下でも使用できるよう保護構造IP65などを標準採用したタイプやIP67対応品も増えている。低剛性の対応もポイントで、特に高速応答の必要なマシンボンダーや、低剛性メカニックを低振動で高速駆動したい取り出しロボット、多関節ロボットなどで重要視されている。

小型・軽量化では、トルクの伝達・変換などの構造を排除し、サーボドライブが必要とするトルクを直接供給できるようにすれば、機構が単純になってコンパクト化が可能である。故障の発生や外からのトラブルの要因を減らすことにつながり、コストや省資源という点からもメリットが大きい。

機器の小型化への対応という点では、リニアサーボモータの動向も注目されている。回転型サーボモータとボールねじとの組み合わせに比べ、推力が大きく、短ストローク移動で加減速の繰り返しなど強みを発揮できる。特に、小型で速い動きが求められている機械などで最適である。

高効率化ニーズに対応

また、「オールインワン・サーボモータ」として、ドライバ、エンコーダ、モーションコントローラ、シーケンサ、ネットワークまでを1台に収納した製品は、配線作業が不要で、省スペース化にもつながり、トータルコストダウンにも貢献できる。

一方、モータの磁石に使用されるジスプロシウム(Dy)やネオジウムなどレアアースの高騰が続いていることから、モータ各社では相次いでレアアース使用削減や使用しないモータ用磁石の開発を進めている。経済産業省も「レアアース・レアメタル(希少金属)使用量削減・利用部品代替支援事業」として開発補助の予算を組み、脱レアアースへ向けての動きを援護している。

モータは電気自動車や産業機器向けに拡大が見込まれているが、省エネの点から高効率化も求められており、代替素材の開発でコストを抑え、安定的な供給体制の構築を目指している。

次世代の制御技術追求

今後のサーボモータの開発では、次世代素子であるSiC(シリコン・カーバイト)や、GaN(ガリウム・ナイトライド)などを使用した製品の実用化が見込まれている。サーボドライバからの発熱を大幅に下げることで、さらなる小型化が可能となる。

搬送機械、繊維機械などでは、1台のマシンに使用するモータ数が多く、特にサーボアンプの小型化や各軸のゲインチューニング工数の短縮が求められている。このため、回路基板をワンボード化するなど、高密度実装と最適放熱設計の超小型サーボアンプも登場している。

さらに、省配線化につながるエンコーダの配線本数削減や配線レス化、バッテリレス化なども検討されているほか、より高速化・高精度化や、ステッピングなど操作の簡易化などが挙げられる。

サーボモータは技術的にも用途的にも、まだまだ開拓の余地が多いだけに、将来への期待も高い。市場のグローバル化もあり、日・欧・米に加え、今後は韓国、台湾、中国などの新興国メーカーも技術レベルを上げ、競争力をつけてくるのは確実で、製品力、営業力で新たなステージに入ろうとしている。

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