住友電気工業は、同社横浜製作所(横浜市栄区)で建設を進めていた、世界最大規模のレドックスフロー電池と、国内最大規模の集光型太陽光発電装置(CPV)で構成されるメガワット級大規模蓄発電システムが完成、実証運転を開始した。同製作所の電力ピークカットを行うとともに、計画的な発電と電力負荷に応じた放電を行い、電力消費レベルを安定化させる狙いがある。今後同社では、太陽光発電の価値を高め導入促進を図る方針で、2013年中に事業化を目指す。
同システムは住友電工が中心となり、日新電機、住友電設、明電舎が連携し開発された。システム概要は、夜間電力や太陽光発電電力を貯蔵するレドックスフロー電池(容量1MW×5時間)と、CPV28基(最大発電量200kW)で構成、外部の商用電力系統とも連系する。
レドックスフロー電池は、イオンの酸化還元反応を利用し充放電を行う蓄電池。充放電を繰り返しても電極や電解液の劣化がほとんどなく長寿命である。メンテナンスが容易で、発火性の材料を用いておらず安全性が高いことから、変動の激しい充放電運転に適している。貯蔵電力量の正確な監視・制御が可能で、太陽光や風力など再生可能エネルギーの有効活用に適している。
CPVは小面積の発電素子でエネルギー変換する太陽光発電装置。発電素子に特殊な化合物半導体材料を用いることで、発電効率はシリコンパネルの約2倍に。集光パネルは地面から高い位置に設置するので、パネル下のスペースが活用でき、次世代の太陽光発電装置として期待されている。
実証運転中のCPV発電量と、レドックスフロー電池の蓄電量/消費量は、EMS(エネルギーマネージメントシステム)により監視され、計測データはEMSサーバで一括管理される。
実証運転の内容は、同製作所で最大1MWのデマンド抑制によるピークカット運用を行い、電力不足問題に対応する。天候に左右される太陽光発電をレドックスフロー電池と組み合わせることで計画的な発電を行い、太陽光発電の価値を高め導入を促進する。
同社ではこうした実証実験を通じ、供給が不安定とされる太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの導入を促進し、電力の安定供給と電力不足軽減に尽力していく。