FAセンサは、自動車製造関連の需要を中心に回復基調を見せている。省エネや節電、再生可能エネルギーなどの用途でも需要の広がりがあり、先行きへの期待が高まっている。製品の傾向も使いやすさ、設置のしやすさなどを考慮した小型・薄型・軽量化、設置時の動作や取り付けの容易さなどが志向され、トータルでコストメリット発揮への取り組みが強まっている。今後半導体製造関連市場の回復が進めばさらなる拡大が見込まれる。
FAセンサ市場はリーマンショック以降、急速な回復を見せている。日本電気制御機器工業会(NECA)の検出用スイッチの出荷統計では、2010年度は前年比38・1%増の1137億円と大きく伸長した。11年度は大震災による影響と欧州の経済危機、中国市場の停滞などで同6・9%減の1062億円と減少したが、市場は11年第3四半期を底に再び回復基調に入っており、12年度第1四半期は、国内向けが181億円と同2・7%増加となっている。輸出も11年度は12・1%減少したものの、12年度第1四半期は、11年度第4四半期比では12・8%増加しており、上向きつつある。
国内市場は、自動車製造関連向けが堅調に推移して市場を牽引している。例えば自動車産業向けのロボット販売は依然として好調で、日本ロボット工業会によるマニュピュレータ/ロボットの総出荷額は、12年度の第1四半期で同37・9%増の100億円で8四半期連続プラスとなっている。特にスポット溶接用の需要が増加しており、エコカー補助金による自動車の販売台数増加が大きく影響している。
日本半導体製造装置協会による日本製の半導体及びFPD製造装置の販売金額は、10年がリーマンショックから回復し前年比72・7%増の1兆6255億円、11年度は同2・3%減の1兆5887億円、12年度は同10・1%減の1兆4275億円と予想しているが、13年度は中国、韓国の新規投資が影響すると予測し、同20・8%増の1兆7242億円と大幅な増加を予想している。14年度も投資の一段落があるものの、同0・5%増の1兆7326億円を予想している。
前出の日本ロボット工業会によるマニュピュレータ/ロボットの総出荷額は、09年度が同53・8%減の3000億円と落ち込んだが、10年度は同85・6%増の5569億円と大きく回復、11年度も同7・5%増の5988億円と伸長した。12年度の第1四半期は、国内は前年同期比2・8%増と9四半期連続で増加しているが、輸出は同8・3%減と4四半期連続で減少している。
■3品業界の需要堅調
また、FAセンサの期待市場である食品・医薬品・化粧品の3品業界は、製造ラインにおける各種の認識・識別、不良品検知などの用途で、需要は引き続き堅調に推移している。
さらに、節電・省エネに絡む電力監視やモニタリング分野での需要も着実に増加している。
最近では、大規模なソーラーハウスや、メガソーラー施設向けの需要も着実に成長している。特にメガソーラーは、企業と自治体が連携して立地を進めており、パネル製造、パワーコンディショナーをはじめ、周辺設備機器に大きな波及効果が期待されている。
震災復興に向けた設備投資も徐々に建物や設備などにシフトし始めており、配電制御機器、電気材料などの需要拡大へと広がりつつある。
■最も市場が大きい光電センサ
FAセンサの中で、最も市場が大きい光電センサは、LEDや半導体レーザを光源にした非接触センサで、検出方式は透過型、回帰反射型、拡散反射型などがある。長距離検出には透過型が最適である。回帰反射型は、透過型で必要だった投光部と受光部の配線が不要で、配線工数や設置工数を半減できるメリットがある。
このほか、光電センサには超小型ヘッドで取り付けスペースが小さいアンプ分離型、DC電源で使え応答速度が速いアンプ内蔵型、AC電源で使え取り扱いが容易な電源内蔵型、取り付け場所を選ばず微小物体も検出できる光ファイバー式などがある。FA分野では、隙間などにも取り付けられ、光ファイバー部を交換するだけで様々な用途に対応できる光ファイバー式のアンプ分離型の需要が多い。
半導体や液晶製造装置では、微小物体検出用として、高精度、ローコスト、取り扱いやすいなどの理由から光電センサの使用個数が増加、大きな市場を形成している。小型化と長距離検出、高い保護特性などが著しく、検出距離50メートル、保護特性IP69Kなどの製品も伸長している。
食品機械などの光沢検出、包装機械などでのマーク検出といった分野では、カメラ、照明、カラーモニターを一体化したローエンドセンサの需要が伸びている。同センサは、色面積や印字有無判別、シール有無判別、シール異種混入判別、文字認識などが容易に行える。3品業界では、このようにユーザーのニーズに合わせた用途限定センサや提案解決型センサなど専用センサの需要が高まっており、余分な機能を省くことでローコストを実現している。
最近の光電センサは、オートチューニング機能など使いやすさを追求した機能が一般化している。多点制御や差動検出など入光量をアナログ的に制御できるアナログ出力の光ファイバ式光電スイッチなどもある。また、デュアル感度補正機能は、ファイバー先端に汚れによる光量低減が生じても自動的に感度を補正するだけでなく、先端部の清掃を行った後も自動で元の感度に復帰するもので、再ティーチングの必要がないという特徴を持つ。
あらゆる対象物のインライン形状計測を実現した2次元形状計測センサは、帯状に広げたレーザ光を対象物に照射し、その反射光をCCDで撮像し、断面形状を計測する非接触型センサで、撮像情報から形状のプロファイルを生成し、対象物の断面形状(2次元形状)から、高さ・段差・幅・位置・交点・傾きなどの寸法形状を瞬時に計測する。
■耐環境性に優れる近接センサ
一方、近接センサは、耐環境性が良く、高温・多湿、防爆雰囲気、水中など、他のセンサにはない独自の特徴から、工作機械、ロボット向けなどを中心に光電センサとは異なった市場・用途を形成している。振動や衝撃による緩みを防止できるタイプや、6ミリ角の超小型タイプも製品化されている。オールメタルタイプも増え、金属体、非金属体の混流ラインでも使用できる。
検出距離は、数ミリから数10ミリが一般的だが、300ミリぐらいまで対応が可能になっており、リニア近接タイプでは検出距離を0、50、100ミリと調節することができる。近接センサの磁気検出方式を応用したものでは傾斜センサがあり、磁気式のほか光式、メカニカル式などがある。
変位センサは、対象物の高さや幅・厚みを測定するセンサ。最近では、白色同軸共焦点測定方式により、高精度を維持しながら、従来の三角測距方式の変位センサでは実現できなかったセンサヘッドの超小型・軽量化を実現している。対象物の素材や色に影響されない安定した測定を可能としており、ノイズに強い構造で装置への組み込みに適している。
水検出センサでは、検出能力向上のため、従来10mWだった出力を100mWに引き上げられており、不透明容器内の水、及び水を含む液体を確実に検出することができる。
最近では超音波を利用し、液晶のフィルム基板や透明シートのエッジ検出を行うエッジセンサも開発され、アプリケーションが拡大している。
■安全意識の高まり背景に
安全対策用センサは、世界的な安全意識の高まりを背景に市場が拡大している。エリアセンサやマットスイッチ、ライトカーテンなど、接触式、非接触式など多様なセンサが用途に応じ使い分けされている。ライトカーテンは、国際安全規格に対応した高機能のセーフティライトカーテンの需要が高い。現在、最小クラスのセーフティライトカーテンは15×24ミリ形状で、投光側と受光側を同一筐体にすることで、在庫数を半減できるタイプが注目されている。しかも防護高さにより、60ミリ刻みに120~1200ミリまで対応可能。さらに設計や取り付け・調整にかかる工数を大幅に削減し、複雑なアプリケーションにも対応が可能である。そのほか、防犯対策の高まりから、各種の防犯用センサも伸長している。
セーフティ・レーザスキャナも小型化が著しく、現在は79H×60W×60Dミリで150グラムの小型・軽量タイプが発売された。消費電力も3Wと同種製品の半分以下に低減しており、無人搬送車など取り付けスペースに制約があるバッテリー駆動機器に最適だ。
レベルセンサは、液面や粉体面のレベルが設定レベルになった時に信号を出力するセンサ。一般的にタンクや容器内の内容物のレベルを検出する用途が多いが、河川や湖沼の水位・水量測定、下水や排水の液面測定などにも利用される。最近では、災害防止の観点から設備を強化する取り組みが行われており、レベルセンサが重要な働きをしている。さらに、自動車などのオイル系統の管理に採用されているほか、外食産業用にも採用され、新規市場への浸透が進んでいる。
レベルセンサに温度センサを内蔵して一体化することで、スペースの削減とトータルコストの低減を実現したものも注目されている。
流量センサは、高温液体を使用する金型温調器の流量管理や、冷却水を使用するダイカスト金型、焼き入れ装置のコイル冷却水の流量管理、ビンの洗浄に使用される精製水の供給管理、純水や薬液を使用するウエハー洗浄液、基板洗浄液の供給管理などの分野で活躍している。
アプリケーションも拡大
一方、知能ロボット向けに開発された測域(レンジ)センサのアプリケーション拡大が進んでいる。測域センサは、周囲の障害物などの状況を把握するもので、知能ロボットに必要なセンサである。レーザ光線で対象物までの距離を測定し、270度の視野に対して自分を中心に平面地図のような測域情報を得ることができる。
同センサは、長距離で高感度の検出が可能なので、最近では立体駐車場や、トンネル前における車両の高さ検出など、屋外や交通分野、さらに安全分野を中心に用途が拡大している。「安全カテゴリ3」に対応した製品も登場し、セーフティへの対応も進んでいる。
ロボット関連では、ロボットアームなどを中心に動き続ける運動体の角度や角速度が容易に検出できるジャイロセンサ内蔵のスイングセンサなどもある。
物流業界においてもFAセンサが大きな市場を形成している。物流業界はFA分野と非FA分野両方の領域を兼ね備えており、QRコードリーダーやRFIDなど、自動認識関連として需要が拡大している。
■防犯効果に優れ高伸長
非FA分野では、有料道路のETC(料金自動収受システム)や、鉄道などICカードを採り入れた自動改札システム、さらに各種防犯設備などで市場が拡大している。特に各種の赤外線を使った人体検出センサは防犯効果が高く伸長が著しい。
MEMS技術を応用したセンサでは、フローセンサ、加速度センサ、さらに非接触温度センサなどが挙げられる。フローセンサは、外乱による影響が少なくなり、より高速応答を実現している。高感度のMEMS非接触温度センサは、広い空間でも人のセンシングが可能で照明環境に強く、静止している人もセンシングする。店舗や駅構内など、人の混雑状況をリアルタイムにセンシングすることで空調制御などのほか、防犯対策へ活用できる。このほか、製造ラインやエアコンなどの機器、さらに自動車などから発生する音や振動エネルギーの異常振動を察知し、不良品の検出や予知保全に応用できる新機軸のMEMSセンサシステムもある。
最近では、PLCやコントローラに、変位センサなどがラダーレスで接続できるセンサユニットも開発されている。簡単に接続でき高速応答が可能で、しかもトータルコストが安いというメリットを生かし、新規顧客の開発につながっている。