今年7月に開放された920MHzの新しい周波数帯を利用した通信・制御製品・システムが次々と市場に登場している。機器同士をネットワークでつなぎ、電力需給のモニタリング(見える化)を行うことで機器を効率的に制御するBEMSやFEMS、HEMSの各エネルギーマネジメントシステムや、調光制御システム、RFIDなどの分野で採用されており、今後の通信システム、制御システムの高付加価値化に対応する周波数帯として注目が集まっている。
920MHz周波数帯は、既存の無線との電波干渉を起こしにくく、低消費電力でありながら長距離のデータ通信が可能という特性を持つ。ZigBeeやBluetoothが使用する2・4GHzに比べ、電波の回り込み特性に優れ、壁や障害物がある場所でも電波が障害物を回り込んで届き、無線LANからの干渉も防げることから安定的な通信を確保できる。
すでに、米国、中国、韓国、豪州で使用されているほか、欧州でも開放が検討されるなど、世界共通で使用される周波数帯となりつつあり、今後の市場拡大が見込まれている。
920MHz帯に対応した無線モジュール/ユニットは、沖電気工業、NEC、双葉電子工業などが開発・発売している。このうち、沖電気工業の無線ユニットは、920MHzの特性を生かし、通信距離を長く必要とする用途や、障害物が多い場所に最適で、動的な経路変更などにより高信頼なネットワーク構築が可能となり、管理サーバを用いることで複数ネットワークの統合管理が行える。さらに、無線ネットワークの認証・暗号化により、不正なアクセスや盗聴、機密漏えいを防止できることから、BEMSなどへの応用が図られている。
また、工場や住宅におけるエネルギーマネジメントシステムへの応用では、ロームが同帯対応の超省電力タイプ無線モジュールを開発した。業界トップクラスの低消費電力でスマートタップや家電製品に搭載でき、低消費で無線ネットワークが構築できる。低消費であることから電池駆動の機器にも使用できる。
一方、IDECは岩崎通信機と協業し、より効率的・快適にLED照明が利用できるように、920MHz帯のZ―Wave無線を利用した調光システムを開発した。
岩通の持つ無線技術と、IDECのLED照明調光システムを連携させ、工場や商業施設など広いエリアの照明をコントロールするもので、国内でZ―Wave無線を採用した初めての製品。
初期の配線工事費が約30%削減でき工事も簡単。ネットワーク端末を使用することで、どの場所からでも調光制御や設定が可能で、人感センサや照度センサと組み合わせることで人の有無や外光の明暗などきめ細かな制御が可能である。
富士通フロンテックと大日本印刷は、同周波数帯に対応したRFID書類管理用ラベルタグを開発した。1000枚の書類を約30秒で読み取ることができ書類管理業務が低減できる。通信距離は6~7メートルと長く、持ち出し管理や盗難防止などにも対応する。価格も従来製品比約50%削減した。
このように、920MHz対応の機器は、通信・制御の分野での高付加価値化に寄与しており、今後の応用技術に注目が集まっている。