製造現場では生産設備に対する「予知保全」への関心が高まっている。トラブル発生後の修復作業による生産ラインの稼働率低下を防ぐには、予知保全が必要不可欠としている。制御機器各社はこうした生産現場の要請に呼応し「生産ラインを止めない」で、改良や改善が可能な製品開発に乗り出した。PLC、センサー、2次元コードスキャナーなどが市場に投入され始めているが、予知保全を考慮に入れて制御機器を選定する傾向が強まっており、買い替え需要に期待がかかる。また制御機器流通業界にも予知保全サービスという新たな事業機会が生まれそうである。
製造現場では、生産の省力化、品質向上が大きな課題であるが、近年は稼働率にも注視するようになった。生産機械・設備のトラブル発生がラインを停止し稼働率を低下させることから、定期点検が行われるようになったが、大手製造業を中心に予知保全まで踏み込んで生産停止を未然に防止する動きが強まっている。
制御機器は半導体製造装置、工作機械、搬送機械、ロボット、食品機械、包装機械、プラスチック加工機、自動車製造設備など生産機械や設備に多数使用されているが、制御機器の性能が向上し装備率は高まる一方である。
機能も拡大し、生産現場だけでなく経営情報とも密接なつながりを持つようになった。PLCは、モーターやセンサー、アクチュエータなど駆動・制御機器を制御する機能から、イーサネットを経由し経営情報との連携にまで機能が拡大している。
このように、制御機器の性能・機能が拡大したことにより、制御機器のトラブルは生産機械や設備の停止へ波及する可能性が高まっている。
こうしたことから、制御機器各社は「生産ラインを止めない」視点から設備の改善や改良を可能とする製品を開発する姿勢を強めている。
三菱電機は、システムを停止させずにユーザープログラムの書き換えができるC言語コントローラ「Q24DHCCPU―V」やユニット交換が可能なシーケンサも用意。また、予防保全へリニューアル機器(シーケンサ、サーボモータ、インバータ、プログラマブル表示器など)を推奨している。
オムロンは、運転中でもユニット交換できるPLCを発売。また、生産を止めない、不良品を出さないための予防保全としてPLCのリプレース・リニューアルに積極的。センサーについても、「ラインを止めない」を実現することを目標に高機能デジタルファイバセンサーを開発した。
マコメ研究所は、機械を止めないで済むメンテナンスフリーの磁気センサーを発売している。
マーストーケンソリューションは、(1)現場を止める原因であるワークを止める(2)読み取りNGを出す(3)集中監視できない(4)メンテナンスが大変―の4課題を解決する2次元コードスキャナーを開発した。
制御機器各社は今後、ユーザーの生産ラインの停止による時間とコスト増加の解消を訴求する製品開発に注力し、買い替え需要を喚起する方針を強めるものと見られる。