FA(産業用)コンピュータ 高信頼/安定性で着実に成長 コントローラから情報収集端末まで幅広い用途 市場規模は350億円前後で安定 ダウンタイムの削減が課題に

工場や社会インフラ設備、さらにはビルシステムまで幅広い分野に用途が拡大しているFA(産業用)コンピュータは、信頼性が高く長期的に安定供給が可能なことから、ますます評価を高めている。市場規模も350億円前後と見られており、安定した市場を形成している。最近では広範なユーザーの要望に応えるため、各種仕様による製品開発が進み、カスタム需要への対応も進んでいる。1台のPCでGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェイス)から制御まで対応できる。さらに、リアルタイムOSで動作することで、高速画像処理も可能になっている。
FA(産業用)コンピュータは、過酷な使用環境下や24時間連続稼働にも耐えられる製品を長期的に安定して供給することが求められる。例えば、高温・多湿、油滴・水滴が舞うなどの厳しい使用環境の下、あるいはプレス機・多軸モーション制御機が近くにあるなど振動の多い用途でも高い稼働信頼性を発揮し、長時間安心して使える厳しい環境負荷試験をクリアしている。

こうした用途は社会インフラ的設備として一度設置すると長期間継続して使い続けるところが多いことから、ユーザーとしてはなるべく安定して同じ仕様で継続使用することを望んでいる。信頼性、継続性が何よりも優先して求められる。

組み立て工程に加え、紙パルプ、鉄鋼石油、石油化学、産業廃棄物処理などでのPA(プロセスオートメーション)での監視制御システムや、通信、放送、交通、上下水道、電力、さらにはビルシステム制御、ゲーム業界や業務端末といった領域でも信頼性を求めてFA(産業用)コンピュータを使用するケースが増えており、今後も市場が伸長することが確実視されている。初期コストと保守運用コストも含めた長期運用コストまで考慮すると、FA(産業用)コンピュータを採用するメリットは大きい。
機能や使いやすさ向上

最近発売のFA(産業用)コンピュータでは第3世代インテルCore
i7プロセッサを採用して処理能力が約4倍に向上した製品や、USB3・0、PCI―Express3・0などの最新の高速外部インターフェイス、高性能オンボードグラフィック機能を搭載することで、CPUの高速処理性能と併せて大量データの高速処理を可能とするなど、機能や使い易さが向上している。

FA(産業用)コンピュータは、半導体製造関連装置やFPD(フラットパネルディスプレイ)製造関連装置分野では、従来別々であった工程を一体化処理や並行処理することで、処理時間の短縮やスループットの向上が図られており、より複雑なプロセスを短時間で高速処理する必要がある。このため1つの装置に複数の制御コントローラが必要となり、複数台のFA用コンピュータを使用するケースが増えている。このような用途では、最先端のデュアルコアCPUや、メモリ2GBクラスのハイスペックな製品が求められており、インターフェイスについても増設コストを少しでも減らすため、豊富なシリアルやUSB、拡張スロットを持つことが必要とされている。

拡張スロットには、画像処理ボードやモーションコントロールボード、各種フィールドバスボード、GP/IB通信ボード、AD変換ボードなど用途別に応じたボードを使用し、またシリアルやUSBには各種ホストコントローラやUPS、計測装置などの周辺装置を接続することが多い。

このようにFA(産業用)コンピュータには様々な仕様が要求される。中でも最重視されるのは信頼性で、最近ではユーザーから、コピー防止機能の付与という要望も強くなっている。特に受託開発の分野では、技術が海外に流出することを防ぐために、ハードとソフト両面でコピー防止を行うケースが増えている。

さらに、24時間連続的に稼働する現場では「いかにダウンタイムを削減できるか」という点も大きな課題になっている。

こうした状況を背景に、最近のFA(産業用)コンピュータでは、Windowsだけでは処理できないリアルタイムな制御を求め、マイクロネット社のINtimeのようなリアルタイムOSを併用する場合が増加している。PLCでは実現できない処理の領域、例えばプロセス処理用の学術計算や高級言語によるプログラミングなどを実現するため、制御部分はリアルタイムOS上による処理、制御以外の部分は通常のWindows
OS側による処理を行うなど、1台のPCで制御から処理までを実現している。Windows
OSとリアルタイムOSを同時に走らせることは以前は非常に困難であったが、近年はコンピュータの高性能化により、簡単に実現できるようになった。
コンパクトに集約できる

このようなワンボックス化を実現することで、従来は現場にあった複数台のPCや周辺装置、およびそれらを連携する通信部分をコンパクトに集約することができる。さらに、1台のPCで操作から制御までを実現するシステムも現れ、装置の小型化とともに処理能力の向上と、保守部品・運用コストの低減など様々なメリットを生み出している。

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