最近では、自動認識の分野において、FA(産業用)コンピュータ1台で、画像処理からモーションの実行、さらにHMIまで実行可能な産業用画像処理ライブラリも発売されている。リアルタイムOSであるINtime上で動作する画像処理ライブラリで、Windowsを介入することなく、INtime上で画像処理を行うことで直ちにモーション制御が可能になる。
1万分の1秒というリアルタイム化を実現し、画像処理及びモーションの実行を一括処理。画像取り込みに合わせトリガーが取れるので、タクト時間が要求されるシビアな用途にも対応する。
さらに、顧客のニーズに応じカスタマイズや拡張が可能で、プログラムレスによる画像処理アルゴリズムが構築できる。大量のデータがリアルタイムで流せる1GbitのEthernetGigEカメラと併用することで、欠陥検出や位置決め、測長、文字検査、簡単な分類などの用途に採用されている。
■I/Oを直接制御
ワンボックス化の流れでは、特に北米や欧州市場での動きが加速しており、コンピュータから各種フィールドバスボードを経由して、I/Oを直接制御するというケースが主流になっている。
一方、日本を含むアジア市場では、計装におけるPLCの占めるウエイトが高いため、I/O周りの制御や接点の設定などはPLCで処理することが多い。日本国内では、複雑な制御を必要としない装置であれば、PLCの位置付けはそう簡単に変わらないものと見られるが、海外でのこうした流れは、ここ数年無視できない動きになっている。
こうした海外での動きを受け、国内でも超高速フィールドネットワークであるEtherCATに接続することで、高効率でより高速なマシン制御が1台のPCで可能になっている。EtherCATは、産業用ネットワークとして実績のあるEthernetをベースにしたもので、高効率で超高速通信を実現し、リアルタイムでの制御が可能となっている。
制御用コントローラがハイスペック・信頼性・拡張性を要求されるのに対し、HMI端末や生産ラインの情報収集端末として使用されるFA(産業用)コンピュータは、コンパクトな筐体、ファンレス対応、コストなどの組み込みに適した要求が多い。
例えば、端末として上位サーバからの製造指示を確認し、それに基づく作業内容をPLCや温度調節計などの各種コントローラに指示し、その結果を収集する場合などである。
こうした場合、端末で複雑なデータ処理をすることは少なく、高速のCPUスペックを要求するケースも少ない。ただ、信頼性を求められるのは必然であり、有寿命部品を減らすためのファンレス対応、Windows
XP
EmbeddedによるHDDトラブル回避、バッテリユニットによる瞬停対策などが進んでいる。
さらに、HMI端末としてPDを長年使用してきた装置メーカーが、パネルコンピュータへ移行するケースが増えている。この背景には、従来計装技術を担ってきたラダープログラム世代が少なくなり、再利用性の高いC言語などの高級言語(HLL)世代への世代交代が進んできたことがある。こうしたことで、パネルコンピュータの需要が高まってきている。
装置メーカーは、他社との差別化を図るための独自技術として、汎用アーキテクチャを選択するケースが増えている。GUI構築などについては、HMIソフトウェアなどを導入し、画面の見映えや、PDFなどのドキュメント閲覧機能、リモートモニタ機能などを構築することで、アプリケーションとしての付加価値を高めている。
しかし、すべての装置にパネルコンピュータを導入することは難しい。ローエンドレンジはPDなどを使用するケースが多く、この場合、専用のPDと汎用のパネルコンピュータとの間でHMIアプリケーション資産をどのように流用できるかが、プログラミング工数上の大きな問題となっており、HMIソフトのメーカーは、この課題に対処していかなければならない。
■タイマ関連の機能強化
FA(産業用)コンピュータの今後の動向は、WindowsなどOSの遷移や、PCIからPCI
Expressへの移行などが挙げられる。特にリアルタイムOSでは、10年にT―Kernel2・0が公開された。T―Kernel2・0は、システムコールや入出力操作用APIが64ビットに対応しており、最大8E(エクサ)バイトのストレージに対して読み込み・書き込みを行うことが可能である。
高性能化するハードウェアに対応し、マイクロ秒単位で指定可能など、タイマ関連の機能などが強化されており、機器制御の時間精度をより高めることができ注目されている。
■FA分野以外でも採用
今後は、インテルや各種ベンダーとの協業などで新しい価値を持つFA(産業用)コンピュータの開発に注目が集まるだろう。さらにFA(産業用)コンピュータは、長期間信頼して使用できるという安心感から、アミューズメント業界や業務端末など、FA分野以外でも採用するケースが増えている。高い信頼性とともに、産業用途で使用されるための様々な特別機能やスペックが搭載されており、今後も様々な分野で市場が拡大することが予想される。