経済産業省は、2012年度の経済産業政策の重点政策と概算要求を発表した。重点政策はエネルギー・環境分野の「グリーン革新的エネルギー環境社会の実現プロジェクト」の推進や、「技術で勝ち、事業でも勝つ」という骨太のイノベーション政策への取り組み、さらに日本経済の再生などを挙げている。一方、概算要求では、今年度から開始した未来開発研究プロジェクトや、グリーン・イノベーションへの新規の投資要求が目立ち、積極投資に伴う今後の開発成果に期待がかかる。
同省が発表した重点的に取り組む政策では、グリーン(エネルギー・環境)分野の「グリーン革新的エネルギー・環境社会の実現プロジェクト」、ライフ(健康)分野の「ライフ世界最高水準の医療・福祉の実現プロジェクト」という日本再生プロジェクトを中心に研究開発を推進する。
さらに、「稼げる」産業・企業群を創出するため、研究開発によるイノベーションの促進とともに、ベンチャーによる実用化支援や国際標準化の推進を強化し、「技術で勝ち、事業でも勝つ」という骨太のイノベーション政策に取り組む。
また、東日本大震災からの復興・再生や、円高による事業環境の悪化や、それに伴う国内産業の空洞化に対応するため、研究開発拠点の国内立地を支援し、日本経済の再生に向けて取り組むとしている。
一方、概算要求では、科学技術関係経費で13年度6908億円(うち要望枠1605億円)、12年度5287億円を要求。科学技術振興費は13年度1164億円(うち要望枠252億円)、さらに「未来開拓研究の推進」として221億円を要求している。
半導体や制御・電子関係では、世界最先端のエネルギーや部材・素材技術を強化する研究開発プロジェクトを推進し、グリーン・イノベーションへの新規投資や継続投資の要求が目立つ。
例を挙げると、「スマート・モビリティ・デバイス開発プロジェクト」には新規投資額として19・5億円、「革新的超低消費電力型インタラクティブ・ディスプレイ・プロジェクト」には10億円の要求がなされている。
半導体関係では、1965年に半導体の微細化技術法則「ムーアの法則」が発見されて以降、この微細化技術により産業が発展してきた。特にLSIは、微細化技術により高性能化や高密度化、低消費電力を実現した。
しかし、単なる微細化技術ではLSIの高性能化に限界があり、最近では高誘電率ゲート絶縁膜などの等価的微細化と呼ばれる技術「モア・ムーア」が浸透しつつある。さらに、このモア・ムーア技術に対し、LSIにセンサなどの新たな機能・価値を追加する「モア・ザン・ムーア」の提唱もされ始めてきた。
経済産業省では、「スマート・モビリティ・デバイス開発プロジェクト」などを中心に、モア・ザン・ムーアを追求する様々な開発プロジェクトに注力する方針。