変化し続ける製造業の環境に必要不可欠なもの、それは、市場を、顧客を、知り尽くすこと
バブル経済の崩壊。リーマンショック。この約20年間、度重なる不景気の波は、日本の製造業を容赦なく襲い、大きな打撃を与えてきている。その結果、製造業の営業環境はガラリと変わり、今もなお変化し続けている。そこで、3C(※1)のフレームワークをもとに、現状分析とこれから進むべき道について触れる。
※1 3C:「市場(customer)」「競合(competitor)」「自社(company)」
市場(customer)「つくれば売れる時代」から、「つくっても売れない時代」へ
ここ20年間で、GDP(国内総生産)における製造業の割合は27.3%から19.4%(内閣府「国民経済計算」、1990~2010年)へと減少し続けている。この数値が意味するのは、マーケットは飽和・縮小し、各社生き残りをかけた競争が今後もさらに激化していくということ。ただ良いモノをつくれば売れる時代は、完全に終焉したことである。
市場の変化に伴い、顧客の経営環境、開発生産環境も大きく変わり、ニーズも多様化。コスト削減や在庫削減、製品の汎用性など、さまざまな要素が絡み合うことで、より複雑になってきている。
法人の購買動機と等しく大切な、エンジニア個人の購買動機
つまり、良い製品をつくることだけに注力するプロダクトアウトの発想から、顧客のニーズを汲み取り、最適な製品を届けるマーケットインの発想が求められる時代が訪れたのである。そのため、営業戦略において「顧客を知ること」の重要性が増してきている。顧客企業の購買決定のキーマンが誰なのか。そのキーマンの購買動機は何か。徹底的に知り尽くす必要がある。
また、キーマンが重視しているポイントは、企業としての費用対効果だけではない。個人的な感情や好み、作業効率など様々なファクターが入り交じっている。「法人」だけでなく、「個人」としての動機まで把握できなければ、確実な購買には結びつかなくなっている。
顧客を深く知らなければいけない。しかし、知ることができない
しかし、顧客ニーズの把握においてネックになるのが、ここ数年の製造業におけるコンプライアンス・セキュリティ強化だ。外部業者が、簡単に顧客企業内部に入ることができなくなってしまっている。つくるだけでは売れない。顧客の現場ニーズを掴まなければいけない。しかし、現場に入り込む術がなく、提案の糸口を見いだすことができない。だから、売れない。そんな悪循環が、あらゆる製造業の販売戦略における最大の課題だといっても過言ではない。
競合(competitor)もはや分からない性能の差別化
市場の変化、顧客の変化が掴めない。掴めていないことすら、気づいていない。これが、ほとんどの企業の現状ではないだろうか。そのため、顧客のニーズとかけ離れた、つくり手にしか分からない性能の微差に重点を置いてしまう。当然、製品は市場から受け入れられない。ただ裏を返せば、今、他社に先んじてマーケットイン型の販売戦略を構築できれば、それだけで頭ひとつ抜けることができる。これもまた、事実である。
海外メーカーの猛威。新たな流通網の台頭
当然、競合は国内メーカーだけではない。中国や韓国のような新興国メーカーの日本マーケットへの進出も、年々脅威になっており、以前はコストパフォーマンスの良さが売りであったのが、近年では国内メーカーにも負けず劣らずの品質で、ますます競争力を高めている。また、カタログ通販やインターネット通販など、今までは存在しなかった新しい流通網を駆使し、スピードとコスト面での競争力を持つ企業も現れてきている。そんな今までなら存在しえなかった新たな競合にどう立ち向かっていくのか。今、製造業の真価が問われているのだ。
自社(company)
ここまで市場と競合の現状を分析してきたが、ここで各社は新しい取り組みに着手できているか考え直す必要がある。右肩上がりの時代は、先行者利益で大きなシェアを確保できていたが、その時代はもはや過去の話。すでに後発企業の猛追が始まっているのだ。
以下のチェックリストで、1つでも当てはまらない場合は、市場・競合の変化に対応した営業戦略・体制ができていない可能性がある。
□営業・マーケティング対象となる顧客のリストをたくさん持っている(数万件程度)
□競合が売れている顧客名、キーマン、顧客のライン、設備投資計画を把握している
□商品開発・企画にあたり、顧客のニーズがわかっている
□営業社員の誰に聞いても、会社概要や製品特徴、価格、納期の説明が一貫している
□営業・マーケティングに頼れる司令官がいる
どうやって、これからの時代に生き残る営業戦略を構築すべきか?
私たちFAナビのメソッドをお伝えしたい。
「空軍」「陸軍」「陸軍後方支援」をセットで考える
空軍による一斉告知 BtoBの製造業に、マスマーケティングは不要全国わずか30万人の主要ターゲットに、ピンポイントでアプローチ
突然だが、貴社の見込客はいま何人いるか?
この問いに明確な答えをもつエンジニアはほとんどいないのではないだろうか。答えは「30万人が上限」。全国の購買決定権を持つエンジニアのおおよその人数である。その30万人の中に貴社の製品を必要とするターゲットは、おそらくさらに少ない。数千、もしかしたら数百人程度かもしれない。
少数に限られているのであれば、そのすべてにアプローチすればいい。マスメディアを使ったプロモーションなど不要である。薄く広くのアプローチでは無駄が多すぎるためである。エンジニアのデータベースを用いれば、その30万人だけにピンポイントにリーチできる。確実かつ効率的なマーケティングが可能になってくるのだ。
1~2年に及ぶ、顧客の購買検討期間。購買決定時に確実に声がかかるようにE‐mail、電話、ダイレクトメールで絶え間なくソフトタッチし続ける。
一般消費者と違い、エンジニアの購買検討期間は非常に長いことで知られている。というのも、購買決定は設備投資やライン変更時に限られるからだ。そのタイミングはだいたい1~2年に1度あるかないか。ジャストタイミングで営業を仕掛けることはほぼ不可能である。であれば、購買決定時に確実に声がかかるように、常に情報提供を絶やさずにフォローし続ければいい。
エンジニアのデータベースに対して、E‐Mail、電話、DMで頻繁にソフトタッチし続ける。「売り込む」というより「顧客を育てる」という感覚で、レスポンスと購買決定のタイミングを待つ。PULL型のマーケティング体制を構築していくのだ。
陸軍による攻略 営業に必要な3要素。それは、「対人折衝力」「製品・業界知識力」「顧客情報力」。見落としがちな「顧客情報力」をサポート
FAナビが考える営業に必要な3つの要素がある。それは、「対人折衝力」「製品・業界知識力」「顧客情報力」だ。その中でも私たちが最重要視するのが、「顧客情報力」である。
「対人折衝力」は、個々人が持って産まれた部分が大きい。「製品・業界知識力」は、高い方がもちろん有利であるものの、受注に直結しないケースも少なくない。製品に誰よりも詳しいエンジニアが必ずしも営業力があるとは限らないのが良い例。顧客を知って知って知り尽くすこと。それが「顧客情報力」で、その力を最大限に高めるメソッドが、FAナビが提唱する「4つのリスト」である。
「4つのリスト」があれば、顧客を知り尽くすことができ、どんな優良大口顧客でも開拓することができる。
お客様の「誰が」、「いつ」、「何を検討しているのか」が手に取るようにわかるのが4つのリストの特徴である。
①「組織リスト」
取引先企業のひとつの部署だけでなく、組織全体を見渡すことで、商談数の増加を図る。営業マンは直接会っている担当者の意見が、企業全体の意見であると思い込んでしまうことが多々ある。実際には、ごく一部の部署だけの意見であることが多く、他の部署に存在している商談を逃しがちだ。まずは、ターゲット企業にどんな部署があるのかを把握することが、商談を漏らさずに拾っていく第一歩である。また、リストを作る過程で面識のある部署が自然に増えていくので、引き合いが来る可能性も高まってくる。
②「担当リスト」
購買決定のキーマンを割り出し、パーソナルな情報まで把握する。企業メリットと同時に、個人的メリットに合わせた提案を。
企業が何かの商品を購入するときには、必ずその意思決定をするキーマンが存在する。必ずしも役職者というわけではなく製品によってキーマンは異なってくる。また、キーマンが購買決定する理由は、企業としてのメリットだけではない。その製品を購入することによるキーマン自身の手間であったり、個人的な好き嫌い、エンジニアとしての意地など、いわば個人的メリットが行動原理になることが少なくない。だからこそ、職務上の担当だけでなく、専門分野、出身校、性格、趣味といった個人的な情報や、先輩・後輩、仲の良し悪し、声の大きい・小さいといった人間関係も把握しておく。そうすると営業の動きに見違えるほどの変化が出てくる。
③「案件リスト」
「あの客先には案件がない」は、全部ウソ。
「案件」と「商談」は異なることを、知っているだろうか。
よく「あの客先には案件がなかった」という声を聞くが、どんな企業でも必ず案件そのものは必ずある。現在はたまたま具体的な商談にのぼるほどの明確なニーズにはなっていないものの、その部署にエンジニアがいる以上、設備投資案件は必ずあることを忘れてはいけない。
客先でどのような動きがあるのかを把握していけば、潜在ニーズを知ることができ、将来発生する商談の見込みが立ってくる。さらに言えば、そういった内部の事情について詳しく聞けるくらいの関係性を構築することが大切である。
④「工程リスト」
売れるヒントは、貴社商品が使われる工程の前後に隠れている。業務工程の全体像を知ることで、付加価値の高い提案ができる。
一言で言えば、客先の工程全体(業務全体)をきちんと理解する、ということである。生産プロセスごとの分業化、外注化が進んだ現在、顧客自身、自分の担当工程しか知らない場合が多々ある。そのため、十分な情報が引き出せず、提案の幅を狭めてしまうことにもなってしまう。工程全体を把握しておけば、生産ライン向けの商品なら、前後の工程を理解することでトータルでのコストダウンになる提案ができる。お客様にとっての付加価値が高まり、より大きな金額が獲得できる案件になる可能性もでてくる。
陸軍の後方支援 トップ営業マンを量産化。営業ツールの作成を通じて、模範的なトーク術を、全社員で共有
営業力が強い組織とは、個々の個人スキルが高い集団のことではない。強力な営業マニュアルを徹底共有できているかどうかである。例えば、あの東京ディズニーランド。ホスピタリティの代名詞として、世界一有名なアミューズメントパークだが、約2万人の現場スタッフのうち、実に9割にあたる約1万8000人がアルバイトなのだ。それでも、世界一のおもてなしが体現できるのはなぜか。それは、優れたサービスマニュアルが存在することはもちろん、ただ単に行動を規定するだけでなく、その根本にあるマインドまで共有する、徹底した教育浸透メソッドを実践しているからだ。
FAナビの目指す営業マニュアルも、まさにディズニーランド同様のポリシーのもと制作している。営業マニュアルとして、現場での武器となるアプローチブックやQ&A集などの営業ツールを制作し、その制作を通じて、トップ営業マンのトーク術のエッセンスを抽出し、全社員で共有すべきノウハウを整理する。制作した営業ツールを活用することで、営業力の標準化を図り、営業マン全員が合格点を超える水準で説明できるようになってくる。100点を取る必要はなく、競合より1点でも高い点数が取れれば、営業の場面においては勝てるのだ。
いかがでしたか?
もっと詳しく内容を知りたい、自社に当てはめた場合どうすればよいのか話し合いたい、そんな方はぜひFAナビにお問合せいただきたい。
(筆者=株式会社FAナビ 代表取締役 天野眞也)
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