配電盤業界、地域社会、従業員すべてにおいて「存在感のある会社」にしたいと語るのは、横浜市青葉区にある水谷電機製作所の水谷恵一社長。業界では日本配電制御システム工業会常任理事を務め、地元では横浜市から「横浜型地域貢献企業」に認定され地域社会活動に積極的に取り組んでいる。
目標の実現へ着実に歩んでいる。
■現在の経営環境■
水谷社長
京浜急行の駅ビルや貸ビル、京浜百貨店などの電気設備の更新、学校など公共施設の耐震化対策による配電盤の改修・更新で忙しい。来年3月まで受注を抱えており、今年度(2013年3月期)売上高は前期比で10%増加すると予測している。
当社は受配電盤、分電盤、空調制御盤の設計・製造・改修・メンテナンスを主体にしており、どちらかと言えば内需型なので、空洞化の影響は少ない。
■都市型製造業を標榜■
水谷社長
電気設備更新事業に取り組みだしたのは20年前からである。バブルショックが転機となった。新築物件は価格競争になりがちである。大都市でのコスト競争は既製品盤や地方の配電盤メーカーが有利である。東京地区ではゼネコンの半分以上を地方メーカーが占めていると思う。そのため、新築以外の分野からの受注を考えて、配電盤製造販売のほかに、新たに電気設備の改修・更新事業を始めた。首都圏は第3次産業が第2次産業よりも多い地域である。ここで将来性を展望し事業を展開するに当たり、製造業とサービス業を兼備した都市型製造業を目指すことにした。
■地域貢献企業■
水谷社長
都市型製造業は、地域密着が欠かせない。一昨年4月に、東京・港区の本社を工場のある横浜市青葉区に移転し、管理、営業、設計、製造を集結した。
そして、本社移転後すぐに、CSRマネジメントシステムを構築し活動に取り組んでいる。CSRビジョン「配電・制御システムに関わる質の高いビジネスを通じて社会に貢献」、地域志向CSR方針「地域のステークホルダーの皆様と良い関係を築きます」を社内外に公表している。地元雇用、地元への発注、地域での社会活動が評価され、横浜市から昨年「横浜型地域貢献企業」に認定された。社員の意識も変わってきた。
■存在感のある会社づくり■
水谷社長
配電盤ビジネスは、今後も今のような状況で進み、協業化、専門化に向かうであろう。受変電から電話端子盤まで何でもつくります、というのではなく、これからはそれぞれが特徴を出しながら事業を展開するようになる。その中で、当社の存在感を高めたい。業界で、地域社会で、社員とその家族において「存在価値のある会社」になる。社員には成長してもらいたいので、日本配電制御システム工業会の配電制御システム検査技士、配電盤組立や電気工事士の資格取得を推奨している。
■技術者ながらピアノ演奏も■
〔取材後記〕水谷社長は3代目である。慶応大学工学部機械科を卒業し、29歳のときに入社。営業を経験ののち40歳で社長に就任する。CADが市場に出る前に、コンピュータとXYプロッターを連動させるソフトを開発したり、電気主任技術者の資格を取得するなど機械と電気に詳しい技術者の顔も持つ。趣味はクラシック鑑賞。自身もピアノを演奏し、工業会の総会でも披露している。水谷社長の頭の中に描かれた存在感のある会社像は、登壇が間近に迫っている気がする。