関西地区の今年度上期のFA機器市場は、昨年後半から続く世界的な経済の減速感や、2012年3月期におけるパナソニック、シャープ、ソニーという家電3社の大幅赤字など取り巻く環境が厳しい中、FA制御機器商社各社は継続テーマである「省エネ・創エネ・蓄エネ」、「節電」、「安全・安心」への取り組み、さらに地域の顧客に密着した事業を展開しており、当初の目標値には届かないものの、下期へ向けての手応えを感じている。
大阪に本社を置くパナソニック、シャープの不振は、関西のFA制御機器業界においても少なからぬ影響を及ぼしている。両社は早急の業績回復を目指しているが、シャープは13年3月期の連結最終損益が赤字幅は縮小するものの、2500億円の赤字になる見通しと発表。一方、パナソニックは4~6月期が128億円の黒字に転換し、通期でも最終黒字を見込んでおり、回復が鮮明になっている。FA業界でも、この両社の業績回復に期待する声が大きい。
FA業界が掲げる「省エネ・創エネ・蓄エネ」、「節電」をテーマにした商材では、LED照明や蓄電池などがあるが、ビルや工場全体でのエネルギー管理という観点から、建物全体の空調設備や照明などにおいて、EMS(エネルギー・マネジメント・システム)の積極提案に取り組むメーカーや商社が増えている。
また、ここ数年企業が自然災害や犯罪に遭遇するケースが増えているが、こうした緊急時における損害を最小限にとどめ、事業の継続や早期復旧を行う「BCP(事業継続計画)活動」に取り組む専門商社もあり、これまでと違った角度から「安全・安心」というテーマへの取り組みも行われている。
さらに個別の案件では画像処理システムや、通信およびネットワークに関連したアプリケーション提案などの案件が急速に拡大している。
画像処理システムでは、独自の画像処理技術を駆使し、血液データ照合システムなどの医療分野への展開を図る専門商社も現れている。
通信およびネットワークに関連するアプリケーション展開では、光通信やクラウド、遠隔制御などを含むM2Mなどの通信分野でのワンストップサービスに注力する商社もある。
M2Mは、Machine―to―Machine、またはMachine―to―Managementの略で、ネットワークにつながれた機械同士が人間を介在せずに相互に情報交換し、自動的に最適な制御を行うシステムである。情報通信ネットワークと通信技術・通信機器の発達、さらにセンサネットワーク技術や、情報処理システムの高度化により可能となるシステムで、ユビキタスコンピューティングの一つとして注目されている。
一方、関西地区では、化学メーカーを中心とする設備投資計画が増加しているほか、工場やビルなどの耐震リニューアル案件、東日本を中心に自家発電設備の新設といった案件が増えており、配電盤業界を中心に受注数量が増加している。
日本政策投資銀行の調査によると、関西地域における12年度の設備投資計画は、製造業は昨年比22・4%増で4年ぶりの増加、非製造業も18・6%増で5年ぶりに増加し、全産業では20・1%増で4年ぶりの増加となっている。
製造業は、特に化学工業が高機能性素材関連の増強投資や、研究施設の新・増設で57・2%増と大幅に増加しており、一般機械分野も新興国向け需要に応じた設備増強で21・7%増、さらに幅広い業界で自家発電などのBCM(事業継続マネジメント)対策の投資も増えている。
このように関西地域における設備投資は、素材系産業を中心とした化学工業の伸長や、BCM対策投資などで全国平均を上回る増加幅になっているが、これまで関西経済を牽引してきた電機機械は、海外勢との競争激化や、海外生産の拡大で26・9%のマイナスになっている。特にパネル用・民生用のリチウムイオン電池関連が大幅に落ち込んでおり、来期以降の設備投資は縮小が予想される。
今後の関西経済の課題と、活性化につながるポイントでは、「ポストパネルベイ」となる次の成長エンジンが必要不可欠である。各分野で国際競争力を高め、地域経済の活性化に繋がる取り組みやプロジェクトに期待する声が高まっている。