放送機器や映像・音響編集装置は産業用操作用スイッチのオンパレードである。微妙な調整や頻繁な操作に耐えられるスイッチが現場では要求されており、過酷な条件に対応できる産業用操作用スイッチが好んで使われている。産業用操作用スイッチメーカーもこの有望な市場に対し、装置メーカー技術者とエンドユーザーのニーズを汲み上げ積極的に新製品開発を行っている。日本開閉器工業、サンミューロンなど産業用操作用スイッチメーカーは「専業」の特色を生かして開発を有利に展開させる方針で放送機器市場に臨んでいる。
情報通信・放送機器市場は5兆円を超える規模である。そのうち、放送機器は1兆円をキープしており、2010年には1兆2941億円と過去5年間で最高の数字をあげている。放送装置は10年665億円である。
産業用操作用スイッチは、情報通信・放送機器や装置1台に対し採用される数量が他の産業機器よりも多い。放送局や映像・音響スタジオでは人が目と耳で情報をキャッチし、手で操作・確認する。そのため、手は千手観音のように多数のスイッチを操作することになる。操作パネルには1000個の押しボタンスイッチ、照光式押しボタンスイッチ、表示灯などがずらりと並んでいる装置もある。
操作パネルに密集したスイッチ群に対するスタジオオペレータの要求は厳しくなる一方である。
スイッチに向かう指の動きは目で追うと同時にピアノ演奏家のように長年の間に培った位置取りで行われる。そのため、表示色の色彩が大切な要素である。
操作用スイッチメーカーは鮮明な色を出し、多彩な表示色のスイッチを開発して対応している。表示はLEDやLCD、有機ELが採用されている。しかも、求められる情報量が増えつつあり、文字や絵、動画などでメッセージを表示できるスイッチも発売されている。
また、オペレータは指先の感覚を重視し、スイッチ操作時のクリック感はもとよりストローク量に敏感に反応することから、多種類の製品をそろえ最適な機種選定を容易にしている。
近年は、ますます細やかになるエンドユーザーの要求を製品に反映させるため、操作用スイッチメーカーは機器・装置メーカーと密接な連携でデザイン、形状や機能などの技術革新を進める必要性が増している。