節電・省エネ志向の社会の中で、モータの省エネ対策に最も効果的なインバータは、FA分野だけでなく社会インフラ分野へと用途の広がりを見せているが、インバータメーカーの技術革新に負うところが大きい。日本のインバータはすでに世界の最先端にあり、さらに進化を遂げつつある。
省エネが企業のトップレベルまで関心が高まるにつれ、誘導モーター(IP)や同期モーター(PM)の最大効率運転を自動的に実行し、大きな省エネ効果を実現するインバータが脚光を浴びているが、近年はユーザーからの要求もますます多様化しつつある。そのニーズは、インバータ自体の高効率化、化学物質規制や安全規格、オープンネットワークへの対応、高周波ノイズ・高調波低減、調整レス、耐環境性の向上、操作性、小型軽量化などが挙げられる。そのため、メーカーは積極的に技術開発を展開している。
デバイスレベルでは、逆阻止型IGBTをはじめ、最近は従来の半導体材料より小型、低損失、高効率なパワーデバイスとしてSiC(炭化ケイ素)ダイオード/トランジスタも登場している。また、ソフトスイッチング・鉛フリー化はもとより高熱伝導レンジ、さらには低電圧駆動による高速化も実現している。
制御技術もマトリックスコンバータ、オンラインオートチューニング、センサレス簡易位置決め制御など進歩している。
その結果、プログラミング機能付きインバータ、パスワードによる誤設定防止を可能にするセキュリティ機能付きインバータ、フィルター内蔵インバータ、正弦波入出力インバータ、オープンネットワークや安全規格対応インバータ、さらにはメンテナンスの容易化へリモートメンテナンス機能を装備したインバータなどが製品化ないし開発が進んでいる。
数例を挙げると、ファンやポンプ、コンベア、昇降機などの用途を選択するだけで自動的に最適なパラメータが設定でき、手間が省け設定ミスも防止できる。
過負荷定格を軽負荷と重負荷に分けて定格電流出力を調整し、最大適用モーター容量の拡大に対して小型なインバータが出ている。
オートチューニング機能は、調整項目の自動化、加減速時間の調整、出力電圧調整、上限周波数の調整、減速レートやモータパラメータとの補正などが自動ででき、機械や機器に未熟な作業者でもインバータを簡単に取り扱える。
セーフティ・セキュリティ対策も進んでいる。ハードワイヤベースブロックを内蔵し安全規格EN9541―1のカテゴリー3などに対応している。インバータにパスワードを設定してパラメータの読み出し書き換えを制限できる製品も発売されている。このほか(1)制御ロジックのシンク/ソースの切替可能(2)小型軽量化や保護構造の強化(3)力率改善DCリアクトルや零相リアクトルと容量性フィルターのワンユニット化(4)パソコンによるインバータのセットアップ、インバータのカスタマイズ化(5)採用部品の長寿命化とメンテナンスの容易性などインバータの進化は止まらない。
インバータメーカーは豊富な機能と高性能、海外規格取得、製品ラインアップ充実で、細分化されつつある用途向けの多様なニーズに応えつつ、引き続き世界の市場をけん引する。