工場の省エネ化はすべての機械・装置ごとにきめ細かなコントロールを行っている
一昨年の東日本大震災、昨年の中央高速道路笹子トンネル事故と象徴的な2つの大きなことが起こった。しかし、ここに日本復活につながるヒントのひとつが見える。
大震災後の電力危機とエネルギー源の見直しによって、省エネ・蓄エネ・創エネの取り組みが各方面に定着した。昨年7月からは、再生エネルギーの買い取り制度がスタートし、家庭のソーラーパネル設置に加え、メガソーラー発電も日本各地で稼働しようとしている。ソーラー発電の周辺では、パワーコンディショナーや受配電機器などをはじめ、コネクタ、計器、ケーブルなど需要が見込める。直流(DC)給電に伴うスイッチやインバータなどでの新たな需要も生まれる。また、電力活用をオートメーション化するスマートグリッド技術は、これからの制御機器市場を支える大きなファクターになる可能性を秘めている。
工場では、工場全体の計測制御から、現場の機器一つ一つの消費電力を計測制御する、きめ細かな方法が定着し始めている。制御と管理情報の効率化・省配線化から普及が進んでいるフィールドネットワークが、エネルギーの効率利用の点から活用され、機械の待機時や立ち上げ時の省エネ化にも応用できるソリューションも注目されている。
IT社会の生命線を握っているとも言われるDC(データセンター)は、危機管理対策上からのデータの分散バックアップ体制として設置が進むとともに、DCそのものの省エネ化・省スペース化・簡易設置化が進み、新たな投資を生んでいる。
ビルやマンションでは、エネルギーの効率活用に向けて、高圧受配電システム、空調・照明・ポンプなどの効率制御などが志向されており、トランスやデマンドコントローラなどに代表される機器へ市場が拡大している。
一方、建設することに主眼を置いて展開してきた日本の工場、ビル、公共施設、道路、鉄道などの社会インフラは、リニューアルした再構築が必要になっている。その目指す方向は安全が第一であるが、同時に「高効率」「ネットワーク」といった視点でも求められており、基盤技術はFAで培われたオートメーション技術であり、その拡大転用が大きなカギを握っている。
日本のものづくりの空洞化が懸念される中で、日本社会をこうした視点でとらえれば市場開拓する部分がまだまだ見えてくる。
日本の誇るべき技術は、まだまだある。水処理や鉄道制御技術は世界トップレベルを誇り、国際社会への貢献と日本の経済発展を支えている。iPS細胞の研究で昨年のノーベル医学・生理学賞を京大の山中伸弥教授が受賞して、日本に明るい話題を提供した。こうしたノーベル賞級の技術の引き出しが日本にはまだまだたくさんあるような気がする。中国、韓国などの新興国の勢いに押され、元気をなくしている日本経済であるが、もう一度、技術の棚卸をしてみる必要がある。FAの技術を横展開することが、明日の日本を勇気づける。
2013年は足元をもう一度見直し、世界に誇る日本のFA技術が先陣を切る年にしたい。