2012年を振り返りますと、欧州の政府債務不安が継続するとともに、アジアでは中国を中心に成長スピードが鈍化、さらに米国では財政緊縮策による景気減速等、世界経済は全般的に停滞の1年であったといえます。
13年は、欧米では不透明感は残るものの緩やかな回復が期待され、また中国では景気刺激策の効果が出てくると思われることから、ロボットの海外需要は再度、拡大に向かうと予想します。
さて、当会では12年10月に創立40周年を迎えて、次の10年に向けた「ロボット産業ビジョン」の策定に取り組んでいます。本産業ビジョンの骨子は、「市場を捉える」、「イノベーションを興す」、「業界構造を変える」の3つとしており、現在、ビジョンに織り込んでいく具体的施策を検討しているところです。
第一の「市場を捉える」については、現在、我が国のロボット出荷の大半が製造業向けであるほか、出荷額の7割以上が輸出となっています。
まず製造業向けについては今後、アジアを中心とした新興国市場の一層の拡大が予測されています。この新興国市場の需要を確実に捉えるためには、何よりもその市場のニーズに即した技術とコストを実現していかねばなりません。また、販売・保守等のサプライチェーンの整備、更にはそれぞれの国における人材獲得・育成、そして知財戦略も必要になります。また、こうした市場で我が国ロボットメーカーが有利に展開できるための基盤整備として、今まで以上に国際標準化戦略に業界全体として真剣に取り組んでいく必要があります。
次に潜在市場として大いに期待されるサービスロボット分野ですが、その市場創出に不可欠と思われる安全ガイドラインの整備、法的・制度的課題への対応、そして技術的課題の解決に向けて産・学・官が必要に応じて連携し、新たなビジネスモデルを作っていくことを検討していきたいと思います。
第二の「イノベーションを興す」においては、製造業の海外流出及び少子化による労働人口の減少に伴う我が国製造業の空洞化回避に向けて、ロボット業界として何ができるかが一つの大きなテーマかと考えます。そのためには単にロボット本体の性能向上に留まらず、セル生産・小ロット生産などに向けたシステム開発など、生産システムのイノベーションに、ロボットメーカーはユーザやシステムインテグレータをはじめとする様々な関係者と一緒に取り組んでいかねばなりません。
第三の「業界構造を変える」についてですが、ロボット市場の拡大、中でもサービスロボット市場の創出というテーマを考えるとき、これまでのようにロボットメーカー個別の動きではなかなか実現が難しい領域が多いことにすぐに気づきます。産・学・官の連携に加えて、想定されるユーザ業界、システムインテグレータ、ソフトウェアメーカ、機能部品メーカ、デザイナーなどとの連携の促進、更にはこうした新分野開発に対してどうすれば投資資金を呼び込めるかなど、ビジョンの中で考えていかねばならないことは多々あると思います。本ビジョンの報告書については本年度中に取りまとめの上、13年度総会で最終報告を行うこととしています。
以上に加え、当会では本年6月に「実装プロセステクノロジー展」と、2年に一度の「国際ロボット展」を11月に開催するほか、引き続き国際交流、市場調査、技術振興等の各事業を意欲的に展開する所存です。