表示関連機器の市場拡大 制御機器の情報を最大限に活用 制御セキュリティ対策も必要に

PD(プログラマブル表示器)、表示灯、表示機器などの表示関連機器市場は、各制御機器の情報を「見える化・活かせる化」し、機器の有効情報を最大限に活かすソリューション・システムとして市場を拡大させている。最近では、FA、非FAの両分野において市場が拡大しており、海外も新興国を中心に急成長している。特にPDは、各種コントローラの稼働監視やモニタリング、エネルギー使用量の表示、制御の指示などが行えるタッチパネルディスプレイとして重要な役割を果たしており、イーサネットなどのネットワークを経由し副操作盤としても機能している。最近では、民生分野でもエネルギー管理などのモニタリング機器として需要が急拡大しているほか、スマートフォンやタブレット端末上で、製造現場の表示器の画面を監視・操作できるソフトウェアも発売された。また、小型表示器は外食産業などで新しい市場を形成しており、積層表示灯は、双方向で通信が行える無線LANなど機能が高度化、PDと連動させるなどのシナジー機能もクローズアップされている。

見える化・活かせる化

PDは、FA分野において各種コントローラの稼働監視やモニタリング、エネルギー使用量の表示、さらに制御指示などを行うタッチパネルディスプレイとして急速に需要が拡大している。各制御機器と直接接続することで、各制御機器の情報を「見える化・活かせる化」し、情報を膨大に伝達することが可能で、機器の有効情報を最大限に活かすソリューション・システムとして市場を拡大させている。
ローコストな副操作盤に

自動車やFPD(フラットパネルディスプレイ)・半導体製造分野では、大型装置の作業効率化を図るため、表示器にイーサネット通信機能を搭載して大型装置のネットワークに接続することで、ローコストな副操作盤として機能している。最近では、外食産業分野で顧客のオーダー端末用としても使用されている。

表示機器の市場規模は、日本電気制御機器工業会(NECA)の出荷統計によると、2011年度で約440億円と10年度比微減となっている。12年度も横ばいから若干減少気味で推移している。リーマンショックまでは500億円を超える市場を形成していたが、その後、金額面では伸び悩んでいる。これは市場の停滞感もあるが、価格の下落の影響も大きい。10年度の出荷台数は約90万台と過去最高となっており、11年度も86万台と微減であるが高水準の台数を維持している。
自動車関連は堅調推移

PDを取り巻く市場環境は、半導体・FPD関連の製造装置は伸び悩んでいるものの、自動車関連産業は堅調に推移している。自動車は電池やモーター、コネクタなど自動車周辺での投資も活発であることから、大きな波及効果をもたらしている。

ここ数年は、省エネ・蓄エネの観点から、工場やビル、マンションや一般住宅でもエネルギー管理システムの導入が加速しており、エネルギーの使用量を「見える化」し、無駄な電力使用をカットするための表示器の需要が拡大している。特に大震災以降はエネルギー関連への投資意欲が急速に高まっており、再生電力の買い取り制度も追い風になって、メガソーラーやスマートグリッドなどの導入が加速、直接・間接的にPDの需要増に貢献している。この関連では、無線型電力監視表示器も発売されており、持ち運びでき重宝がられている。

初期のPDは、単なるスイッチや表示灯を代替する表示的機能のみであったが、最近は情報端末機能に加え、PLCや温度調節器など各種の制御機器をコントロールするところまで機能が拡大向上している。

数年前まではPLCとコミュニケーションすることがメインで、PLCの先にある各制御機器からの伝達量が少なかったが、最近では、PDと各制御機器をI/O制御で通信接続し、各制御機器と直接コミュニケーションを図ることで、各制御機器の情報をより多く「見える化、活かせる化」することに成功しており、エラー・ステータス・位置情報などの有益な情報を膨大に伝達することが可能になっている。

同時に、位置合わせや機器調整時の連続運転が、PLCを使用しなくても可能になり、トラブル時の内容把握時間の短縮や簡単な現地調整、システム全体の稼働状況の把握なども可能になってきている。
イーサネットを標準搭載

また、従来は大型や中型の表示器にイーサネット通信機能を標準搭載し、大型装置のネットワークに接続することで副操作盤として機能させ、作業の効率化が図られてきたが、最近では小型表示器にもイーサネットを標準搭載させ、主操作盤から離れた場所にある温度調節器やインバータなどの機器の近くに副操作盤として増設し、現状確認や設定変更などに要していた時間や手間が削減できるようになった。持ち運びに便利なハンディタイプのPDはロボット操作向けなどを中心に普及している。

ここにきて、スマートフォンやタブレット端末を有効活用するため、これらに対応した生産現場の遠隔監視ソフトウェアが発売された。Android
OSやiOSを搭載したスマートフォンやタブレット上で、製造現場の表示器画面を監視・操作できるソフトウェアである。
遠隔地からエラー内容確認

工場内の無線LAN経由で表示器と通信が可能になり、複数の作業者が必要な大型設備などにおいてより少ない人員で作業でき、生産現場での異常発生時に、事前に遠隔地からでもエラー内容を確認できる。また、複数の装置の状態を手元のスマートフォンやタブレットで表示を切り替えて確認できるなど、作業の効率化が図れる。

さらに、指紋でセキュリティ認証が行える指紋認証ユニットや、タッチパネル操作に加えてハードスイッチやランプを追加したいときに使用できるイルミネーションスイッチなども登場している。これらはUSBケーブルで表示器に簡単に接続できるほか、φ22ミリの丸穴取り付けに対応しており、スイッチやランプの代わりに取り付けることができる。
防爆タイプの開発進む

PDの用途が広がる中で爆発の危険性が高い場所で使える防爆タイプの開発も進展している。石油・化学・薬品などのプラント現場でも従来の非防爆用に作成した画面データを使用できることから、作画工数の削減はもちろん、環境特性も高いことから使い勝手も良いのが特徴。

表示素子、表示方法も高機能化し、5インチクラスの小型機種でも6万5536色の色鮮やかな表示が可能で、高精細データや写真・動画など鮮明で見やすい画面表示を実現している。ビデオ画像表示もでき、監視カメラなどによるラインの状況を映すことも可能である。

一方、作画ソフトもバージョンアップして、ユーザーインターフェイスの向上が図られている。作画時間が短縮できる検索機能や、データコンバート機能を充実させたタイプが好評だ。

このところ工場などの生産設備を制御するシステムにもコンピューターウィルスへの感染が懸念されている。今までは生産設備はインターネットなど外部ネットワークとはほとんど接続されていなかったが、最近は制御システムのオープン化が進んでいることもあり、制御システムが外部ネットワークと接続される機会が増えている。また、USBなどを使って保守点検やプログラムのコピーなども頻繁に行われて、コンピューターウィルスへの感染がしやすい環境が生まれやすくなっている。

PDは、PLCなどと同様、外部ネットワークと接続されることも多いことから、こうしたコンピューターウィルスへの感染や、外部からのサイバー攻撃の対象にもなりやすく、使用にあたっては十分な対策と慎重な運用が求められてきている。

NECAでは、PDをこうした危険から守るために昨年12月、「プログラマブル表示器を含む制御システムセキュリティ運用ガイドライン」をまとめた。ガイドラインではPDを中心に扱うシステムの管理、運用・保守、オペレータを担当する現場のユーザを対象に、構築・運用の注意事項を明記している。

PDは不特定多数の人が、限られたスペースで多様な情報や設備・装置の操作が行えるため、ビル監視や車両監視、券売機、駐車場、公共設備、アミューズメント設備・機器、さらに農業分野でも使用されており、アプリケーションが年々拡大している。

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