将来見据えた変革求められる 地域・商材の棲み分け模索

FA・制御機器の流通は、円高基調が継続したこともあって、ものづくりの工場が中国を中心に海外シフトを強めて、国内市場の空洞化を招いている。ハイテク品として国内の設備投資を牽引していたFPD(フラットパネルディスプレイ)も失速し、半導体・液晶製造装置の生産も2年連続で減少している。期待のソーラーパネルも乱売となっており、パワーコンディショナーだけが好調を維持し気を吐いている。辛うじて自動車だけが生産を拡大しながら、充電設備や電池といった周辺産業にも好影響を与えている。

国内のFA・制御機器商社は東日本大震災以降のエネルギー政策の見直しで、ターゲット市場をエネルギー関連に大きくシフトしている。省エネ・蓄エネ・創エネの推進へ日本全体が取り組むなかで、FA・制御機器の果たす新たな役割が見出され、今後の有望市場に育つ可能性が高まったことは大きい。工場の設備の省エネ化に向けた投資に加え、工場全体、さらにはビルや店舗、公共施設まで拡大を見せている。生産の海外シフトで国内の生産設備投資の先細りが懸念されているなかで、こうした省エネに絡んだ投資の増大は市場への大きなインパクトになっている。

また、社会インフラ全体の老朽化進展からリニューアル需要の拡大を期待する動きも強い。道路・橋・鉄道・下水道などのリニューアルは、土木中心に見られる面があるものの、最新の制御機器、省エネ関連機器が採用される可能性も高い。

こうした市場の変化は流通構造の変革にもつながる。FA・制御機器や電子部品中心の商材から、電材や計測機器、機械工具、科学機器なども商材に加わり、商社間の商材連携に発展する可能性も出てくる。FA・制御機器の流通は、市場の成熟化と構造の変化に対応するための再編が激しくなってきており、経営規模の拡大や地域・商材での棲み分けを模索している。大手のFA・制御機器メーカーを中心に、経営資源を今後の市場拡大が見込める海外市場に重点配分する傾向を強める中で、国内の流通商社の果たす役割はむしろ高まっている。

一方、顧客の海外シフトに対応して海外に拠点を設置する商社も増えている。日系ユーザーにとって日本の商社が現地でもサポートしてくれる安心感は心強いものの、商社にとっては日系以外のローカルユーザーにまで販売領域を拡大しないと利益の確保は難しいのが実情。ローカルの商社との代理店権の問題もあることから、商社の中には、制御盤の組み立てや、ローカルメーカーの商材調達などで付加価値を高める取り組みを行うところもある。

今後、アジア市場は日本市場の一部という考え方が定着してくる可能性が高く、商材、地域のボーダーレス化がますます進むことが予想される。

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