■半導体の設備投資先送り
FAセンサは、ものづくり以外の非FA用途での拡大もあり、市場規模は堅調さを維持している。NECAの検出用スイッチ出荷統計では、10年度1137億円(同38・1%増)、11年度1062億円(同6・9%減)、12年度は第3四半期までで770億円(同3・1%減)となっている。12年度は自動車関連や3品分野は堅調であるが、半導体・液晶製造装置や電子機器実装装置などの落ち込み、中国の設備投資の低迷などが影響している。FAセンサの需要の大きい半導体製造装置は、半導体需要の低迷などもあり、特に昨年から今年にかけ成長が期待されていたNAND(否定論理積)型フラッシュメモリ需要の伸び悩みにより、設備投資が先送りされている。
日本半導体製造装置協会は、今年1月に発表した需要予測で、12年度の日本製同装置の販売高を、昨年7月に発表した需要予測0・3%増から、18・3ポイント下方修正し、18・0%減の1兆364億円と予測している。投資の先送りは、13年度前半まで続き、同年後半からようやく成長局面に転じるものの、13年度も昨年7月発表予測の10・0%増から9ポイント下方修正し、1・0%増の1兆468億円に留まると予測している。しかし14年度については、13年度後半からの成長を継続し、20・0%増の1兆2561億円と予測、11年度レベルまで回復するとしている。
一方、IMF(国際通貨基金)が昨年10月発表した半導体産業の予測では、先進国の経済低迷に加え、力強かった主要新興国の成長も減速したことで、世界経済成長率は12年が3・3%増、13年が3・6%増としており、前回発表からそれぞれ0・2%、0・3%の下方修正となっている。
電子機器市場は、スマートフォンやタブレットPCなどが高伸長を維持するが、従来市場を牽引してきたデジタルカメラや薄型テレビなどに減速感がみられる。
日本ロボット工業会による12年のマニュピュレータ/ロボットの会員ベースでの出荷額は4290億円(同10・9%減)となっており、会員を含めた出荷額も10%減の約5400億円となっている。自動車産業向けの国内出荷額は同33・4%増の435億円と好調であったが、電子・電気機械産業向けの国内出荷額が同21・2%減の445億円と大きく減少。電子部品実装ロボットの輸出も同22・6%減の1292億円とマイナスとなり、溶接用ロボットも同8・3%減。
FAセンサの安定した期待市場となっている食品・医薬品・化粧品の3品業界は、製造ラインにおける各種の検査・識別などの用途を中心にして、引き続き拡大基調を維持している。
■世界市場は年率14%伸長
電子情報技術産業協会(JEITA)は、FAを含めたセンサ市場の世界動向をまとめている。これによると、11年の世界のセンサ市場規模は1兆8290億円で、今後年率14%で伸長し、10年後の20年には5兆8661億円と3・2倍に拡大する見通しになっている。20年のセンサの種類別割合は、光電センサが27%、惰性力センサが22%、圧力センサが20%、磁界センサが15%、温度センサが3%などとなっている。社会インフラや産業のスマート化でセンサの用途が拡大するが、特に産業・社会インフラでのセンサを使ったITシステムが大きな付加価値を生み出すため、巨大市場の形成につながることが期待されている。
■光電センサが高い実績
FAセンサの中で、最も市場が大きい光電センサは、LEDや半導体レーザを光源にした非接触センサで、検出方式は透過型、回帰反射型、拡散反射型などがある。長距離検出には透過型が最適。回帰反射型は、透過型で必要だった投光部と受光部の配線が不要で、配線工数や設置工数を半減できるメリットがある。
超小型ヘッドで取り付けスペースが小さいアンプ分離型、DC電源で使え応答速度が速いアンプ内蔵型、AC電源で使え取り扱いが容易な電源内蔵型、取り付け場所を選ばず微小物体も検出できる光ファイバー式などがある。FA分野では、隙間などにも取り付けられ、光ファイバー部を交換するだけで様々な用途に対応できる光ファイバー式のアンプ分離型の需要が多い。
半導体や液晶製造装置では、微小物体検出用として、高精度、ローコスト、取り扱いやすいなどの理由から光電センサの使用個数が増加、大きな市場を形成している。小型化と長距離検出、高い保護特性などが著しく、検出距離50メートル、保護特性IP69Kなどの製品も伸長。
■専用センサの需要高まる
食品機械などの光沢検出、包装機械などでのマーク検出といった分野では、カメラ、照明、カラーモニターを一体化したローエンドセンサの需要が伸びている。同センサは、色面積や印字有無判別、シール有無判別、シール異種混入判別、文字認識などが容易に行える。3品業界では、このようにユーザーのニーズに合わせた用途限定センサや提案解決型センサなど専用センサの需要が高まっており、余分な機能を省くことでローコスト化が図られている。
最近の光電センサは、オートチューニング機能など使いやすさを追求した機能が一般化している。また、多点制御や差動検出など入光量をアナログ的に制御できるアナログ出力の光ファイバ式光電スイッチなどもある。また、デュアル感度補正機能は、ファイバー先端が汚れによる光量低減が生じても自動的に感度を補正するだけでなく、先端部の清掃を行った後も自動で元の感度に復帰するもので、再ティーチングの必要がないという特徴を持つ。
一方、近接センサは、耐環境性が良く、高温・多湿、防爆雰囲気、水中など、他のセンサにはない独自の特徴から、工作機械、ロボット向けなどを中心に光電センサとは異なった市場・用途を形成している。振動や衝撃による緩みを防止できるタイプや、6ミリ角の超小型タイプも製品化されている。オールメタルタイプも増え、金属体、非金属体の混流ラインでも使用できる。
検出距離は、数ミリから数10ミリが一般的だが、300ミリぐらいまで対応が可能になっており、リニア近接タイプでは検出距離を0、50、100ミリと調節できる。近接センサの磁気検出方式を応用したものでは傾斜センサがあり、磁気式のほか光式、メカニカル式などがある。
変位センサは、対象物の高さや幅・厚みを測定する。白色同軸共焦点測定方式により、高精度を維持しながら、従来の三角測距方式の変位センサでは実現できなかったセンサヘッドの超小型・軽量化を実現している。対象物の素材や色に影響されない安定した測定を可能としており、ノイズに強い構造で装置への組み込みに適している。
■安全対策用の市場拡大
安全対策用センサは、世界的な安全意識の高まりを背景に市場が拡大している。エリアセンサやマットスイッチ、ライトカーテンなど、接触式、非接触式など多様なセンサが用途に応じ使い分けされている。エリアセンサは、レーザなどを使用して危険領域を限定している。最近は無人搬送車の衝突防止用に搭載する用途が増えている。防護距離、防護エリアを自在に設定できることから、安全を確保しながら、走行の自由度を確保している。ライトカーテンは、設計や取り付け・調整にかかる工数を大幅に削減し、複雑なアプリケーションにも対応が可能で、防犯用途でも使用されている。外部ハウジングにテープスイッチを内蔵したセーフティエッジセンサは、エレベーター、車両、住宅ドア、高速シャッタードアといった自動ドアや、各種機械類の挟み防止、医療機器などの非常停止、無人車両などの衝突感知センサとして採用が増えている。
ロータリーエンコーダーは、回転角変位をデジタル量に変換するセンサ。工作機械、加工機械、ロボット、半導体製造装置、各種検査装置などを中心に、自動車関連、電気・電子、機械・精密の生産ライン向けへ導入されており、車載関連や建設機械、防爆関連、介護用ロボットなど新規の需要も拡大している。
圧力センサは、小型・軽量化、使い勝手の良さとともに、耐環境性や温度特性の向上などが図られている。ミストを含んだ空気、水、油など、流体や環境を選ばないハイエンド圧力センサなども普及しており、半導体抵抗素子や静電容量素子を用いた電子式圧力センサの需要が拡大している。
レベルセンサは、液面や粉体面のレベルが設定レベルになった時に信号を出力するセンサ。一般的にタンクや容器内の内容物のレベルを検出する用途が多いが、河川や湖沼の水位・水量測定、下水や排水の液面測定などにも利用される。最近では、災害防止の観点から設備を強化する取り組みが行われており、レベルセンサが重要な働きをしている。さらに、自動車などのオイル系統の管理に採用されているほか、外食産業用にも採用され、新規市場への浸透が進んでいる。レベルセンサに温度センサを内蔵し一体化することで、スペースの削減とトータルコストの低減も図られている。
流量センサは、高温液体を使用する金型温調器の流量管理や、冷却水を使用するダイカスト金型、焼き入れ装置のコイル冷却水の流量管理、ビンの洗浄に使用される精製水の供給管理、純水や薬液を使用するウエハー洗浄液、基板洗浄液の供給管理などの分野で活躍している。
■各社独自のアルゴリズム
FA用途をはじめ、物流、店舗、公共施設など幅広い用途で使用されているのがバーコードシステムである。バーコードを読み取るスキャナには、レーザやLEDなどを光源としたものと、カメラ技術を利用したものがあり、用途に応じて使い分けがされている。FA用途では定置式タイプの使用が多いが、正確に安定した読み取りが求められることから、各社独自のアルゴリズムを開発して、バーコードラベルの汚れや歪み、傷などに対しての対応が可能な製品開発を行っている。同時に生産性の向上へ高速な読み取り速度も求めるなど、FA用バーコードスキャナの機能は年々高まっている。
ロボット向けのFAセンサとして、ロボットアームなどを中心に動き続ける運動体の角度や角速度が容易に検出できるジャイロセンサ内蔵のスイングセンサなどもある。超音波センサでは、薄物から厚手シートまで検出可能とすることで、シートやアルミカップの2枚重なりの検出用途などでも採用されている。光学センサでは難しい透明フィルムのエッジ位置の検出も可能にしている。
LEDの色のばらつきや明暗を同時に測定するパッシブ式色調センサも特殊なセンサとして使用されている。色比率判別出力と明るさ判別出力の2出力により、LED光のムラを検査できる。
■ETCやICカードにも
非FA分野では、有料道路のETC、鉄道などICカードを採り入れた自動改札システム、各種防犯設備などで市場も拡大している。
MEMS技術を応用したセンサでは、フローセンサ、加速度センサ、さらに非接触温度センサなどが挙げられる。フローセンサは、外乱による影響が少なくなり、より高速応答を実現している。高感度のMEMS非接触温度センサは、広い空間でも人のセンシングが可能で照明環境に強く、静止している人もセンシングする。店舗や駅構内など、人の混雑状況をリアルタイムにセンシングすることで空調制御などのほか、防犯対策へ活用できる。このほか、製造ラインやエアコンなどの機器、さらに自動車などから発生する音や振動エネルギーの異常振動を察知し、不良品の検出や予知保全に応用できる新機軸のMEMSセンサシステムもある。
今後も半導体技術の進展に伴いより使いやすく、高精度なセンサが開発されることで、センサのアプリケーションも拡大するものと思われる。