欧州化学物質規制(REACH規制)が強化される中、アーティクルマネジメント推進協議会(JAMP)が提案する情報伝達様式の普及率が3割に達し、インターネット情報流通基盤(JAMP―IT)利用会社も191社と増え続けている。FA制御業界でも三菱電機、東芝、オムロン、IDEC、横河電機などのメーカーや高木商会など商社も利用に乗り出した。中小企業に対しJAMP―IT利用の無料化を始めており、速度は一気に加速されそうだ。
欧州発の製品含有化学物質の規制は強まる一方である。欧州RoHS指令の6物質が、今年1月3日からはCEマーキングへの対応も必要になった。欧州REACH規制は年々対象物質が増加しており、現在138物質に広がっている。1年に2回更新され、今後1500物質まで拡大するものと予測されている。
EUではREACH規則違反に対し、イギリス、ドイツ、フランス、アイルランドが罰則を設け、今年2月にはフランスで中国製の接着剤でリコール回収の命令が出された。
日本企業も対策に乗り出しているが、含有化学物質の情報伝達様式が統一されていないため、川上から川中、川下産業への情報伝達費用や労力の負担が大きかった。そのため、JAMPでは情報伝達管理様式を開発し産業界への普及に取り組んでいる。
JAMPの普及率は3割に達した。その他は、自動車業界GADSLと電機・電子業界JIG―101(IEC62474移行)が2割。その他の5割は様式がバラバラ。様式の統一へJAMPは「8割に到達させたい。普及へ共通シートの無料提供をしている」(清國吉彦産業管理協会JAMP情報センター所長)。
JAMPはまた、情報流通基盤JAMP―ITを構築、入手提供の一元化、更新情報の自動授受で効率化を推進。
現在、JAMP会員は400社、JAMP―IT会員は191社であるが、オンラインで情報の入出ができ、情報管理対象物質もREACH規制対象にとどまらずグリーン調達EUや日本製造禁止、業界対応まで包含しているため、会員は増加の一途をたどっている。
FA制御業界ではJAMPが提供する仕組みを採用する企業が増えている。三菱電機、東芝などはJAMP―ITを利用しグループ企業に提供。オムロンは一昨年11月から、REACH対応の新ITシステムへ統合し、運用を開始。国内外の工場で新システムの運用定着を図っている。IDECなども同様に推進している。
流通業界でも関心が高く、高木商会はJAMP様式の利用を仕入れ先や顧客に積極的に提案。「JAMP様式の使用、JAMP―IT利用を提案しているが、企業トップが明確なコスト意識を持てば普及する。以前は問い合わせから回答まで3カ月かかったが、オンラインで即座にできるようになる。コスト削減効果と信用増大につながる」(高木商会中村圭一執行役員、同梅島勝也業務部主事)と効能を強調する。
JAMPでは、中小企業のJAMP―IT利用促進へ無料開放を始めた。昨年、会員と取引のある中小企業(SME)を対象に実施したが、今年4月からはSMEとの取引のある中小企業にも無料化する。来年4月以降は全ての中小企業へ対象を広げる。
こうした政策により、FA制御業界でもJAMP―IT利用が増えるものと予測される。