20年ほど前、オーストラリアで個室、共有のキッチンと居間という間取りのシェアハウスに宿泊し、自由と規律のなかで生活する仲間に加わった。炊事当番の自国料理を食べながら会話を楽しみ、自分の部屋に戻る。いろいろな国の人と知り合い、日本を外から眺めることもできた。
先日、有料駐車場の傍を歩いていたとき、カーシェアリングの看板が目に入った。車も共有する時代なのだと感心したが、調べてみると、ワークシェアリング、オフィスシェアリングなどいろいろあるのに気付かされた。昔の回し読みを、未知の地域、読者へ広げたブックシェアリングというものもある。
迷走する日本で問題になっているのが開廃業率である。小売業では80年代に廃業率が開業率を上回り、製造業は90年前後、卸売業が90年代半ば、サービス業も90年代後半に逆転した。この現象が今日まで続いている。製造業を含む非1次産業の99%余が中小企業で占める日本では、廃業率の高さは経済成長を妨げる。
要因のひとつは、産業の成熟化である。シェア競争一辺倒では開業の芽を摘んでしまう。衣食住が熟した時代では、新産業を開発し育成するのが困難である。が、挑む価値はある。「知財」の囲い込みではなく、異業種・同業種間のシェアリングに新市場を見つけるヒントがありそうな気がする。行動力のある中小企業の出番である。