農業資材や医療機器、太陽光発電分野の展示会を取材して、最初に驚くのは来場者の数の多さである。通路は肩が触れ合うほど混雑し、訪問したブースでは説明員が応対に汗だくで取材できる状況にない。やっとつかまえても話が途切れて、肝心の聞きたい内容を引き出せずに、その場を離れる。
農業、医療、再生可能エネルギー分野は、成長産業の担い手として官民挙げて取り組み出したばかり。どのような装置や器具が使われているか、新製品の傾向を掌握するうえで展示会は貴重な情報収集の場である。マーケティング担当者や開発技術者は、自社のコア技術を使って新規市場に参入する構想を持って、進入口がどこにあるのか探っている。
もっとも十数年の間、一度も展示会に出かけない会社もある。その会社に昨年就任した社長は、自分で考え行動する人がいないと判断し、展示会場を利用した。一緒に見て回り、感想を出し合っているうちに、少しずつだが、意識に変化が生まれている。客先訪問回数を増やし面白い話を持ち帰る社員が出てきたという。いろんな活用の仕方があるものだ。
展示会は年中行事化しているが、やはり春が多い。今年は景気の先行きに期待を持たせる空気が醸し出されているので、出展企業も来場者も足取り軽く向き合える。会話が弾むほど、新製品開発のヒントにつながる情報が得られる。加えて、市場に詳しい専門紙情報を参考にすることもお忘れなく。