産業(FA)用コンピュータ・コントローラ 幅広い分野に用途広がる 高信頼性が市場ニーズ掴む 国内市場掘り起こし、海外市場開拓がカギ 処理速度の高速化サポート体制充実使い易さ年々向上 1台のPCで操作から制御まで

産業(FA)用コンピュータ・コントローラは、工場などの生産現場から社会インフラシステム、ビルシステムなど幅広い分野に用途が広がっている。長期間安定して稼働する高い信頼性が、市場のニーズに合致しているためだ。日本の工場が海外生産シフトを強める中で、産業(FA)用コンピュータ・コントローラを組み込んだ設備として、また単体でも海外での需要が拡大している。処理速度の高速化やサポート体制の充実などで使いやすさが年々向上しており、市場規模はさらに拡大が見込まれる。
温度や粉塵対策がほとんど取られていない製造現場でも、長期間にわたって安定的に稼働する産業(FA)用コンピュータ・コントローラは、その信頼性の高さから工場以外の分野でも用途を拡大している。
◆吸排熱設計がポイント

産業(FA)用コンピュータ・コントローラは、半導体製造設備や石油・化学プラントなどのプロセス制御システムなど24時間連続稼働する用途をはじめ、上下水道、病院、鉄道、通信・放送設備などの社会インフラ設備、さらにはビルや店舗制御システム、道路管理システム、物流システム、アミューズメントシステムといった工場以外の所でも導入するケースが増加している。そのほとんどの用途が長期間稼働を停止することができないところで利用されており、汎用パソコンとの大きな違いになっている。

高温多湿や粉塵が多い場所など、過酷な環境下での使用に耐えられるように、防塵・防湿対策だけでなく、温度対策も重要になる。特に産業(FA)用コンピュータ・コントローラに内蔵されている電子部品は温度によって寿命が左右されることから、長期間の使用を前提とした用途を考慮すると、吸排熱を重視した設計が大きなポイントとなる。同時に、メンテナンスする時にハードディスク、冷却ファン、リチウム電池などの交換を容易に行えるような設計、例えば産業(FA)用コンピュータ・コントローラが機器などに組み込まれて使用されていても、本体を全部取り出さなくても前面から交換できるといった構造も重要なポイントのひとつだ。
◆スループットの向上図る

機能面においては、産業(FA)用コンピュータ・コントローラを効果的に使用することで、従来別々であった工程を一体化処理や並行処理することが可能となり、処理時間の短縮やスループットの向上が図られている。例えば、半導体製造関連装置やFPD製造関連装置分野においては、より複雑なプロセスを短時間で高速処理することが求められており、1つの装置に複数の制御コントローラとFA用コンピュータが使用されているケースが多い。

このような場合、最先端のCPUや、メモリー2GBクラス以上のハイスペックな製品が要求される。インターフェイスについても増設コストを少しでも減らすため、豊富なシリアルやUSB、拡張スロットを持つことが要求されている。

拡張スロットは、画像処理ボードやモーションコントロールボード、各種フィールドバスボード、GP/IB通信ボード、AD変換ボードなど、用途別に応じたボードを使用する。シリアルやUSBには、各種ホストコントローラやUPS、計測装置などの周辺装置を接続することが多い。

最近発売の産業(FA)用コンピュータ・コントローラは、第3世代インテルCore
I7プロセッサの採用で処理能力が4倍に向上した製品や、USB3・0、PCI―Express3・0などの最新高速外部インターフェイス、高速オンボードグラフィック機能の搭載で、CPUの高速処理性能と併せて大量のデータの高速処理を可能にするなど、機能と使いやすさが一段と向上している。
◆いかにダウンタイム削減

産業(FA)用コンピュータ・コントローラには様々な仕様が要求されるが、中でも最重視されるのが信頼性であり、最近ではコピー防止機能の付与という要望が強くなっている。特に受託開発の分野では、技術が海外に流出することを防ぐために、ハードとソフト両面でコピー防止を行うケースが増えている。

さらに、24時間連続的に稼働する厳しい現場では「いかにダウンタイムを削減できるか」という点も大きな開発テーマになっている。

最近の産業(FA)用コンピュータ・コントローラのOSはWindowsが多いが、Linuxやリアルタイム制御をしたOSも使用されている。この背景には、PLC(プログラマブルコントローラ)では対応できない処理領域、例えばプロセス処理用の学術計算や高級言語によるプログラミングなどを実現するため、制御部分はリアルタイムOS上による処理、制御以外の部分は通常のWindows
OS側による処理を行うなど、1台のPCで制御から処理までを行っている。以前はWindows
OSとリアルタイムOSを同時に走らせるということは非常に困難であったが、近年はコンピュータの高性能化により、簡単に実現できるようになった。

このようなワンボックス化を実現することで、従来は現場にあった複数台のPCや周辺装置、及びそれらを連携する通信部分を、コンパクトに集約することが可能になった。最近では、1台のPCで操作から制御までを実現するシステムも現れ、高効率でより高速のマシン制御が可能になっている。こうしたシステムは、GUIから制御まで対応でき、装置の小型化や処理能力の向上、保守部品・運用コストの低減など、様々なメリットを生み出している。

顧客のニーズに応じた拡張やカスタマイズも進んでおり、プログラムレスによる画像処理アルゴリズムが構築できる。大量のデータがリアルタイムで流せる1GビットのEthernetGigEカメラと併用することで、欠陥検出や位置決め、測長、文字検査、簡単な分類などの用途に採用されている。
◆ワンボックス化が加速

北米や欧州市場では、こうしたワンボックス化の動きが加速しており、コンピュータから各種フィールドバスボードを経由し、I/Oを直接制御するというケースが主流になっている。

一方、日本を含むアジア市場では、計装におけるPLCの占める割合が高く、I/O周りの制御や接点の設定などはPLCで処理することが多い。日本国内では、複雑な制御を必要としない装置であれば、PLCの位置付けはそう簡単に変わらないものと見られるが、こうした海外での動きを受け、国内でも超高速フィールドネットワークであるEtherCATなどに接続することで、高効率でより高速なマシン制御が可能になっている。EtherCATは、産業用ネットワークとして実績のあるEthernetをベースにしたもので、高効率で超高速通信を実現し、リアルタイムでの制御が可能という特徴を持つ。

一方、産業(FA)用コンピュータ・コントローラが、HMI端末や生産ラインの情報収集端末として使用される用途では、コンパクトな筐体、ファンレス対応、低コスト化など、組み込みに適した仕様が進んでいる。上位サーバからの製造指示を確認し、それに基づく作業内容をPLCや温度調節計などの各種コントローラに指示し、その結果を収集する場合などが当てはまる。こうした場合、端末で複雑なデータ処理をすることは少なく、高速のCPUスペックを要求するケースも少ない。
◆パネルコンピュータへ移行

さらに、信頼性向上への要求は強く、寿命部品を減らすためのファンレス対応や、Windows
XP
EmbeddedによるHDDトラブル回避、バッテリユニットによる瞬停対策などが進んでいる。

最近では、HMI端末としてプログラマブル表示器(PD)を長年使用してきた装置メーカーが、パネルコンピュータへ移行するケースが増えている。

この背景には、従来計装技術を担ってきたラダープログラム世代が少なくなり、再利用性の高いC言語などの高級言語(HLL)への世代交代が進んできたことがある。こうしたことで、パネルコンピュータの需要が高まってきている。

装置メーカーは、他社との差別化を図るための独自技術として、汎用アーキテクチャを選択するケースが増えている。GUI構築などについては、HMIソフトウェアなどを導入し、画面の見栄えや、PDFなどのドキュメント閲覧機能、リモートモニタ機能などを構築することで、アプリケーションとしての付加価値を高めている。

しかし、ローエンドレンジでは、パネルコンピュータよりPDなどを使用するケースが多く、専用のPDと汎用のパネルコンピュータとの間でHMIアプリケーション資産をどのように流用できるかが、プログラミング工数上の課題となっている。

今後、産業(FA)用コンピュータ・コントローラは国内市場の掘り起こしと海外市場の開拓が飛躍の大きなポイントになる。国内では汎用パソコンの領域を、稼働の信頼性、長期間の安定供給サポートをポイントにして開拓を進めることで、汎用パソコンとの差異化を図り、付加価値を高めた販売につながる。
◆サポート体制が重要に

海外は、海外メーカーや地場のローカルメーカーとの競合になるため、価格に加え、サポート体制が重要になってくる。今後の市場展開を考えるうえでも、こうした先行投資を行いながら、長期的な視野で市場開拓を進め、産業(FA)用コンピュータ・コントローラへの信頼性と使いやすさの定着が必要になってくる。

市場開拓とニーズに合った製品開発の両輪を並行した取り組みが産業(FA)用コンピュータ・コントローラの大きな課題であるが、今後もコンピュータシステムがあらゆるインフラの基礎を支えるのは確実であり、堅調な市場拡大が見込まれる。

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