◆端子台のIEC規格◆
世界経済のグローバル化、ボーダーレス化が進む中、ISOやIECなどの国際規格の重要性が増大しつつある。日本工業規格であるJIS規格は、1980年以降このような国際規格との整合化を推進してきた。日本工業調査会(JISC)によると約8,000のJIS規格のうち、国際規格と整合していない規格を対象に、1995年度から3カ年計画で整合化作業を実施している。
端子台の規格としては、一般に1982年に工業用端子台として制定されたJISC2811が知られているが、この規格が近年改訂された。
◆端子台の旧JIS規格と新JIS規格◆
JISC2811は、端子台の国際規格であるIEC60947―7―1と整合を図るために、2010年5月に「JISC8201―7―1低圧開閉装置及び制御装置
第7部:補助装置
第1節:銅導体用端子台」として新たに制定された。これにより、日本の端子台規格は国際的にも整合したが、新規格はIECに対してMOD(修正)として制定されており、電線の呼びがIECとJISでは違いがあることから、JISに基づいた導体断面積および導体径を記載している。同時に、国内産業界で通用しているAWGとの関係も記述している。
新規格は、基本的にIEC規格に整合しているが、旧JIS規格とは規格の適用範囲、試験内容、材料規定などに違いがある。試験内容では、旧JISでは規定のなかった「熱的特性の検証」が追加され、「ニードルフレーム試験」が規定されたことが特徴的である。
これは、地震などの災害や大規模事故などによって、建造物や鉄道、船舶、航空機などの輸送機関で火災が発生した場合、端子台が火炎源になり、人体の安全を脅かすことのないようにというIECの安全への考え方から来ている。端子台の規格ではないが、IEC60529による感電防止いわゆる「フィンガーセーフ」などと同様に、工業製品を機能だけでなく、人間が使用することを前提にした、人体の安全確保という欧州の規格思想が反映している。
この新しいJIS端子台規格を受けて、2012年7月には、さらに「JISC8201―7―2低圧開閉装置及び制御装置
第7―2部:補助装置―銅導体用保護導体端子台」が制定された。この規格もIEC60947―7―2に整合する形で制定された、いわゆる「アース端子台」の規格である。
◆アース端子台規格◆
国内では、アースを直接DINレールなどに落とすことは一般的ではないが、この規格ではヨーロッパでは一般的な「保護導体(PE導体及びPEN導体)を、一つ以上のネジ式またはネジなし締付具によって接続及び/または結合するとともに、これらを支持体に導通する器具」として規定している。ここで言う「支持体」とは、DINレールや切り抜いた金属板、取付板などを指す。また、端子台の色を「緑及び黄色の2色でなければならない」としていることも大きな特徴である。欧州式端子台では、従来アース端子台でなくても「緑/黄」色を使用した製品があったが、IECでもこの「アース端子台規格の遵守」により、欧州各端子台メーカーでは使用色変更の対応をしている。
このように、日本は新しいJIS規格制定によって、国際整合化をしているが、旧JIS規格を採用して設計指針としている官庁、団体では、その内容を変更していない場合もまだ見受けられる。日本の産業界は、今後ますます世界の中で活動を広げ、あるいは国際化を受け入れて行かなければならないため、JIS規格の国際整合を各官庁、団体、企業でも取り入れていくことが求められている。
(つづく)
【筆者=フエニックス・コンタクト株式会社
マーケティング部
飯島一憲氏】