混沌次代の販売情報力黒川想介 売り上げより顧客満足を志向

世の中には、もっと早く知っていれば良かったということにたびたび出合う。災害のような偶発的に起こることや秘密にされていること以外には、知ろうとすれば大半のことは知ることができる時代になった。だからこそ色々なことに関心を持って知ろうとすれば、もっと早く知ることができるのだが、複雑に絡み合っている現代の社会にあっては、何に関心を持てばいいのかがわからない。そのために、もっと早く知っていれば良かったということにたびたび出合うのである。

知るということは知識を得ることである。知っていれば不利益を出さずに済んだのに、もっと利益を得ることができたのにという知識は利に絡む知識であり、一般的にこれらの知識は情報という形をとっている。知って得をするというような耳より情報から、知っていれば戦いに勝てるという重大な情報に至るまで、情報は多種多様である。

特に販売員にとって、どんな情報でも重要であることは論を待たない。知って得をする軽い耳よりな情報でさえ、顧客や見込み客とコミュニケーションを図る際には大いに役立つ情報になる。業務用や産業用の電気部品やコンポを扱う販売員は、自分達の顧客の世界がいかに多種多様で複雑なものであっても、顧客の何に関心を持てばいいのかわからないでは済まされない。何をつくっているか、どんな部品を使っているか程度の関心ではダメなのだ。目の付け所という言葉がある。関心を持った事柄に対して、どんな所に着眼点を持つかということである。同じ顧客から情報を入手するにしても、目の付け所によって入手する情報は異なるものだ。

販売員は当然、顧客に関心を持つ。訪問する際に顧客の何に関心を持って門をくぐるのか、それが問題なのだ。顧客に依頼されていた用件で門をくぐる販売員や、売りたい商品を紹介する用件で門をくぐる販売員が多数いても、本日は顧客の何に関心を持つかなどとボヤッとでも思いながら門をくぐる販売員は意外と少ない。まして顧客の何に関心を持ち、どんな所に目を付けようかなどと思い巡らしながら、わくわくして門をくぐる販売員はほとんどいない。情報の何たるかを知っている販売員は、関心のない事柄からは情報を入手することはできないことを知っている。現代の販売員がわくわくして顧客の門をくぐらないのは、売り上げに追われている売り上げ至上主義に徹しているからだ。現代のような大競争に明け暮れていれば当然のことかもしれない。

ところが、一方では売り上げを上げるため顧客満足度営業を志向している。目指している顧客満足度営業は売り上げを上げるための手段として活用しているが本来、顧客満足営業は顧客満足を目的とすべきである。顧客に満足してもらうには、顧客のことをよく知らねばならないはずだ。顧客を知れば知るほど営業がおもしろくなって、わくわくした気分で訪問できるようになる。

大競争の渦中にいても一時は売り上げ至上主義の呪縛から解き放たれることが顧客満足を志向する顧客至上主義への一歩となる。具体的に顧客の製品やそれをつくる製造現場を知ろうとすれば、その製品にはどんな名前がついているのか、どんな役割をするのか、その製品の前後には何があるのか、その製品はどこに売れるのか、制御パネルならそれでコントロールされる装置のことや、検査関係なら何をどんな方法で、など聞きたいことは山ほどある。そこで得た知識は情報時代の販売員にとって大きな武器になる。
(次回は4月24日掲載)

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