【独・ハノーバー=藤井裕雄前特派員】FA技術は工場のものづくり現場から、自動車やエネルギーといった幅広い領域で活用される傾向をますます強めそうだ。FAはファクトリーオートメーションからフィールドオートメーションへ着実に用途を広げており、新たな市場創出への転換点となりつつある。
ドイツで毎年開催されている世界最大の国際産業技術見本市「ハノーバー・メッセ2013」が、4月8~12日までの5日間開催され、23万6000平方メートルの展示会場に世界62カ国から約6550社が出展、約20万5000人の来場者を集めた。
ここ数年、地球温暖化問題や、日本の原発事故問題などもあってエネルギーに関連した展示が目立ったが、今年もエネルギー関連の展示が多かったものの、以前とは多少趣を変えている。風車やソーラーパネルなどの実物を持ち込んだ展示が減少し、再生可能エネルギーをどのように活用していくかに展示の方向が変化している。
今年の展示メーンテーマも「インテグレーティッド・インダストリー~産業の統合に向けて」を掲げており、従来のグリーン、省エネといったエネルギーや環境対応面などから、技術・人・企業が融合して協業していく取り組みの重要性が強調されていた。
日本でも取り組みが目立ち始めたM2M(機械と機械をつないだネットワーク)は、「ワイヤレスM2M」として、約20社が特設パビリオンで有線ネットワークから一歩進んだ提案を行った。インターネットに組み込まれて使用される部品数は10年以内に500億個を超えると言われており、ワイヤレスM2Mの流れは確実にFA領域にも押し寄せようとしている。
例えば自動車生産設備への投資に注目が集まるが、それだけではなく、自動車それぞれでのワイヤレス通信、EV(電気自動車)の充電インフラなどは技術の融合(インテグレート)によって新市場を生み出している。自動車充電用のコネクタは、規格の標準化に取り組んでいるが、「自動車メーカーが次のステップとして重要視しており、接続機器メーカーとのコラボレーションに積極的である」とドイツ・フエニックス・コンタクト社ラルフ・マスマン副社長は語る。
接続機器では、端子台接続方法で、日本の圧着端子使用に対し、欧州の棒端子使用がよく比較されるが、600Aクラスの高電流でも高い信頼性を発揮できる棒端子使用の端子台も展示され、今後日本市場への紹介が行われるだろう。この配線接続機器はフエニックス・コンタクト、ワゴ、ワイドミュラーの3社が大きな展示ブースを競い、他を圧倒していた。
センサー専業メーカーが多いドイツは、ピーアンドエフ、エフェクター、ターク、バルーフの4社が幅広い品ぞろえをアピールしたが、特にRF―ID、ロータリーエンコーダでの新製品が目立った。
フィールドネットワークではいつも通り、各種フィールドネットワーク団体がブースを設けていたが、メーカーブースに比べると多少インパクトが弱く、展示を見る人が少なく感じられた。逆にフィールドネットワーク化が定着した証左なのかもしれない。
日本企業の出展が少ない中で、NCネットワークが昨年に続いて、日本の中小企業21社で「クールジャパンテクノロジー」としてジャパンパビリオンを設け、日本の金型、機械加工製品などをアピールした。
なお、今年は展示のパートナー国がロシアであったことから、ロシアのプーチン大統領も展示会場を見学した。