技術管理者で「オープン・イノベーション」という言葉を聞いたことがない人は約6割を占めるが、実際の活動は約5割が行っているという実態が明らかになった。また、活動している人の5割以上が効果を認めている。オープン・イノベーションは確実に産業界に浸透しつつあるようだ。産業能率大学は従業員1000人以上の企業の研究開発、製造、生産技術など技術系部門の管理職を対象に課題認識調査を行った。回答者は500人。
オープン・イノベーションについては、「聞いたことがある」は41・6%にとどまり、「ない」が58・4%である。部門別では、研究開発は「ある」が57・8%と最も高く、次いで設計39・7%、生産技術38・8%、調達35・9%、製造26・1%である。製造は意外と外部との交流が少ない。
また、業種別で「ある」と答えた比率は、石油・ゴム・ガラス・セメントが72・7%、食品52・4%、精密52・0%、化学・薬品51・4%、電機48・6%に対し、鉄鋼・金属31・4%、自動車29・2%、電力・ガス10・0%と低い。
ところが、オープンなイノベーション活動の実施状況では、「ある」の回答が48・8%に達し「聞いたことがある」を7・2ポイント上回った。約半数近くが実際は、自社の技術情報や開発プロセスを開示して顧客などと製品開発や市場創出につなげる取り組みをしており、言葉よりも先に行動している様子がうかがえる。
部門別では、「ある」と回答の比率は、研究開発が58・5%、調達が51・3%、設計48・5%、生産技術48・0%、製造34・8%の順。実施状況でも製造部門は最下位である。
業種別では、自動車が62・5%と最も高い。次いで、建設・住宅・工事60・0%、電機52・3%、化学・薬品51・4%である。逆に低い業種は、電力・ガス20・0%、精密36・0%、通信(情報)41・4%である。
自動車は約3割がオープン・イノベーションを聞いたことがないが、6割以上が実行していることになる。
オープンなイノベーション活動の目的は、53・7%が「将来に向けた新たなビジネスモデルや技術の創生」、25・0%が「自社にない技術の補填」、20・5%が「開発にかかるコストの削減」、0・8%が「その他」である。オープンなイノベーション活動を実施している人は、53・7%が「効果が出ている」と答えている。
部門別で効果が出ている比率は、製造が71・9%に達し、研究開発も55・7%あった。
業種で効果が出ているのは、鉄鋼・金属60・0%、化学・薬品55・3%、電機53・4%、自動車53・3%、食品50・0%、機械50・0%、電力・ガス50・0%である。
総じて、オープン・イノベーション活動は始まっていると見られる。
今回の調査は、市場競合度合、グローバル化での課題、自社ブランド力、今後の競争力などについてもまとめている。