制御機器業界は、他の産業と同様に世代交代期に入った。制御機器業界に多い専業メーカーにとっては、高度経済成長時代ならともかく、約20年続くデフレ下での承継は、企業の命運まで左右しかねない重要な課題である。そこで、バブル崩壊直後の1992年に交代し、現在着実に新路線を歩んでいる国際電業の古川長武社長に、トップ交代とその後のかじ取りを聞いた。
古川社長は、バブルがはじけた直後に社長に就任し、「3年間はバブルによる業績下降を止めるのに努めると先代(創業者の原仙太郎氏)に話し了承を得て引き受けた」。銀行関係を含めてすべての権限を委譲されたため「当時は辛かったが、今ではタイミングとして一番良いときであった」と語る。
当然、議論することもあるが「すべての代表権を持っているので任せて欲しいと話し、納得してもらった」。が、先代が横にいて相談できたので精神的に楽であった。
古川社長は、創業者と二代目の違いを自覚し、独自の体制構築に着手する。「創業者はカリスマ性がある。二代目は出来たお城に来ているので、カリスマにはなれない。役員によるトロイカ体制作りを目指した」。
役員の教育にも取り組み、会社の経営計画は役員会が決めるまでに成長した。部長の権限や決裁権も増やした。自覚は社員にまで波及し「社員持ち株制度もあって、皆が経営感覚をもって」発言している。「スピードを求める時代に対応した組織づくり」でもある。
経営計画は単年度から3カ年に変えた。人の採用も3年あれば計画が立てられるためである。
狭く深くの戦略
トロイカ体制は、商品群にも導入した。「先代の時代は右肩上がりの成長が可能であったが、バブル崩壊後は同じ路線では行けない」と判断、広く浅くの商品構成から狭く深くの戦略に変えた。「市場性を特定してナンバーワンになり、そして次にオンリーワンを獲得」する。シェアトップのフットスイッチは工業分野から医療機器分野へ市場の深掘りで成果を挙げ、社長就任後に打ち出したプラズマ自動切断機はナンバーワンへ進み、商品戦略の正しさを証明した。2015年まではオンリーワンになるための準備期間と位置付けている。
国内外で生産・販売
また、ものづくりの在り方に方向を変えている。以前は、海外で生産し国内で販売する形であったが、国内と海外それぞれで生産・販売する。「国内では工場を24時間稼働させれば海外勢に十分に対抗できる。海外市場でも生産と供給を目指す」。
6年前から中国・上海の展示会に出展しているのも、グローバル化への対応である。
ものづくりは完結型からオープンイノベーションへ切り替える。「自社で足りない部分は他の知恵を借りる。自動車産業のように、我々も同業者でも握手せざるを得ない」時代が来ると見ている。
オンリーワン会社
古川社長のゴールは「国際電業なら社長を引き受けても良いといわれる会社にすること」と、魅力のある会社、オンリーワン会社づくりへ全員で走り続ける。
次世代には「社歴の長さは何物にも代えられない財産である。この激動の中で会社が生かされているのは、先代が正しかったからで、感謝しないといけない」。
そして「私は先代から会社を永続するようにといわれ、宿題となった。次に渡せる会社像を描いて長期目標を立てる」ことが大切、とアドバイスする。