混沌次代の販売情報力黒川想介 真のアプリケーション営業

コンピューターの発展により、情報化社会が開かれた。ハードとソフトという言葉はコンピュータが社会生活に入ってきた頃から使われだした。OSとかアプリケーションといった言葉が我が物顔で使われだしたのは、パソコンが一般化してきた80年代後半になってからである。それが今ではスマートフォンの流行によって、誰でもアプリケーションやアプリという言葉を普通に、日常茶飯事に使っている。人気のアプリは日々増加し、数十万と言われるアプリが存在する。制御に関係する機器や部品を扱う販売員にとっても、今やアプリケーションという言葉は常識になった。電気部品や制御業界でもアプリケーションという言葉が使われだしのはパソコンが登場した頃からであった。それまでは現在使われているアプリケーションに相当する事柄として、実用例と言っていた。

工場内の自動化を推進する時に販売員はユーザーと打ち合わせを行う。その際に制御機器や電気部品がどこに使用されるかを知った。新たに生まれていた家電をはじめとして、各種製品の設計者や産業用機械・機器の設計者と打ち合わせを行い、どの部分に使用されるかを知った。そこで知ったことを実用例として関係あるユーザーにアピールし売り込んだ。実際に経験した実用例は具体的であったから売り込みにも迫力が加わった。まだまだ各種の自動化が手探りの状態であったため、販売員にとって、やりがいのある良い時代であった。

アプリケーションという言葉が、制御業界で使われだした頃に、自動制御はシステム化や高度化するようになった。そこで使われる電気部品や制御機器も複合化し、高機能化した。そのためにユーザーは当初、販売員に対して、商品の具体的な説明を要請した。販売員はそれに応えるべく商品知識の習得に精を出した。次第に顧客満足としての商品知識習得に重点を置くようになってくると、アプリケーションを知ろうとする気持ちは遠のいた。それでもカタログや営業教育の資料には多岐にわたるアプリケーションが載るようになってきた。

しかし、商品知識の習得に明け暮れてきた販売員は、意外にも自分達が売っている商品がどんな箇所に、どんな役割で使われているかよく知らない。販売員は技術者と打ち合わせをするが、その際に商品はどんな役割で使われているのかを知る機会がある。そのような時でも販売員は複合化し、高機能化した商品知識の習得の成果を得々として話す。結果として、顧客の設計している製品や顧客の製造現場のことはサラっと聞き流す程度になってしまう。だから販売員達は売っている電気部品や制御機器のアプリケーションのことをよく知らずに、商品メーカーの資料で勉強することになる。机上で学んだアプリケーションは売り込みのツールとして顧客の反応を見るのには役立つが、アプリケーションが持つ本来の役割である顧客情報収集のツールとして役立たせることはできない。

アプリケーションはこの業界でも、とても大事なツールである。だからアプリケーションは自分達の現場で入手しなければならない。まず、かってに売れている電気部品や機器に関して顧客の製品や現場の情報を入手するところから始めるのがよい(1)それはどんな役割で使われているか(2)どんな箇所にどんな機能として使われているか(3)部品や機器の前後には何があるか(4)部品や機器が載っている顧客の製品はどんな役割をしてるか―などの事柄を自力で収集してこそ真のアプリケーション営業ができるのだ。
(次回は5月8日掲載)

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