今さら他人に聞けないM2M

物のネットワークはインターネットの10倍以上のビジネスになる!

情報ネットワークといえば、1980年代から開発され、ほぼ全世界に普及しているインターネットである。このインターネットは単に情報の伝送だけでなく、ユビキタス(いつでも、どこでも、人の)ネットワークとして発展してきた。これが情報ネットワークの終着駅だろうか?

「人(コンピュータ)のネットワーク」の接続はMAXでも世界人口数といわれている。人を介さないセンサ、機器、装置、プラント、交通、建物、販売機器・・・の「物のネットワーク=M2M(ネットワーク)」(図1参照)は急増している。これらは人のネットワークの10倍以上のビジネス規模になるといわれている。
物のネットワークにはインターネットを用いないM2M(Machine
to
Machine)と、インターネットを用いるIoT(Internet
of
things)があり、2010年頃から使われてきた。これは従来のインターネットを統合して「グローバルネットワーク」とも呼ばれている。日本人にはMachineを用いたM2Mは、物というイメージよりは機械のイメージが強くしっくりこないが割り切っていただきたい。
M2M(ネットワーク)がインターネットを超す「バズワード(Buzzword)」に!

M2Mのはしりとして、数十年前から存在した宇宙船とアメリカ航空宇宙局(NASA)が、人を介さないで「無線テレマティクス」で制御情報を送受信していた。これはFレースカー(複数)の車載コンピュータとコクピット内コンピュータのM2Mにも継承されている。ワイヤレス、暗号技術、電話ネットワーク/スマートフォン/タブレット端末、M2M・PAN、クラウド/ビッグデータ、TrE(Trusted
Environment/伝送データのセキュリティ)の6つの技術進化が、M2M(ネットワーク)を「コンピュータ世界の第3の波」、「M2Mは日本ICT産業の最後の砦」にした。

ワイヤレス(無線)技術:無線LAN(イーサネット)のみから、3.9Gモバイル(セルラー)無線:LTE(Long
Term
Evlution,3.9G)、近距離無線(スマートハウスなど採用のZigBee900MHz帯、お財布携帯などのNFC、家庭内LANのBluetooth、赤外線通信…)などの低コスト化、高信頼性化がM2M成長の主要因である。

ワイヤレスM2M市場は年20%強の成長を続けている。(図2参照)暗号(認証)技術:ワイヤレスと暗号の結婚による高信頼ワイヤレス達成がM2M(ネットワーク)ビジネスを大幅に超える規模にする技術担保といえる。このワイヤレスと暗号技術の融合の成功例として米国標準技術局(NIST)まとめのAES暗号と低価格近距離無線のZigBee(900MHz)の組み合わせがある。これは、世界の多くのスマートグリッド/ハウスに採用されてきている。残念ながら日本では無線と暗号(認証)の結婚/融合が重要という環境から遠いように感じる。

電話ネットワーク/スマートフォン/タブレット端末技術:音声通信網としての無線を含む電話網が、高機能携帯電話、スマートフォン/タブレット端末の出現によって、パソコン/サーバのインターネットに匹敵するネットワークと認識されてきた。特にスマートフォン/タブレット端末はインターネットと電話網の双方にまたがる機器でもある。

M2M・PAN:物のネットワークM2Mは、PROFIBUS、DeviceNET、RS485、USBなどのフィールドネットワークやシリアル通信による小規模なPAN(Personal
AREA
Network)が基本である。M2Mの解説や記事で、このM2M・PANに触れているものがほとんどない。大きな課題である。

クラウド/ビッグデータ:クラウド(Cloud、雲、インターネットのイメージ)とはインターネット上にあるデータで、所在を意識しない領域のことで、正式にはクラウドコンピューティングという。SaaS、PaaS、IaaSという3つの形態がある。ビッグデータとは記録や保管、解析が難しい巨大なデータ群のことで、明解な定義がなく、マーケティング用語である。インターネット、IoT、M2Mのグローバルネットワークではそれぞれのビッグデータの共存と共有の技術が重要になっている。

TrE(Trusted
Environment):センサ、機器、機械等の物で伝送されるデータのセキュリティを確保する仕組みで、当該機器を検証し、発行された電子鍵を用いて暗号化し、相互に通信することで接続されたセンサ、機器、機械の信頼性の確保などの技術。
M2M関連製品と市場

M2M関連製品市場の明確な定義はない。通信機器やネットワーク機器、及びソフトウェアや配線工事費などのシステムソリューション市場と考えられる。例えば野村総研がまとめた2012年の国内のM2M市場規模は、セキュリティカメラやホームセキュリティなどのセキュリティ関連が約40%の約1300億円で、2017年にはスマートハウス/ビルなどのエネルギー領域が約60%と伸び、約8700億円になると予想している。

今後成長するM2M関連製品として、(1)センサ、M2M家電、スイッチなどの「組み込みM2Mモジュール製品」(2)安全・安心M2Mデバイスの「暗号技術とワイヤレス通信の融合製品」(3)無線M2M接続、スマホによる機器の監視、データ伝送などの「スマホ(&タブレット端末)連携製品」(4)電力、水道、ガス、農業、交通などの「スマート関連製品」(5)GPS(IoT)、車載ECUネットワーク、運行情報伝送などの「モバイル(車載)関連製品」(6)介護福祉機器インタフェース、行動監視などの「介護・福祉関連製品」の6つの動向はウオッチに値する。

M2Mネットワーク、IoT、インターネット、各種無線ネットワーク、赤外線などの全てに接続され、10以上のセンサを内蔵し、高精度カメラを内蔵している「スマートフォン(&タブレット端末)連携製品」はまさにM2Mの申し子である。すでに全携帯1億3000万台(日本)の23.5%に当たる3000万台はスマホである。スマホ内蔵のセンサには、温度センサ、加速度センサ、位置角度センサ、圧力センサ、光(明るさ)センサ、磁気センサ、近接センサ他があり、センサの固まり=センサハブとも言われている。
暗号技術とワイヤレス通信の融合

年40%もの成長を続けるワイヤレスM2Mの次の成長ステップは、暗号/認証技術との融合である。暗号には以下の5つの機能がある。

(1)機密性(2)データの高信頼性(3)認証(4)否認防止(5)受信者選択。

米国では大きな予算と多くの優れた技術者を有している米国標準局(NIST)がワイヤレスM2Mの先端といえる。例えば、超低価格と使いやすさを特徴とした近距離無線ZigBee(900MHz帯)と米国標準のAES無線の組み合わせは、急成長のスマートハウス/グリッド業界の標準になってきている。日本ではプラチナバンドと言われている900MHz帯のZigBeeが昨年(2012年)の7月に認可されたので、普及はこれからといえる。

ワイヤレス無線に用いられる暗号/認証は共通鍵暗号である。暗号鍵と複合鍵が共通で、高速だが鍵の受け渡しと複雑なネットワークが課題である(注:AES…アメリカ政府の標準暗号方式でまだ解読されていない)。(図3参照)
M2Mクラウド

もの(センサ、機器、装置)のネットワークの接続ノードは人のネットワークの10倍以上になり、クラウド機能は必須になってきた。これがM2Mクラウドで、VPM、M2Mネットワーク、公衆回線網、近接無線ネットワーク、インターネット等との共存である。M2Mクラウド(製品)こそM2Mビジネスの根幹であり、大手ICT関連企業が2011年後半から本格参入している。注視しておきたい。(図4参照)
また人(PC、携帯)発信源のデータと、もの(センサ、コントローラ等)発信源のデータ:ビッグデータ活用の切り札はM2Mクラウドである。このビッグデータ市場が1兆円規模に成長するにはM2MやIoTなどの非Webデータの伸びが必要で、間もなく達成するだろう。
M2M関連団体

日本の最初のM2M(ネットワーク)技術・ビジネス団体は、「一般社団法人情報通信技術委員会」(東京都港区)で、1985年からM2Mサービスのグローバル化と標準化、国内外の電気事業と連携が目的であった。M2Mビジネスが上昇しはじめた2010年代から実務を目的とした「新世代M2Mコンソーシアム」(東京都港区)が、M2Mサービス(ビジネス)連携と創造を目的に設立され、2012年9月現在106社が参加している。またM2Mサービス(ビジネス)の情報交換と創造を目的に「NPO法人M2M研究会」(神奈川県藤沢市)も設立されている。

海外では1988年設立の「ETSI」(European
Telecommunication
Standards
Institute)、中国の「CCSA」(China
Communications
Standards
Association)などがある。

(筆者=FAラボ代表
松本重治氏)

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