制御機器や電材商社がメーカー志向を強めている。自らハード・ソフトの製品開発を行ったり、取引先メーカーの製品を自社のPB品(プライベートブランド)としてオリジナルのブランドを付けて販売するところが増えている。顧客ニーズに対応するために自社で開発して提供することで、顧客とのつながりを強固にし、粗利も高めようという狙いの一方、海外シフトの傾向が強まる中で、商社として技術力を研さんしながら売り上げを確保していこうという背景もあり、今後の動向が注目される。因幡電機産業は、4月30日付で、回転・表示灯のトップメーカー、パトライトを買収し子会社にした。同社は2009年に、端子台や操作用スイッチなどのメーカー、春日電機を買収している。
同社は従来から照明器具関連機器を製造する因幡電機製作所をグループ内に有してメーカーとしての取り組みを行ってきているが、今回さらにこれを加速させたと言える。また、電材・電設資材をオリジナルブランドの「JAPPY(ジャッピー)」として、ケーブルやケーブルアクセサリ、バッテリーなどを品ぞろえし、電気工事業者に販売している。
オリジナルブランドでは、スズデンが約30年前から「U―bon(ユーボン)」として、配線アクセサリー、盤用機材、ケーブル類、DOS/Vパーツ、ネットワークパーツなどの販売を行っている実績がある。
サンワテクノスは、節電ニーズとソーラー発電の見える化ニーズに対応したエネルギー監視サポートソフト「さぽちゃん」を販売している。ソーラーパネル、パワーコンディショナー、各種監視センサーとPLC(プログラマブルコントローラー)をつなぐことで、エネルギーのトータル管理を簡単・ローコストで実現できるのが特徴。
萩原電気(岩井美津雄社長)は、産業コンピュータ「HPUシリーズ」を自社製品として早くから手掛け実績を上げている。デスクトップタイプからパネコンタイプ、ボードタイプまで幅広くそろえており、同社を代表する製品になっている。
大和無線電機(東京都文京区、堀内覚社長)は「LEDドライブ電源IC評価実験基板キット」を製作し、販売している。LEDを使用した時のノイズ発生や照明のチラツキなどといった周囲環境への影響を検査することができる。LED機器の試作時に使用するが、LED機器の製品組み込み用にも使用できることから、同社のキットを購入してそのまま組み込んで製品化するメーカーも多い。
同様に日昭無線(東京都千代田区、伊佐野勝利社長)も電源をオリジナルブランドで販売しているほか、半導体熱交換素子ヒーターを開発、鉄道やUSBクッションなどとして利用されている。
セーフティデンキ(東京都中野区、高橋信房社長)も配線資材をオリジナルブランドとして販売している。
メーカー機能を付加した商社としては、ソレノイドやフットスイッチのマルハ電機(名古屋市中区、棚村良博社長)が1960年から取り組んでおり、長い歴史で知られている。
このように、商社がここにきてメーカー志向を強める背景には、国内市場の成熟化と顧客の海外流出傾向が関係している。顧客と日頃のつながりの中で蓄積してきたノウハウを生かして自社で製品化することで、よりユーザーの求めるニーズに応えたものを提供でき、付加価値も高まることで粗利を増やすことにも結びついてくる。
生産は一部の商社を除いて委託しているところが多いが、受託するメーカーも生産数量がまとまり、商社との関係も強化できることから一般的には歓迎する声が多い。
さらに、商社の技術力向上につながる面もあり今後の展開では、新たな商社の取り組み手法のひとつになってきそうだ。