「この工具は日本から開発提案した製品で、端子台の配線ケーブルの被覆と圧着が2秒でできる」と強調するのは、フエニックス・コンタクトの日本法人社長の青木良行氏。
ドイツで1945年から毎年4月に開催されている世界最大の国際産業技術見本市「ハノーバー・メッセ2013」に、フエニックス・コンタクトは今年も11カ所2400平方メートルと出展者中3番目の広さで出展した。同展には、これで60年連続の参加となる。
冒頭の工具「CRIMPHANDY」も、多数展示した新製品の中のひとつ。配線ケーブルの被覆を行える工具は多いが、同社の「CRIMPHANDY」の特徴は、被覆だけでなく圧着までを同時に行え、しかも軽量でリチウム電池駆動のため、作業にまったく力が不要であることだ。
日本の端子台市場はネジ式(丸端)が主流で、同社が強みを持つスプリング式(差し込み方式)の採用は、市場全体の4分の1と見られている。スプリング式は作業性とスペース性が良く、保持力も強いという特徴があるが、官公庁や一部のビッグユーザーでは、ネジ式の採用がまだ目立つ。
「CRIMPHANDY」は、端子台配線の被覆と圧着でも作業時間の短縮を図ることで、この流れを変えようとしている。
青木氏は「基板用端子『COMBICON』は、日本メーカーで国内外を問わず標準品として採用になっている。これから日本メーカーがグローバル市場に出ていくためにもスプリング式が重要になる。スプリング式の市場を今の2倍に増やしたい」と意気込む。
同社はハノーバーメッセで「コネクティビリティ」をキーワードにして出展した。プッシュイン式接続技術で1000V230Aの配線でも使用できる端子台を展示した。95ミリsqの太さのケーブルでも配線が可能になり、大容量電流用途でもプッシュイン式端子台の使用が広がることが予想される。
またプラグインコネクタでは、ヘビーデューティ用途ながら、素材をダイキャストからプラスチックに変更しながら強度を確保した製品を出展した。プラスチック素材のため形状や加工がしやすく、色々な機種の製造が可能で、コストや在庫の削減にもつながる。
そのほか、LED照明用コネクター、EV用充電プラグなどの接続機器群をはじめ、省エネ化を促進するロボット制御エナジーや空圧制御技術、マシン用照明制御技術、コンパクト産業用電源などの新製品群を披露した。
同社副社長のラルフ・マスマン氏は「産業革命以降のステップを見ると、蒸気機関から始まり、大量生産、オートメーション、そしていまはその先の第4世代のインダストリーに入っている。システム、機械、プラント(工場)、マテリアル(材料)を上手に統合しながら効率化していくことが今後のトレンドになるだろう。テクニックとして挑戦のかいがある時代である」と語る。
新しいものづくり時代に向けて同社は「コネクティビリティ」をテーマに、同社製品のDNAともいえる「プッシュイン技術」を前面に押し出した展開を進めようとしている。(つづく)
(藤井裕雄前特派員)