光電・近接センサは、産業分野を中心に、社会インフラ関連、民生分野まで幅広い市場を形成している。日本電気制御機器工業会(NECA)による検出用スイッチの2012年度(12年4月~13年3月)の出荷額は1008億円となっている。光電・近接センサが最も多く使用されているのは半導体・液晶製造装置関連であるが、低迷していた市場もようやく動き始める気配を見せている。また、安全・防護の観点から、駅のホームや道路、駐車場など、工場の外でのアプリケーションも拡大している。製品は小型・薄型化に加え、微小ワークや高速移動ワークの安定検出、信頼性の向上、国際安全規格への対応などが進んでいる。光電・近接センサ市場は、半導体・液晶製造装置、自動車製造関連、食品・医薬・化粧品製造分野などのFA用途から、非FA分野まで幅広い市場を形成している。NECAの検出用スイッチの出荷統計では、2011年度1062億円(前期比6・9%減)、12年度1008億円(同5・0%減)と多少減少しているものの、1000億円台を維持している。このうち光電・近接センサは3分の1強の約400億円となっている。NECAでは、13年度の電気制御機器の出荷見通しを前年度比4・9%増と予想しているが、国内外での設備投資意欲が高まっていることから光電・近接センサ市場の需要増に繋がることが期待されている。
光電・近接センサの大きな用途である半導体・液晶製造装置分野は、設備投資の先送り状態から11年、12年と減少傾向にあったが、販売額に対して受注額の割合を示すBBレシオが、12年10月0・70、11月0・89、12月1・23、13年1月1・18、2月1・17と、昨年12月から1を上回る数値で受注が先行しており、回復感が強まっている。日本半導体製造装置協会では13年度の販売額を、前年比7・6%増と予想しており、センサメーカーでも、「今年上期の半導体関連向けは、前年上期の実績を上回るだろう」と期待している。
自動車製造も、海外を中心に需要が増加していることから、生産拡大に向けた投資への期待が膨らんでいる。
さらに、食品・医薬品・化粧品のいわゆる3品業界でも継続した投資が安定的に行われており、特に品質の保持、製品の安全、製造履歴確保などを狙った光電・近接センサの需要が拡大するものと見られる。工場の外でも光電・近接センサの市場が拡大している。安全・防護に対応して、駅のホームでの転落防止用扉や、道路のトンネル前での車両の高さ検知、駐車場での侵入検知用途など、屋外や交通分野などでアプリケーションが拡大している。
一方、再生可能エネルギー買い取り制度が昨年からスタートしたことで、メガソーラーなど太陽光発電システムの建設が加速しているが、これらに伴い、電力監視やエネルギーモニタリングシステムが伸長しており、こうした動きも光電・近接センサの新たな市場創造につながっている。
光電センサは、LEDや半導体レーザを光源にした非接触センサで、検出方式は透過型、回帰反射型、拡散反射型などがある。長距離検出には透過型が最適。回帰反射型は、透過型で必要だった投光部と受光部の配線が不要で、配線工数や設置工数が削減できる。このほか超小型ヘッドで取り付けスペースが小さいアンプ分離型、DC電源で使え応答速度が速いアンプ内蔵型、AC電源で使え取り扱いが容易な電源内蔵型、取り付け場所を選ばず微小物体も検出できる光ファイバー式などがある。
FA分野では、隙間などにも取り付けられ、光ファイバー部を交換するだけで様々な用途に対応できる光ファイバー式のアンプ分離型の需要が多い。また、光源に安全に使えるクラス1規格の赤色レーザを採用したタイプは、直進性の高いレーザビームにより、30メートルの長距離検出を実現している。
半導体や液晶製造装置分野では、微小物体検出用として、高精度、ローコスト、取り扱いやすいなどの理由から、光電センサが大きな市場を形成している。小型化と長距離検出、高い保護特性などが著しく、検出距離50メートル、保護特性IP67やIP69Kなどの製品もあり、粉塵や水のかかる場所でも安心して使用できる。
食品機械などの光沢検出、包装機械などでのマーク検出といった分野では、より精度の高い検出を実現した製品の開発が進んでおり、カメラ、照明、カラーモニターを一体化したローエンドセンサの需要が伸びている。同センサは、色面積や印字有無判別、シール有無判別、シール異種混入判別、文字認識などが容易に行える。3品業界では、このようにユーザーのニーズに合わせた用途限定センサ、提案解決型センサなど専用センサの需要が高まっており、余分な機能を省くことでローコストを実現している。中でも食品分野は製品安全対策向上の観点から、トレーサビリティを念頭に置いた需要が高まっている。
最近の光電センサは、オートチューニング機能など使いやすさを追求した機能が一般化している。また、多点制御や差動検出など入光量をアナログ的に制御できるアナログ出力の光ファイバー式光電スイッチなどもある。
新しい機能であるデュアル感度補正機能は、ファイバー先端に汚れによる光量低減が生じても自動的に感度を補正するだけでなく、先端部の清掃を行った後も自動で元の感度に復帰するもので、再ティーチングの必要がないという特徴を持つ。
また、あらゆる対象物のインライン形状計測を実現した2次元形状計測センサは、帯状に広げたレーザ光を対象物に照射し、その反射光をCCDで撮像し、断面形状を計測する非接触型センサで、撮像情報から形状のプロファイルを生成し、対象物の断面形状(2次元形状)から、高さ・段差・幅・位置・交点・傾きなどの寸法形状を瞬時に計測する。さらに、クラス最速レベルの応答時間250μs以下を実現しているタイプは、高速で移動する小さなワークに対しても安定検出を行うことができる。
光電センサを内蔵したエンコーダでは、移動速度750メートル/分まで対応でき、直線だけでなく曲げ半径0・5メートルの曲線部にも設置可能なエンコーダもある。このタイプは、非接触での設置を簡単にするために、DeviceNet、Profibus
DP、Ethernetなどの通信ネットワークに接続できる。
水検出センサでは、検出能力向上のため、従来10mWだった出力を100mWに引き上げられており、不透明容器内の水、及び水を含む液体を確実に検出することができる。
一方、知能ロボット向けに開発された測域(レンジ)センサのアプリケーションも拡大している。測域センサは、周囲の障害物などの状況を把握するセンサ。レーザ光線で対象物までの距離を測定し、270度の視野に対して自分を中心に平面地図のような測域情報を得ることができる。長距離で高感度の検出が可能なので、FA分野では無人搬送車用センサ、非FA分野では立体駐車場の車両検知や、トンネル前における車両の高さ検出など、屋内・屋外問わず用途が拡大している。
近接センサは、耐環境性が良く、高温・多湿、防爆雰囲気、水中などで使用でき、こうした独自の特徴から、工作機械、ロボット向けなどを中心に、光電センサとは異なった市場・用途を形成している。振動や衝撃による緩みを防止できるタイプや、6ミリ角の超小型タイプなどもある。また、オールメタルタイプも増え、金属体、非金属体の混流ラインでも使用できる。検出距離は、数ミリから数10ミリが一般的だが、300ミリぐらいまで対応できるタイプも製品化されている。リニア近接タイプでは検出距離を0、50、100ミリと調節することができる。近接センサの磁気検出方式を応用したものでは傾斜センサがあり、磁気式のほか光式、メカニカル式などがある。
製造業の海外シフト傾向が強まる中で、センサメーカー各社も海外販売体制を強化している。中国、韓国、タイ、インドネシアといったアジア市場がターゲットとなっているが、この市場は欧米メーカーとの競合も激しいことから、日系ユーザーを中心にソリューション提案体制を強めている。同時に、ドイツなど専業センサメーカーの多い市場をターゲットにして欧州市場の開拓に取り組むメーカーもある。海外の光電・近接センサメーカーはドイツに比較的多いが、最近は韓国メーカーも日本市場へのアプローチを強めており、国際競争が一層激しくなっている。
非接触の代表的なセンサである光電・近接センサは、工場に加え、社会インフラ用途での使用も増えている。省エネ、セキュリティ、安全など社会的ニーズが変化するなかで、新たな用途が生まれ市場に活気を与えている。