混沌時代の販売情報力 最低でも高校物理の知識習得

Seやセールスエンジニアではなく一般の販売員であっても、電気部品や制御のコンポを売っている販売員は、高校物理の電気編くらいを理解していなければ、良い仕事ができない。販売員の大半は文系の出である。学校時代を通じて理数にあまり興味を持ってこなかったから、大半の販売員は電気を苦手としている。入社当時は自分達の売っている商品をむずかしく感じ、大変だと思いつつも必死に覚えて何とか一人前になってくる。商品の型式を覚えるために苦労し、納期に悩まされ、大量の見積もりに時間を費やして営業という仕事に慣れてくる。

そうして一応販売員として認められるようになると、商品力をつけるための勉強を強いられる。そうなれば顧客との仕様打ち合わせやクレームの一次対応を試行錯誤しながらもできるようになる。

現在の販売員は、日本の製造業が成長期を脱し成熟期に営業職についた人が大半を占めている。商品の形式を知っていれば右から左に売れていく部品やコンポが出そろっていた。そして、機能が複合化している商品や高機能化している商品が新たな売り込み商品として登場してきた時代に営業活動をしてきた。そのために複合商品や高機能商品の勉強を余儀なくされてきた。その折に出てくる電気の用語や知識を習得し、顧客への商品の紹介と顧客からの質問に答えてきた。

そのような経験を積み重ねて、商品にかかわる電気的な知識を大雑把につかんできたのだが、それらの知識は商品にかかわる電気用語の範囲であって散発的である。

それに、売り上げの大半は商品形式で売れていくものだから打ち合わせを要する機会は減り、新たな電気用語は広がっていかないのが現状である。コントロール機器や電気部品の創業期には右から左へと売れていく商品は少なかった。その上、顧客と打ち合わせて売る活動が頻繁にあったわけでもない。販売員の最大の関心は昔も今も売り上げ額である。その売り上げ額は、現代であれば仕様打ち合わせをせずとも売れていくケースが、かなりの割合になる。創業期には、それがほとんどなかった。

売り上げ額を稼ぐには仕様打ち合わせに持ち込まねばならなかった。そこまでたどりつくには、まず顧客との人間関係をつくって、顧客の仕事のこと、製造工程のこと、さらにそこで使われている動力機械や各種の装置・機器の役割を知るところから始めた。

技術者である顧客とコミュニケーションをするには、電力、モーター・電磁波、アクチュエーター・静電気などのことを理解しないと話は続かなかった。それには電気の基礎知識が必要であった。高校の教科書にある電気を理解すれば色々なことが話し合えた。話している最中にお互いに気づく事柄もあったのである。

そこでようやく、ニーズらしきものが見つかって、顧客側から「自動化はむずかしいだろうか」、販売員側から「そこを自動化してみませんか」と言うことになり、部品やコンポの選定、仕様打ち合わせへ進むプロセスが多かったのである。

現代は混沌とした時代であるが、ITを新しい技術とした新時代である。新時代には新時代にふさわしい新しい技術用語が出てくる。無線関係、次々と出てくる半導体チップ関係、自然エネルギーにかかわる新電力関係などを理解するためにも、最低でも高校の物理の電気の基礎を勉強する必要がある。

それらの知識をもって、開発設計者や製造現場人と仕事上の会話をはずませ、社会的ニーズから生まれる機器も、よりきめの細かい生産、やり残してきた省エネルギー化などの発見に結びつける時代である。
(次回は6月12日掲載)

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