日本もドイツも米国も、自動車は国の経済を支える重要産業となっている。
そのドイツでフエニックス・コンタクトは、自動車産業向けの事業拡大へ新会社「フエニックス・コンタクト・イーモビリティ」をこのほど設立した。自動車製造関連に加え、自動車本体へのアプローチをここ数年強めており、「ハノーバー・メッセ」でも自動車向けの関連製品の展示に力を入れてきている。「自動車メーカーと『コネクティビリティ技術』で連携し、新たな企業発展に取り組む」と、同社副社長のラルフ・マスマン氏は語る。こうした動きは、今後の日本の産業にとっても注目される。
マスマン副社長に、同社の今後の方向と日本市場への期待を聞いた。
イーモビリティの新会社設立の狙いは何ですか。
「自動車産業は特別の存在であり、真剣に取り組む姿勢を示すために別会社にした。EV(電気自動車)やHEV(ハイブリッド車)が普及を始めているが、コネクターなどの『コネクティビリティ技術』を当社は持っていることから、自動車メーカーや関連団体と共同開発の中で生かしていく。ハードの標準化などをリードしていきたい」
ソリューションビジネスとしてのコンポーネンツをどのようにとらえていますか。
「基本はコンポーネンツであるが、端子1個でも満足してくれれば、ソリューションのひとつと広義にとらえている。当社は12の製品群をそれぞれコンポーネントとして組み合わせることでシステム化できるようになっており、作業性、ノイズ、停電など、お客さんが困っていることに応じて解決していく。3・11の福島原発事故以降、ドイツは原発使用を停止し、スマートグリッドの導入を進めている。日本でもエネルギービジネスとして、ソーラー、風力発電や、スマートグリッド関連、さらに下水道分野などでの部品の提供や組み合わせに注力し、ソリューションビジネスとしてバリューアップに取り組んでいる」
御社の強みはどこにありますか。
「対象市場がドイツ、欧州、海外といったように色々と混ざっており、1つの市場に頼っていないのが強みで、成長のドライバーになっている。また、メーカーとして成長していくために、フレキシブルな体制と投資も継続しており、49の現地法人には権限を委譲している。2012年度の売り上げも15億9000万ユーロと4・5%成長した。産業全体の成長よりは少し良かったのではないかと思う。米国が安定している一方、欧州全域、アジアも韓国を除く、中国、日本、シンガポールが厳しかった」
13年度の計画と、日本への期待を聞かせて下さい。
「13年度は前年度比5~7%増の売り上げを計画しており、3月までの感触は良い。米国は伸び、アジアも安定が戻ってくる。欧州は慎重に動く必要がある。日本法人は頑張っており、世界のトップ10に入っているが、5位以内に入ってくるだろう。日本独自の取り組みも進めながら、もっともっと強くなって欲しい」
(おわり)
(藤井裕雄前特派員)